ロミと妖精たちの物語314 Ⅴ-113 愛の奇跡② | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

 

 

「ロミ、僕はいったいどうなってしまったのだ」

「さあね、どういうことなのかしら」

 

ロミは抱いていたケージの身体を離し、愛の妖精を見た。

「ファンション、ペルセウスから何か聞いたの?」

 

「うん、だからさっき言ったとおりよ、彼はケージを見捨てなかったのね、やっぱりドラゴンはみんな優しい人ばかりなのよロミ」

 

「そうね、で、ペルセウスはどうなっちゃうの?」

「彼はね、もう死んでいるの」

「えっ、そうなの?」

ロミはそう言ってファンションの豊かな胸を覗いてみた。

 

するとフィニアンが二人の会話を遮った。

「ロミ、もう舟に戻らなくては、さあファンションまた白イルカの精に変身しておくれ」

 

「あら叔父さん、もう上に万里生が迎えに来ているわ」

ファンションはそう言って、十字架の上に飛び上がり、女神像を両手で抱えると、きょとんとした顔で立っているケージにそれを手渡した。

 

メグミの魂が眠っている黄金像の重さにビックリしたように、ケージは両手でそれを抱えた。

 

「さあペルセウスさん、クジラさんに合図をしてくださいな」

ファンションは自分の胸に宿った亡霊に向かってお願いをした。

 

すると摩訶不思議、薄暗い洞窟の中に天井から光が差し込み、5人は床から持ち上げられて海水と共に上空に噴き上げられてしまった。

 

昇り始めた太陽の光の中で、ロミと妖精たちは巨大クジラの背中に乗っていた。

 

「まあ、やっぱりあなたは、あのときのクジラさんだったのね」

ロミはそう言うと、膝を落として四つん這いになり、クジラの頭に向かってキスをした。

 

ロミはあまり自分の姿を美しいとか、それはカッコ悪いのだとかを思わない。

いつも、目の前に居る人に対して、嘘偽りのない真心で見つめ合うのだ。

 

それを怖れて、ためらうのは、フィニアンのように格好つけの大人だけだった。

だが今日のフィニアンは、ただ黙ってロミのすることを見守っている。

 

「クジラさん、あなたには何度も助けられたわね、ほんとうにありがとう」

そう言って、ロミの瞳から、宝石のような涙がゴツゴツとしたクジラの背中に落ちた。

 

すると巨大クジラはロミの真心に応えてくれた。

 

――ロミ、感謝をするのは私の方なのです。

 

――地球の言葉で言えば、私は宇宙クジラの少女アンドロメダ。

 

「まあ、女の子なの?」

 

――アンドロメダ星雲で生まれ、家族と共にニューザワンへ旅する途中。

――間違って遭難者たちを飲み込んでしまったの。

 

「それが、あの悲しき魂の人たちだったのね」

 

――そうです、そして太陽系に迷い込んでしまったあのとき、あなたのお母さん聖少女マリアに言われて、私はペルセウスとケージを飲み込んでしまったの。

 

「私のママが?」

 

――私は聖少女に導かれて、地球の大洋に降り立ったの。

――地球でも大勢の悲しき魂たちを受け入れてきたわ。

――その魂たちを、ロミ、あなたは何度も救ってくれたのよ。

 

「いいえ、アンドロメダ、あなたが護ってきてくれたから、あの人たちは神の国へ行けたのよ」

 

――そして今日、最後のドラゴンを救ってくれた。

 

――ロミ、ファンション、そして宇宙少女マリア。

――これで私はニューザワンへと旅立つことが出来ます。

 

「一人で大丈夫なの?」

 

――ええ、あなた達が繋いでくれた、ニューザワンへのワームホールを使わせてもらうわ。

 

――ほら見て、あなた達の愛するお姉さま、アンドロメダ・ユリアが迎えに来てくれた。

 

ロミと妖精たちの頭上にホワイトホールの光が現れた。

 

そこから海面に向かって、一条の光の輪が天使の階段となって伸びてきた。

 

そして上空の入り口から大天使ユリアが舞い降りてきた。

 

彼女は無言のうちにロミとマリアを抱きしめて、愛のエンパシーを交換しあい、続いて愛の妖精ファンションの手を握り、フィニアンには微笑みを与えてくれた。

 

すると、フィニアンはトネリコの杖をクルリと回して見えない馬車を操り、ロミと妖精たちを安全な空中に確保した。

 

見届けたユリアは巨大クジラの頭上に腕を伸ばし、海面から伸びてきた白い腕を掴んだ。

 

黄金の髪をなびかせて、白いドレスに包まれた可憐な少女、宇宙クジラの精は大天使ユリアに抱き導かれて、天使の階段をゆっくりと昇ってゆく。

 

――ロミと妖精たちの皆さん、あなた達の成功を祈っています。

 

「ありがとう、宇宙クジラの精アンドロメダ、あなた、とっても綺麗よ」

 

――まあ、ロミあなたこそ。

 

――今までほんとうにありがとう。

――いつかまた、ニューザワンで会いましょう。

 

――さようなら、ロミと妖精たちの皆さん。

 

「さようならアンドロメダ、どうかお幸せにね」

 

ロミにとって、17才から40年もの間拘束されていたサイボーグの時代から解き放ってくれたのは、宇宙クジラとなって鎖に繋がれていたアンドロメダが見守っていてくれたからなのだと、今さらながら思い知らされて、深く感謝の念を送るのだった。

 

遥か外銀河の果てにある、ニューザワンへと繋がるワームホールの入り口が見えなくなるまでロミは、二人の天使に向けて愛と癒しのエンパシーを送り続けた。

 

 

次項Ⅴ-114に続く

 

 

(写真と動画はお借りしています)