ロミと妖精たちの物語204 Ⅴ-2 パリの空の下①     「妖精マドレーヌは踊る」 | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

ロミと妖精マドレーヌはシェークスピア庭園の芝生広場の片隅で、視力を持たない老女の心と、その息子であった老人の魂(こころ).をエンパシーで癒した。

 

この世において母子であった二人の思いを、ひと目だけでも、お腹を痛めた子と可愛い孫の姿を見てからこの世を去りたい、そういう母の願いをかかなえたあと、ロミは老いた母子を、愛と癒しのエンパシーで包み、神の国への扉を開いてあげた。

 

そして二人を見送ると、ロミはマドレーヌに振り返った。

「マドレーヌ、これからどうするつもりなの」

 

ロミの問いかけに、マドレーヌは白い歯をニッと開いて応えた。

「ロミ様、ニューヨークへ戻る前に、もう一ヵ所だけ、行って欲しい所があるの、いいでしょ?」

 

愛らしい笑みを浮かべている大陸系ケルトの妖精を見ながら、ロミは問いかえした。

「マドレーヌ、あなたと私は、ほんのさっき出会ったばかりなのよ、なのに、どうして私はあなたに付いて行かなければならないのかしら?」

 

「えっ今更ですか?ロミ様」

マドレーヌは、手を後ろに組みながら、ロミの前でステップを踏んで言った。

「ずっと前に、ロミ様とガートルードさんと、一緒にそこに言ったのよ、忘れたの」

 

言われてロミは目を丸くして、目の前にいる可愛い妖精マドレーヌを見た。

そして思念の翼を開くと、かつてサイボーグだった時、パリを訪れたことがあったわと記憶の扉を開いた。

 

するとロミは、セーヌ川の島のカテドラルで、悲しき魂たちを癒したことを思い出した。

 

 

 

 

「だけどあの時、あなたは立派な大人だったはずよ」

「あらごめんなさい、そうだったわ」

マドレーヌはそこでクルリと回転し、見る見るうちに姿を変えた。

するとロミと同じくらいの背丈になって、ロミの手を取り、マグノリアの葉むらに飛び込んだ。

 

「まあ、マドレーヌ、何処へ行くの」

「もちろん、あの大聖堂へ行くのよ、ロミ様」

「様は付けないで、ロミと呼んでちょうだい」

「分かったわロミ。~ほらね、もう着いた」

 

来た時と同じように、緑のトンネルを通り抜けると、もうそこはシテ島にある、ノートルダム大聖堂の裏庭、大きなマグノリアの樹の根本だった。

そして目の前には、千年の歴史を刻んだパリの、あの大聖堂が立っている。

 

「そうだわ、ここで革命時代に取り残されていた、悲しき魂たちを癒したのだったわね」

ロミは、サイボーグ・ロミとして世界を巡った冒険の旅を思い出した。

「で、今日はいったい何をしようというの?」

 

「もう一度、屋上の回廊に昇るのよ」

「えっ、だって予約が必要でしょ」

「何を言ってるの、聖少女ロミを連れて来たのに、予約なんていると思う?」

 

マドレーヌは再びロミの手を取り、ファサードの左手、回廊に昇る入口へ案内した。

入口のガードマンはロミを認めると、恭しくきっぱりと、形良い敬礼をして二人を迎えた。

 

 

次項Ⅴ-3へ続く

 

 

「4の歌~東京ドームほかのミックス」~byB.B妖精コンビ。