ロミと妖精たちの物語312 Ⅴ-111 愛の女神と死神と⑩ | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

(写真と動画はお借りしています)

 

 

 

 

 

 

悪鬼に支配されたドラゴンの鋭い爪がロミの首を掴もうとしたその時、十字架に手首を縛られているファンションの胸元から、小さな男がクルリくるくる回転しながら飛び出した。

 

小さな男は回転しながら元の姿に戻り、背中からトネリコの杖を引き出すと、彼女の手を縛る縄を断ち切り、返す刀で悪鬼に向かって飛びあがり。

 

それを思い切り悪鬼の角に向かって振り下ろした。

 

すると、猛獣の角のように伸びていたそれは音も無く、根元から抜けて転がり落ちた。

 

そのまま太く長い角を失ったドラゴンの上に被さり、ロミの守護神いたずら妖精の長フィニアン・マクローナガンは、ドラゴンの首根っこを両脚を使ってその気道を締め上げた。

 

同時にロミの乳房の上から飛び出したのはおやゆび姫、聖なる秘宝ドラゴンボウルを使ってドラゴンの真心を目覚めさせ、ついには聖少女ロミの前にその頭を地面に打ち付けた。

 

「待って、フィニアン、マリア、あまり強く彼を苦しめないでちょうだい」

 

言われて、ロミとファンションそれぞれの乳房から現れた戦士たちは静かに肯いた。

 

フィニアンのステッキで頭を押さえられ、俯せに倒れているドラゴンに向かってロミはその白き腕を開き、いつの間にか集まってくれていた精霊たちの力を借りて、愛と癒しのエンパシーで大男の身体を包んであげた。

 

すると、大男の頭から抜けたツノの穴から、小さな鬼火がポンポンポンと無数に飛び出して、十字架の前で微笑みながら腕を開いている愛の妖精ファンションの前に並び始めた。

 

ファンションはトーガの前を開き、豊かな乳房の間に輝く勾玉の鎖を左の手でつまみ上げ、鬼火の群れに向かって差し向けると、右の手のひらを前に差し出し鬼火たちを優しく手招いた。

 

――可哀そうな小鬼さんたち、どうぞ私の胸にいらっしゃい。

 

彼女の歌声が洞窟の中に広がるとともに、鬼火たちは人の姿に戻り、一人ずつきちんと列を作って勾玉の光に吸い寄せられてゆき、

 

 

 

 

やがて十字架の上に現れた女神像の中に入ってゆき、そのまま神の国へと昇って行った。

 

巨大クジラに棲みついていたドラゴンは、あれからまた長い旅路の中またしても、あちこちで、大勢の悲しき魂たちを拾い守ってきたのだろう。

 

かつて聖少女マリアとの約束のとおり長い時を経て、外銀河から訪れたドラゴン・ペルセウスは十字架の前でその豊かな乳房を隠すことも無く微笑んでいる、愛の妖精の前に跪いた。

 

「ああ、お前はあのときの、白イルカの妖精か」

 

およそ60年前の同じ場所で出会ったドラゴンは、護って来た悲しき魂たちが天に昇り、まるで抜け殻となってしまったような年老いた姿で十字架を見上げた。

 

愛の妖精ファンションは祭壇の上から手を伸ばし、老ドラゴンの大きな頭を抱き包み、勾玉の光を空っぽになった傷口に当てて癒してあげた。

 

「そうよ、外銀河から来たドラゴンさん、あのときここへ、メグミを連れてきたのは私です」

 

「可哀そうな外銀河のドラゴンさん、でもあなた、あのまま死神にならずに済んでよかったわ。聖少女マリアのエンパシーで改心したあなたは英雄ペルセウス、さあ私の胸に抱かれなさい」

 

愛の妖精の柔らかな胸に抱かれた老ドラゴンは、妖精の思念に導かれるまま、彼女の乳房に頬を寄せ、まるで乳飲み子が母に甘えるように、穢れ亡き乙女の乳首に口を付けた。

 

ロミは宇宙少女マリアとフィニアンそれぞれに、トーガを作り衣を着させると祭壇に上った。

 

まるで大聖堂のピエタのように、疲弊しきったドラゴンを抱いているファンションの右肩に手を載せ、精霊たちのエンパシーを送り始めた。

 

そして左の肩には宇宙少女マリアが同じように、ドラゴンボウルのパワーを送った。

 

ミイラのように痩せ細ったドラゴンの前に、いま三位一体となった乙女たちのエンパシーがエネルギーを与え、外銀河から来たドラゴン・ペルセウスの身体に精気を蘇らせようとしている。

 

愛の妖精の清らかな乳房からペルセウスの身体にエネルギーが送られるとともに、十字架の上に現れた女神像は、もとの黄金の輝きを取り戻していくのであった。

 

 

次項Ⅴ-112に続く