ロミと妖精たちの物語109 Ⅲ-41 Amore愛の行方⑦ | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

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四国の高知と徳島の県境に立つ三嶺は、標高1,894m、山の頂からすり鉢池との間の地中に、異次元へとつながる洞窟ドームはある。

 

真梨花たち三つ子姉弟の父親と思われる、エイリッヒ・フォン・マックス教授が33年前に東京で開催された超能力学会で、世界の超能力者たちと共に集団霊視を行い探し当てたザ・ワンの古代遺跡である。

 

四国の霊峰と言われる剣山と石鎚山を結ぶ東西の稜線上に在り、またその位置は日本の国造り神話の島、淡路島と遍路修行の大いなる島四国に挟まれた、渦潮で有名な鳴門海峡に浮かぶパワースポット飛島から、四国の中心地点にある荒行の聖地平家の滝とを結ぶ線上にあたる。

 

霊能力者たちが修行する平家の滝、その奥深い渓谷から鏡川を下ると、宏一とともに行方が分からなくなっている霊能力者、碧の先祖が築いた高知城がある。

 

城の外堀から扇状平野をゆったりと川の流れは続き、土佐湾の高知港に出て、さらに岬に囲まれた浦戸湾から外洋に回ると、開国の志士、坂本龍馬の像が遠い異国を眺めている白砂青松の桂浜に出る。

 

2030年に起こった人類の危機、TSウイルスの災禍以後、四国遍路修行は世界の3大巡礼道の一つとして、様々な宗教の壁を超え交流修行の場として、世界各地から修行者たちが訪れている。

 

その四国の4聖地の中心点の地中にこのドームはあり、高さは12メートル直径は約18メートル、天上は丸いドームになっている。

 

ロミたちがいる幅3メートルの回廊の内側には円形の泉が有り、4か月前、初めて訪れた時、ロミはアフリカの女王エスタと共にすり鉢池から潜り、水中を泳いでこの泉に浮き上がり、石の階段を昇り、この回廊に上がったのだ。あのときは何も身に着けず水に入ったが、今日はトーマスから授けられた妖精の衣、白いトーガに身を護られている。

 

 

 

 

宇宙を描いた壁画の正面、泉の反対側にはマックス教授と、真梨花の異母姉ジェーンの母マルグリットの、夫婦2体のミイラが眠る、大理石の祭壇があった筈だとロミは思った。そして今、その場所から長身の男が回廊を回って、ロミたちに向かって近づいてきた。

 

宇宙サイズにいるマリアは、自分と同じ7フィートを超える大きな男の姿に驚き、暗いドームに照明ビームを広げると、そこに現れた男の姿がハッキリと映し出された。

 

「なぜあなたなのスノーマン、いえ今はミルクマンなのかしら」

現れた男の姿を見て、マリアの後ろで月依姫を抱いているロミが聞いた。

 

だがよく見るとミルクマンは後ろから脅されているようで、両手を上げて困った顔をしている。

 

「いえロミさん、マリアさんと真梨花さんをお呼びしたのは、ボクの後ろにいる人です」

ミルクマンは上げている両手の、片方の親指で後ろの人を指し示した。

 

ミルクマンが身を横にかわすと、弓を構えた男が立っていた。

その鋭い視線で弓を構えているのはトーマスではないか、ロミは驚くと同時に心眼を開いた。

 

――あなた、一体何をしているの。

 

返事も無く、いきなり先頭に立つマリアに向かって矢が放たれた。

刹那にマリアは消え、矢は月依姫(つきよりひめ)に向かって飛び、ロミは眼光を放って矢を射落とし、その男に向かって走り寄りながら怒りのエンパシーを放射した。

 

男はもんどり打って倒れ込むと、今度は日本刀を持ち着物に袴姿の武士となって立ち上がった。そして走ってきたロミの頭上に、その刀を振り下ろした。すると、ロミの後から月依姫を抱きとめていたマリオが、思念の一撃を放ち日本刀を弾き飛ばした。

 

武士は刀を失い、振り下ろした腕の力でそのままロミの身体を掴まえ、羽交い絞めにした。

 

 

 

 

――あなたは誰、何を企んでいるの。

 

男は匕首(あいくち)を持ち出し、ロミの首元にあてた。

「姫を寄こせ、さも無くばこの娘の命はない」

 

最初トーマスに見えた男は、刀を持った武士となり、そして今は角を生やし牙を剥いた鬼の姿に変わり、荒々しい息遣いで月依姫を守るマリオを睨んだ。

 

マリオはその男に向かって無表情のまま、静かに思念の言葉を与えた。

――鬼よ、汝の願いを申してみよ。

 

