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「だめよ、玉生丸(たもうまる)!」
ロミの叫びも届かず、古代の武人の姿をした玉生丸は怒りの腕を振りかざし、覚悟を決めた月依姫(つきよりひめ)の無抵抗な胸元に鋭い匕首(あいくち)を振り下ろしたその時、ミルクマンは身を滑らせて月依姫の身体を包んだ。
同時に親指姫に変身した宇宙少女マリアは、鬼の形相の玉生丸に向かって飛び上がった。
そしてロミは瞬時に思念を集中し、洞窟ドームの中に溢れるほど集まってくれた精霊たちの正義のエンパシーを爆発させた。
洞窟ドームの中は光と暗黒が渦巻き、玉生丸の振り下ろした匕首に刺されたミルクマンと月依姫は千々に飛散して混沌(カオス)の中に溶け込み、精霊たちのエンパシーで玉生丸は多重の人影を背負い動きを止められ、石像のように固まっってしまった。
そして現れた鬼火の群れがロミの身体を目がけて集まり、ロミは炎に囲まれた。
マリオは神の使者の姿を借りたまま、両手を広げロミを包む火炎にエンパシーを発した。
すると、一度膨れ上がった紅蓮の炎は青白く光り、さらに高熱となった後、マリオの両手が閉じられると同時に炎は消え、そこにドラゴンボウルを手にしたマリアが現れた。
そしてその腕の中に、眼を閉じた長い髪の月依姫がいた。
マリオの後ろにいた真梨花が駆け寄り、月依姫に聞いた。
「どうしてあなたなの、ロミはどこ?」
月依姫は眼を開き、呆然としたまま動かず、マリアがそれに答えた。
「ロミは、ミルクマンと一緒にどこかへ消えてしまった。でもロミのことだから、きっとすぐ戻ってくると思うわ、真梨花、心配しなくても大丈夫よ」
「それよりあのドラゴンたちを何とかしないと」
マリアは月依姫を抱いていた腕をほどき、ドラゴンボウルを両手で持ち直し、武人の姿で固まってしまったドラゴンの石像に向けた。
「マリオ、これはどういうことなのかしら?」マリアが訊ねた。
マリオは石像を見つめたまま、全員に向けて思念を発した。
――月依姫、あなたと玉生丸について話して欲しい。
月依姫は、神の使者の姿を借りているマリオに応えた。
――ゼス様、玉生丸は私が子供の時に邪馬台の地に下り、先ほどの話の通り、この人は神の力を借りてこの国をつくり治めました。
――私は巫女として育てられ、大人になると玉生丸と夫婦の契りを結びました。
――そして、婚礼のあと、この人の政(まつりごと)は、意に添ぐわぬ者を排除することが甚だしくなり恐怖の政となってゆき、ついに神の怒りを買ってしまったのです。
――それで、この人がオオカミに化身し、そのまま生贄となってしまったのですか。
――はい、決して神もこの人を殺そうとした訳ではありません。この人が、オオカミに化けて神を襲ったために、そうなってしまったのです。オオカミを生贄にして殺したのは、国の村長たちです。
――あなたは、その後どうされたのですか。
――玉生丸が死んでから、私は子供を産みました。
――その子は、邪馬台の一族であるあなたと、宙から下りてきた玉生丸との間にできた子供なのですね。
――そうです、先ほどの娘ロミさんは、きっとその子の子孫なのだと思います。
その言葉を聞くと、真梨花は驚いて声を上げた。
「ロミ姉さんも私たちも、宇宙人の血が流れているの?」
マリオは神の使者の姿を借りたまま、静かに声を出した。
「そうだね真梨花、遠い昔からザ・ワンとこの惑星は交流が有る。おそらく、もっと大勢の仲間がいると思う。超能力を持った人たちも、たぶんそうだ」
「月依姫、このたびあなたはどうして蘇えったのでしょう」
――たぶん、玉生丸を起こしてしまった私の子孫が、私も蘇らせたのではないでしょうか。
「姫、ありがとうございました。真梨花もわたしもあなたの子孫です、そして玉生丸を呼び出した者は、わたしたち三つ子の一人、宏一だと思います」
月依姫はマリオの言葉に驚き、まじまじとその姿を見た。
マリオは静かに微笑み、すでに半身が消えかけている月依姫の身体を、をそっと抱きしめた。
「間もなくロミが戻って来るわ、それからこのドラゴンたちとお話をして、宏一と碧の行方を尋ねることにしましょう、邪馬台国の皆さんいいかしら?」
マリアはそう言うと、ドラゴンボウルの愛の光を洞窟ドームに満たし始めた。
次項Ⅲ-43 Amore愛の行方⑨に続く
大人になったすず香さんの
メギツネをどうぞ
中元すず香さん小学6年のとき
アクターズスクール広島
発表会ソロ歌唱