クリスマスの午後2:25頃、愛知県安城市の国道1号線東栄町6丁目交差点で、ほぼ垂直に落下してきた(防犯カメラによる映像)直径 10 cm で約 600 g の金属製部品が、信号待ち中の軽乗用車に当たった。
部品はドーナツ状の円盤で、4本のボルトが付いていると。
安城警察署が調べているが、周囲には物が落ちてくるような構造物はないとのこと。
とすると、まず考えられるのは飛行機なので、Flightradar24 で確認した。
事故発生時刻は、報道元によって午後2:25頃、同2時半頃、同2時半前とあり、同2:20~2:35の範囲で調べてみたが、事故現場に部品を落としそうな飛行機はなかった。
Flightradar24 の画面(時刻: 協定世界時 UTC 05:25、日本標準時 14:25)
事故現場の交差点を中心に東西 45 km × 南北 33 km の範囲を切り抜き
上画像の下の方でアジア航測所有のセスナ機(Cessna 208 Caravan I)が高度約 2500 m を西進していたが、事故現場最接近時でも南へ 15 km も離れていたので、飛行経路・高度と合わせても事故とは無関係と考えられる。
調べる時間帯をもう少し広げて午後2:00から見ると、事故発生時刻までに現場上空に最も接近したのは、所属不明のヘリコプター Airbus Helicopters H225 であり、最接近時刻は午後2:18で事故の約7分前、飛行高度は約 1000 m で、事故現場から西へ水平距離約 4 km 離れた位置を対地速度約 220 km/h で北上中だった。
気象庁によれば、事故現場に近い岡崎市では、事故当時に平均 3 m/s 前後の北西の風が吹いていた。
物体の自由落下では、物体の質量・サイズ・形状(平面の多さ)などにより空気抵抗の大きさが変わる。
keisan サイトで空気抵抗係数をデフォルトの 0.24 kg/m を用いて計算すると、600 g の物体が 1000 m の高さから自由落下で地上に到達するまで 202秒(3分 22秒)。
Flightradar24 でこのヘリの航跡を見ると、和歌山県の白浜海岸公園から始まって(午後1:17頃)いて、そのすぐ近くの南紀白浜空港から飛び立ったのだろう。
その後、当該ヘリは名古屋飛行場(県営名古屋空港)に短時間寄った後で離陸し、次に降りたのはトヨタ自動車元町工場にある元町ヘリポート(午後2:41頃)で、翌日午前9:53頃に発った。
Flightradar24 の画面(時刻: 協定世界時 UTC 05:18、日本標準時 14:18)
事故現場最接近までのヘリコプターの航跡
トヨタ自動車元町工場ヘリポート着
Flightradar24 には、航空機の位置を特定するための ADS-B 信号を送信していない機体は映らないことに注意したい。
他に考えられるのは、飛行機よりもはるかに高い高度を飛行している物、すなわちスペースデブリ。
被害に遭った軽自動車の天井には、約 600 g の落下物によって 100 cm × 30 cm の凹みが出来、15 cm の亀裂が入ったとのこと。
500 ml 缶ジュースよりも少し重いだけの物体でこれだけの衝撃を与えたことは、相当な高度から落下してきたことが伺える。
隕石に当たる確率とスペースデブリに当たる確率のどちらが高いのかは知らないが、スペースデブリだとすれば極めて稀な事故。
運転者の女性が軽傷で済んだことが何よりだった。
人工衛星・宇宙探査・軍事目的などのために各国のロケット打ち上げ競争がますます激しくなる中、他人事とは言っていられなくなるかもしれない。
<2024.06.19 追記>
事故から間もなく半年になろうとする本日のニュース。
金属製部品は事故が起きた東栄町6丁目交差点から数百メートル離れた工場(会社名はここでは伏せる)から飛んできたスクラップであることが分かり、警察は工場の作業員を業務上過失傷害の疑いで書類送検した。
Google マップで見てみたが、工場から交差点までの距離を部品がどのようにして飛んできたのだろうか。