ロミと妖精たちの物語311 Ⅴ-110 愛の女神と死神と⑨ | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

 

翌朝、高層ビルの谷間の小さな森の中、大都会の隠れ家のような古い屋敷の礼拝室の、かつて、のちにロミの母となる聖少女マリアが祈りを捧げた十字架の前に、ロミと妖精たちは跪き平和への祈りと愛のエンパシーを捧げると、大海に消えた女神像の捜索を始めた。

 

小型宇宙船フェアリーシップの船室から、太平洋上を大気圏外の遥か高みから見下ろし、やがて下降しながら、ペルセウスと女神像を載せた巨大クジラの行方を追う。

 

2030年に地球を襲ったTSウイルスの災禍において、聖少女マリアと共に闘った巫女戦士メグミと巫女少女ミドリ、三人のうち、生き残っている現在の巫女王ミドリは、イヅモ王家の血脈を継いでくれた娘、清家碧とともに教団本部の会堂で、ロミと妖精たちを見守っている。

 

巫女王オフクロ様となったミドリは、白装束に目隠しをして視界を閉ざし、神棚の前に頭を垂れて無の境地に入り、予言を語るべきその口も今はただ、堅く閉ざしたままである。

 

そして17才の誕生日からロミの友として親交するイヅモの女王ミドリは、後方に座してオフクロ様の作り出す無の世界を通じてロミと妖精たちを見守っている。

 

――ロミ、巨大クジラの居場所の見当はついているの?

 

「まだわからないけど、あの時ファンションがメグミを乗せて潜った海域に近づいているの」

 

――ロミ、オフクロ様のエンパシーは捉えたわ、

――巨大クジラの泳姿影は、インド洋の南極北海の辺りに在ると。

 

「ミドリ、ファンションの勾玉が反応しているわ、眩しいくらいに光っている」

 

「今からファンションがあの白イルカさんに化身する」

 

「私は、彼女に連れられて、あの時のケルプの海に入るわね」

 

――巨大クジラとペルセウスは、あなたたちを迎えてくれるでしょう。

――でもロミ、ドラゴンは一人ではないかもしれない、

――気を付けて潜るのよ。

 

「ありがとうミドリ、こちらも秘密兵器があるのよ」

 

――そうね、しっかりとスクラムを組んで。

 

「じゃあね、行ってきます」

 

ロミは黄金色のトーガを身に纏い、勾玉を首に巻いたファンションとともに海中に身を投じた。

アンドロメダを失ったロミでも、トーガに包まれていれば海中呼吸も可能だ。

 

ファンションが同化した白イルカは、かつてメグミを乗せて潜行したように、陽光が差し込む海中のケルプの森の中を、矢のように高速で泳ぎ進んでゆく。

 

そして海底の洞窟を見つけると、白イルカはロミを載せて狭い洞門をスルリと潜り入った。

 

イルカの中にいるファンションは、昔来た時と同じように海中洞窟の奥に灯明を見つけると、水中を上昇して海面から躍り上がり、ロミを岩棚の上に飛翔させた。

 

そして、あの時消えてしまった十字架を見つけると、自らも地上に跳ね上がりクルリと身を翻しもとのファンションの姿に戻った。

 

ロミはすかさず両手を揉み合わせて新しいトーガをつくり、ファンションの身体を包んだ。

 

首に勾玉を付けたファンションは、両手を合わせ洞窟の十字架に向かって歩を進める。

 

彼女の一足ごとに十字架から青い炎が吹き上がり、炎の中から大きな男が出迎えた。

 

だがそれは、あのハンサムな大男では無く、巨大なツノを持つ悪鬼のドラゴンだった。

 

大きな口の両端から鋭い牙を剥き出し、ゴウゴウと火炎を吐き出しながらドラゴンは近づき、ロミの目の前でファンションの身体を鷲づかみにしてしまい、目にもとまらぬ素早さで、あっという間に愛の妖精を十字架に縛り付けてしまった。

 

そして後方で身構えているロミに向かって、悪鬼のドラゴンは火炎を吹きつけながら飛び上がり、鋭い爪の手を伸ばし、頭上からロミの首元に掴みかかって来た。

 

 

 

次項Ⅴ-111に続く

 

 

(写真と動画はお借りしています)

 

BABYMETALを支えてくれたギターの神

藤岡幹夫さんの最後の演奏を

少し粗い動画ですが、ごぜひ覧ください

 

(もちろん市販されたDVDは素晴らしい映像・音質でした)

 

 

 

 

*左右反転しているのは何故か分かりませんが、臨場感が凄いですね。