「オレは鬼ではない、月依の姫にこのような姿に変えられたのだ。オレの願いはただ一つ、月依姫をオレのこの手で殺すことだ」

 

――あなたはどうして月依姫を殺したいのか。

 

「この国はオレが支配する国だった。それを月から下りてきたこの姫が奪い取ったのだ。その美しい顔でオレを誑(たぶら)かし、四の国を奪い死の国に変えてしまったのだ」

 

――姫、この人の言うことは本当か。

月依姫は面(おもて)を上げ、マリオの腕から離れると、ロミを人質にとる鬼に近づいた。

 

「玉生(たもう)丸よ、私はもう死んでいる」

躊躇うことなくその足を進めた。

 

「もう一度死ねというのなら、どうぞ私を刺しなさい」

月依姫はロミの手を取り背後に引くと、匕首を握る玉生丸の腕を握った。

 

鬼は、自ら掌中に飛び込んだ月依姫に戸惑い、姫を突き放すと一歩退き、マリオを見た。

 

マリオは鬼に近寄り、自分の姿を神の使者、あの人によく似た姿に変えた。

それはまさしく若き日の使者、あの人であり、それはトーマスにもよく似ていた。

 

傍らで見守るロミは、その展開に驚きながらも、今私が守るべきはこの鬼なのかも知れないと思い、鬼を癒しのエンパシーで包んだ。

 

神の使者の姿を借りたマリオは、変わらず静かな口調で言った。

――鬼よ、玉生丸よ、わたしを見なさい。

 

ロミのエンパシーに包まれた鬼もまた、その姿を変え、古代の武人の姿に変わり、膝を落として神の使者を見上げた。

 

「わたしは、わたしは一体何をしているのだ」

男はワナワナと唇を震えるわせて言った。

 

――玉生丸、この壁画を見なさい。

武人の姿となった玉生丸は、宇宙の壁画を見上げた。

 

――ここに描かれた光景に、あなたは見覚えがあるか。

玉生丸は壁画の地平を見た。

 

地上で天上を見上げる巫女と、見守る大勢の群衆、そして螺旋に囲まれた青い線を目で追い、月を太陽を、そして遥か彼方のアンドロメダ銀河を見た。

 

「わたしはあの銀河を覚えている、あそこから船に乗ってこの惑星にたどり着いた、そしてこの土地に住み、国を作り王と呼ばれた」

 

 

 

 

 

 

――なぜ、王と呼ばれた。

「無知なこの地の人々を教化し、文明を与えた」

 

――無知な人々を、あなたはどう思った。

「愚かな人間どもは強いものにへりくだり、弱い者から収奪を行う野蛮人ばかりだった」

 

――そして、あなたは独裁者となり、この地を治めたのか。

「そうだ、わたしは王となり、人々を支配した。悪しきものは処刑して、良きものを増やした」

 

――悪しきものとは、どのような人か。

「わたしの描く理想に従わない、自分勝手で愚かなものたちだ」

 

――あなたに従わない人々の言葉を、話を聞こうとは思わなかったのか。

 

玉生丸は壁画を指さし怒鳴り声をあげた。

「あの群衆に囲まれた生贄(いけにえ)のオオカミを見よ、あれがわたしだ!」

 

玉生丸は言葉に詰まり、神の使者マリオから離れ、そこに立ちすくむ月依姫の手を掴んだ。

月依姫は抗おうともせず、その身を玉生丸の腕に締められるに任せた。

 

「そうだ、この女が月から下りて来て、ザ・ワンの船団をこの地に導き、わたしの国を奪ったのだ、わたしが作った理想の国を、この女は私を誘惑し、だまし討ちにしたのだ!」

 

玉生丸の怒声に対し、月依姫は首を絞められながらも静かに応えた。

「玉生丸よ、だまし討ちなどではない、御身がオオカミとなって大きな人を殺めようとしたのを、私が止めに入った。そして、大きな人が私に襲い掛かったオオカミを打ち据えた」

 

「月依姫、何を今更!」

怒りに燃えた玉生丸は、思い切り腕を振り上げ、匕首を月依姫の胸を目がけて振り下ろした。

 

その刹那、ミルクマンが匕首の下に身を滑らせた、同時に親指姫となったマリアが姿を現し、玉生丸の憎悪に燃え上がる、その眼に向かって飛び上がった。

 

 

 

  

 

 

 

次項Ⅲ-42に続く

 

 

 

5年前高校1年生だった中元すず香、

まだ世界は遠かった。ギターはレダと大神。

(記事は2018年に初稿しました)

 

そしてさくら学院から

中元すず香さんのソロ曲