〈家族?
私にも家族があったと?〉
「そうか。
君は自分の家族の事も
知らないんだね。
魔法使いはね、
初めから魔術を
持っているわけではない。
魔法の言葉を
体に取り入れる事で
魔法が使えるようになる。
昔は魔法使いの家系には、
その魔法の呪文が
書かれた本が
受け継がれることになっていた。
今やそれは…
焼き尽くされてしまったが。
そうだね。
ここからの話には
少し補足が必要だね。
君は、魔物から
魔女狩りの一件を聞いたようだね。」
〈はい。あの少年から聞きました。〉
「君が産まれるより、
ずっと前の世界では
魔女・魔法使いと
人間は仲良しだった。
お互いにお互いを
助け合って生きていた。
しかし、時代は移り変わり、
街を発展させるため、
あるいは己の生活を
豊かにするために
人間はひた走った。
その結果、
人間の心にも
闇が存在し始めた。
その力は
少しずつ大きく膨らみ、
人の心を変えていった。
あれだけ助け合って
暮らしていた魔女や
魔法使いの力を
人間は恐れはじめてしまった。
魔法は、
未だに世界最大の力だ
と言われている。
魔術や魔法の前では
勝てる者はいない。」
〈それはなんとなくわかります〉
「そんな頃から、
魔女狩りが始まった。
魔法の力を恐れた人間が
君の仲間を消していった。
それはそれは、残酷な方法で。…
さて、補足のお話はここまでだ。
君に魔術の力を与え、
そして過去の記憶を
消し去った人物は、
おそらく、君の祖父母に
当たる魔女だ。」
〈魔女?〉
「君の祖母は
魔女の血を引く者であったが、
祖父は人間であった。
そしてその2人から
産まれた子供、
つまり君の母親は
魔法の力を持たなかった。
このままでは
魔女の血は途絶えてしまう。
焦っていた祖母の所へも、
魔女狩りの手が忍び寄った。
そして、魔女の子だという事だけで、
魔法を持たない君の
母親は虐殺されてしまった。
君の祖母は
深い悲しみを負いながらも、
祖父とともにその地を離れ、
なんとか生き延びた。
そのうち、
君も大人になり、
時代もまた移り変わった。
君の祖母以外の魔女は
ほとんど狩りにあってしまった。
このままでは
世界は滅びへと向かってしまう。
そうならないために、
未来の世界に
1人の魔法の使える
救世主が必要だ
と考えた祖母が、
君に魔術の力を与え、
自分の命と共に、
君の過去の記憶を消し去った。
人間を恨まぬように、
この子は真っ直ぐに
生きていけるようにと。」