気象庁の台風進路予想図の描き方を変えるべき | 俳句銀河/岩橋 潤/太宰府から

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今、猛烈な台風14号が九州に接近している。

 

明日、鹿児島県西部沿岸の海上を進むかまたは上陸する可能性があり、さらに北上して熊本県天草を通過後に長崎県南部に上陸し、進路を東寄りに変えて佐賀県、福岡県へと進む予想になっている。

 

 

ところが ・ ・ ・。

 

気象庁が発表する台風の進路予想は、画像1のように時間の間隔が長く、しかも、台風の中心が到達する予報円(白の破線円)の中心点どうしを白の破線直線で結んでいる。

 

画像1 9月17日18時における進路予想図(気象庁より)

 

画像1を単純に見てしまうと、台風14号は鹿児島県西部に上陸するとすぐに向きを北北東に変えて、台風の中心は熊本県西部➔熊本県北部➔福岡県南部➔福岡県東部➔山口県西部に進むように理解するおそれがある。

 

台風がジェット気流に乗ると直線的に進むが、それ以前の、太平洋高気圧の縁を回り込みながら北上している間は複雑な曲線を描いて進み、予報円の中心点どうしを結んだ破線直線上を進むことはない。

 

特に、台風の進路が大きく曲がることが多い九州や南西諸島においては、予報円どうしを直線で結んでしまうと、時点の取り方次第で図示される進行方向が大きく変わり、ある地点が暴風警戒域に「入る」「入らない」の違いが生じる。

 

台風の進路予想や風雨の影響範囲を描く方法として適切なのは、それらの時間推移を曲線的に描くこと。

 

曲線的に描くことによって、知りたい場所が台風の「暴風圏に入るのか」、「進行方向の東側に入るのかあるいは西側に入るのか」、それとも「台風の中心が通るのか」、さらには「最接近の時刻はいつか」などの情報の信頼性が向上する。

 

現在の気象庁(同じく国内の民間気象事業者も)による台風進路予想図の描き方は、適切でなく改善すべきだ。

 

 

  翌朝(18日5時40分)追記  

 

気象庁が発表した9月18日5時現在の台風14号の位置と進路予想図は画像2の通り。

 

画像2

 

画像4を見ると、台風14号は鹿児島県西部近くの海上を進むかまたは上陸した後、長崎県南部に向かう予想であり、昨日の昼頃まで発表されていた予想図(記事には未掲載)と比べても、進路に大きな違いはない。

 

しかし、昨日18時発表の画像1と比べると、進路が大きくずれているように “見える”。

 

実は、気象庁が予想している進路は、昨日の昼頃も、昨日の18時も、そして今朝の5時も、「鹿児島県西部沿岸➔熊本県天草➔長崎県南部上陸➔佐賀県➔福岡県」で変わっていない。

 

それにもかかわらず大きくずれているように “見える” のは、進路予想図において台風の中心が到達する時刻の選び方に原因がある。

 

画像1では18日の18時と19日の15時を結んでいるが、今朝5時発表の画像2では18日の15時と19日の3時を結んでいる。

 

2つの時点を結んだ直線について、始点は3時間早まっているが、終点は12時間も早まっている。

 

つまり、画像1と画像2とでは、時点の取り方が大きく違うのである。

 

画像5のように、同じ曲線でもどの点を選んで直線で結ぶかによって、見え方は大きく変わってしまう。

 

これが、気象庁の進路予想図の問題点である。

 

画像5

 

進路予想は今ではスーパーコンピュ―ターで解析できるようになり、ニュース番組でも台風の移動や風の様子を動画風に見られるようになった。

 

それを、ごく限られた時点を直線で結んだ進路予想図で表してしまうと、情報量が格段に落ちてしまう。

 

進路予想図は、画像3の左図のように予想進路全体を示す曲線を描くべきで、一部の予報円だけを抜き出してそれらを直線で結んだ右図のように描くべきではない。

 

画像3

 

 

 2025.07.17 追記 

 

当記事から約3年が経った今日、気象庁の有識者検討会は「5日先までの進路予報を現状の24時間刻みから6時間刻みにする」ことを決定し、2030年までの導入を目指すこととなった。

 

予報円どうしを直線で結ぶことには変わりはないが、間隔を6時間(詳細度はこれまでの4倍)にすることで曲線に近い表現になる。

 

この変更により、ある地点に台風が接近あるいは到達する確率や時刻をより正確に把握することが出来るようになる。