箒は、
急に地面を離れ、
空に舞い上がった。
心が宙に浮いたようで
気持ちが悪かった。
「…俺の上で吐くなよ」
〈吐かないわよ。
ってか、飛ぶなら
そう言ってから飛んでよ〉
「メンドクサイ奴だな。
・・・時間がない。急ぐぞ。
しっかり捕まってろ。」
ゆらゆらと上空へ
舞い上がっていた箒は
そういうといきなり
トップスピードで
前へ進み始めた。
私は箒の柄にしがみつき
上体を低くし風の抵抗を弱めた。
街の景色を眺める
余裕もなく目を必死に閉じて耐えた。
そうして
何時間経ったか分からず、
意識も朦朧としてきた頃、
箒がスピードを緩めた。
「おい。生きてるか?
そろそろ着くぞ。
夜が来る前に
必要なだけの薬草を採らないと
暗くなると分かりにくくなるし、
帰りの時間も
確保しないといけないしな。」
〈…うるさいわね。
生きてるわよ。
それに貴方に言われなくても
時間がない事は分かってるわよ。〉
目の前に聳え立つ
大きな森に箒は突っ込んで行った。
でも私は、降り方が分からず、
おたおたしている間に
尻もちをつくような形で落ちてしまった。