ロミと妖精たちの物語293 Ⅴー92 女神像の行方① | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

ロミは短い瞑想の中でイヅモの霊能者ミドリと会話した。

 

――ロミ、あなたの想像どおり、巫女少女は私の母です。

――母ももう、この世にはいません、ケージさんの妹を探すには役に立たないわね。

 

――フィニアンとファンションは、おそらく妖精の女王メーヴの指示で、お使い妖精をしたに過ぎないと思いますが、今回あなたたちを案内するのも、あのお二人だと思います。

 

――まずは当事者である、あなたのパパ博士にそのときからのことを確かめて。

――ケージとケージローを会わせなさい。

――そして東京の教会を訪ねるのがいいでしょう。

 

「ありがとうミドリ、そうするわ、でも、フィニアンは何処へ行ってしまったのかしら」

 

――彼は金貨の壺から消えてしまったようですが、あなたが呼べばそこへ戻ってこれるでしょう。どうすれば彼が現れるか、言わなくてもわかっているわね、ロミ。

 

「わかったわミドリ、またあれをするのね」

 

――そうね、あれをするのよ。

――じゃあ、またね、ロミ、マリア。

 

遠いイヅモとの思念の交流が終わると、ロミはシモーヌ伯母さんに言った。

「伯母さま、ミドリの声が聞こえたかしら?」

 

「ええ、とてもよく理解できました」

「それではフィニアンを連れ戻してきます」

 

ロミは部屋の中央に置かれている金貨の壺の前に立った。

 

ロミは、これまでフィニアンと共に歩んだ旅路の思い出をイメージしながら、歌い、舞い踊り始めた。南海の孤島を、ニューヨークの街を、そしてインカの世界、アマゾンのジャングルを、ドラゴンボウルのエンパシーを使い幻想のビジョンを映し出していった。

 

 

 

 

そしてケージに見られていることも構わず、白いトーガを脱ぎ下ろした。

 

すると壺の中から案の定、ロミの一糸まとわぬ裸身の前にフィニアンは現れた。

「ちょっと待ってくださいロミ」

彼は慌ててトーガを拾い上げ、ロミの身体に被せた。

 

「それじゃまるで、わたしはロミの裸が目的みたいじゃないですか」

 

ロミは構わず、

「ああフィニアン戻ってこれたのね」

そう言って、妖精の小さな身体でいるフィニアンを抱き上げた。

 

「ねえフィニアン、この人がケージ・エジマだったのよ」

フィニアンは人間サイズに戻り、アンドロイドのケージに握手をした。

「フーム、きみはなかなかハンサムじゃないか」

 

「彼から色々聞いたわ、あなたは私のママだけでなく、ケージとメグミにも会っていたのでしょ」

「まあね、でもすべては聖少女のためにお手伝いしただけですよ、女王様に言われてね。そうだ、少し喉が渇いた、マドレーヌ、冷えたワインを一杯頼むよ」

 

ダイニングルームに下りてフィニアンの食事が済むと、さっそくロミは彼に言った。

「さあフィニアン、私たちをニューヨークへ連れて言ってちょうだい」

 

支度が整うと、パリの妖精母子に大聖堂まで送ってもらい、ロミとマリア、そしてケージの3人は、フィニアンに連れられて、マグノリアのワームホールに入った。

 

 

次項Ⅴ―93に続く