ロミと妖精たちの物語315 Ⅴ-114 愛の奇跡③ | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

 

 

アンドロメダ星雲の滅びゆく老惑星スペースホエール(地球言語で表すと豊穣の惑星)から、ニューザワンへと移住する旅の途中、家族からはぐれてしまった少女アンドロメダ。

 

光速を遥かに超えるスピードでも、200年以上の時間を要するため、宇宙クジラとなって仮眠の内にこの銀河を通過しているときに、彼女は誤って遭難船団を飲み込んでしまった。

 

悲しき魂たちを幾度となく受け入れてきた、心優しきドラゴンでもある少女は、TSウイルスとの闘いの渦中にあった聖少女マリアの意識と触れ、マリアの放つエンパシーに包まれて希望を取り戻すことができたが、元の姿に戻るのはそれからずっと先のことだった。

 

マリアに誘導されて地球に降り立つと、生き残っていた遭難船団の子孫を南海の緑豊かな島に下ろしたあと、更に長い時を経てロミと妖精たちの時代となり、幾度かの邂逅で護って来た全ての魂を神の国に送ることができ、彼女はようやく人間の姿に戻ることが出来たのだ。

 

白いドレスに包まれて、黄金の髪をなびかせた少女アンドロメダが、ニューザワンの大天使ユリアに迎えられ、家族の許へと旅立つ姿を見送ったロミたちは、小型宇宙船フェアリーシップに乗って、TSウイルスから地球を護ったメグミの肉体が眠っているという八丈島に向かった。

 

後部座席に座る博士とケージは、今は抜け殻となってしまったアンドロイドを間に挟んでいた。

 

「どうやら、わたしと君はかなり親しい関係らしいね」

「ええ、叔父さんあなたには、とてもお世話になりました」

 

あの時、宇宙空間で肉体を失ってしまったケージは、若かりし博士の強靭な身体を借りて、祖父に導かれ、メグミとミドリと共に洞窟に入ったのだった。

 

「しかし君の方が5才も年上だ」

「でも僕は殆どの時間を仮死状態にいましたので、たぶん今もロミの半分くらいの人生です」

 

「ですから博士、僕はあなたをお祖父ちゃんのように尊敬しています」

 

「フム、するとロミは、君のお母さんみたいなものかね」

「いえ、彼女もサイボーグ時代の40年を差し引けば、まだ22才のお嬢さんですよ」

 

「なるほど、君もロミと同じく人間離れしているという訳だ」

 

お喋りをしているうちに、小型宇宙船は八丈島上空に到着した。

 

およそ63年前、巫女戦士メグミがTSウイルスを自分の体内に閉じ込めて、そのまま姿を消した洞窟を目指し、舟は八丈富士の中腹にある広い牧場に降り立った。

 

八丈島から300キロ離れた東京青山の本部から、さっそくミドリの思念が届いた。

 

――ロミ、洞窟の在りかを知っているのは私の母翠(みどり)今の巫女王オフクロ様です。

 

――今からオフクロ様は、ケージさんが使っていたアンドロイドに載り移ります。

 

――ファンション、アンドロイドを女性の姿に変える取り替えっこの秘術をお願いします。

 

 

船内にドラゴンボウルの虹色の光が渦を巻き、勾玉の灯明がロミのエンパシーに抱き包まれたアンドロイドの身を陽炎のように揺らぎを起こさせると、そこにオフクロ様の姿が現れた。

 

黄金色のトーガを身に纏い、アンドロイドを抱いていたロミの腕の中に裸身の少女が現れた。

 

博士とケージの間の座席に現れたのは、63年前の姿のままの巫女少女ミドリだった。

 

ミドリは取り替えっこの秘術から我に返ると、博士を見た、そしてケージの存在にも気づくと、慌てて身を屈め恥じ入るように両手で身を隠した。

 

ロミはすぐにミドリのためにトーガをこしらえ、それを彼女の頭から被せてあげた。

 

トーガに身を包まれた巫女少女は年老いた博士の顔を見上げた。

 

「ミドリ、わたしはケージローだ、隣の彼はケージの元の姿だよ」

 

ミドリは何も語らず沈黙のまま、博士とケージの手を握り、目を閉じて何かを念じ始めた。

博士とケージも席から立ちあがり、互いに空いた方の手を握り合わせた。

ドラゴンボウルの光は消え、勾玉の灯明だけが三人の姿を映し出している。

 

沈黙したまま続く三位一体となった思念のサークルを、ロミと妖精たちは見守った。

 

 

次項Ⅴ-105に続く

 

 

(写真と動画はお借りしています)