――あなたは、もしかしてケージが言っていた、ザワンの英雄ペルセウスさんなの?
ロミは首を傾げながら、壺の中の大男に向かって優しく訊ねた。
壺の中に広がる大海原に、巨大クジラとともに浮上した大男は立ち上がり、天上に見えるロミの黄金色の瞳に向かって静かに応えた。
「たしかに、そう呼ばれたこともあった」
そう言いながら、彼は身に纏うトーガの胸元に手を入れ、そこから黄金像を取り出して、天上から覗くロミに差し出した。
――それは先ほど八ヶ岳の洞窟の中から消えたメグミの黄金像ね。
「そのとおり、そしてこれは、破壊と創造の女神マイトレーヤの像だ」
ペルセウスは、女神像を両手で大事そうに持ち直して言った。
「この女神の実体は、オレが運び屋となってこの惑星に持ち込んだウイルスを閉じ込めたまま、ザ・ワンの島の洞窟の中で眠っている」
「オレは外銀河の悪鬼に操られ、この惑星にウイルスを持ち込もうとした」
――でも、あなたは改心して、それをしなかったのでしょ。
「そうだ、この惑星の聖少女の魂に触れ、オレは改心した」
「女神の父親とともに、ウイルスに冒された宇宙船を太陽に葬ったのだが」
「ごく僅かな量のウイルスが、惑星の大気内にこぼれてしまった」
「それを回収するため、オレと彼女の父親は身を捨てて魂だけとなり、惑星の引力に引き寄せられて大海原に激突した時、この巨大クジラに救われたのだ」
「そして女神メグミは父親を救い出し、それからこの世界を遍く回り、除菌・除霊の荒行を行い、すべてのウイルスを回収し、自分の体内に閉じ込めると、あの島の洞窟に身を潜めた」
――そうだったのですね、あなたが改心しなかったら、私たちは存在していなかった。
――いまあらためて、ペルセウスさんありがとう、私たちみんな心から感謝しています。
ロミは熱いを思いを込めて、愛と癒しのエンパシーをドラゴンと巨大クジラに送った。
――それで、ペルセウスさん、あなたは女神像をどうするつもりなの?
「聖少女が言っていた、やがて女神像とメグミを元の姿に戻してくれる次世代の聖少女が現れる、そして、そのときはこのオレも悪鬼の呪いから解放されると」
「だからオレは、この惑星の中で生きて行くことにした、この巨大クジラとともに」
外銀河から来たドラゴン、メグミにペルセウスと呼ばれた男はそう言い残し、女神像を再び胸に抱くと、コバルトブルーの深い海の水底に、巨大クジラと共に姿を消して行った。
次項Ⅴ-108に続く
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