ロミと妖精たちの物語69 Ⅲ-1 Amore 失われた時を求めて① | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

第三部、  はっじまるよ~(^_-)-☆

 

 

 

妖精の国アイルランドの古い街、スライゴーの新年がいま、ロミの目覚めとともに訪れた。

 

大聖堂を見上げるゴシック風ペンションのスイートルーム、カーテンの隙間から漏れる朝の光に目を覚ましたロミは、胸の上に眠るおやゆび姫を乗せたまま、ゆっくりと大きく伸びをした。

 

ベッドの上に起き上がり、おやゆび姫を枕元にそっとおろして、彼女の真っ白な身体の上に柔らかなハンドタオルをかけると、ロミは頬をふくらませてタオルの上から温かな息を吹きかけた。

 

――私の可愛い妖精さん、朝がきているわ。

 

 

 

 

そして窓辺に歩み寄りカーテンをそっと開けた。

 

昨日のカウントダウンの五万の大群衆がまるで夢であったかのように、石畳の広場は人一人いない、静かな歴史の空間がそこに在った。

 

このクリスマスの朝から昨夜までの1週間、宇宙を駆け巡る大冒険の7日間だった。

マックス邸で失踪したガートルードを探して南極へ行き、大型雪上車に乗った3日間の極寒の旅、英国隊の人たちに出会い彼らを解放したあと、氷の塔で宇宙少女マリアと出会った。

 

そこから始まった宇宙の旅は驚きの連続だった、マリアの宇宙規模といえるエンパシーの大きさに驚き、時間と距離を超えた宇宙虫、ワームホールの果てしない空間の道。

 

初恋の人かもしれない太っちょトーマスとの再会があり、その母親メグと同化したワーム世界での激しい戦い。静かなる邂逅はトーマスのお父さん、歴史上に残る聖なるその人の再生と新たな旅立ちを見届けた日々、それは宇宙の謎、ワームホールで過ごした5日間だった。

 

悪鬼に操られたワームに囚われていた、千人に余る宇宙の人々の旅立ちを見守った。

 

地球へ戻り、アイルランドの超古代の遺跡キャロモアに再び現れた悪鬼ディアボロの哀しみを知り、カウントダウンでは、ロミが人間に戻ったときに戦ったスペースドラゴンも姿を現した。

 

悪鬼ディアボロは宇宙少女マリアのエンパシーを受けて、消滅する瞬間の哀しき姿の中で、迷える魂たちを守り通した事の満足感だろうか、最後はロミとマリアに向かって笑顔をくれた。

 

 

ほんとうに、悲しくもあり嬉しくもある、涙でいっぱいの目まぐるしい1週間だった。

 

――1週間7日間の壮大な旅――えっ?、変ね、日数が合わないわ。

 

アタッカーに乗って移動した2日を足したら10日になるはずなのに、日付は1週間。

私の旅の3日間はどこへ消えたのかしら。

 

ドアノッカーの音が聞こえて、ロミの追想は止まった。

 

「ロミ、起きてるかしら?」

ガートルードの声だった。

 

「ちょっと待ってガーティー、今鍵を開けるわ」

ロミが開ける前に、鍵はカチャリと音を立てて開いた。

 

妊娠3か月の身重のガートルードを、そっと抱きしめてロミは言った。

「ガーティー、あまり念力を使わない方がよいのではないかしら」

 

「いいえロミ、今鍵をあけたのはあの子よ」

ベッドの上に、5フィート3インチのマリアが現れ、ニッコリとほほ笑みながら二人を見ていた。

 

マリアはベッドをおりて、ガートルードに歩み寄り彼女の手に口づけをした。

「おはようございます女王様」

マリアはニッコリと微笑んだ。

 

「マリア、とってもきれいなお姫様ね。トニーから聞いたけど、あなたは超能力者でもあるのね、それとも妖精力をもっているのかしら?それにしてもロミ、二人とも裸で寒くないの?」

ガートルードはロミを抱きしめながら言った。

 

 

 

 

 

 

マリアはおやゆび姫に戻りロミの乳房に飛びついた、ロミは手を添えておやゆび姫を包んだ。

 

「私たち南極娘だから寒さには強いのよ、それに、あちこち飛び回る度に裸になってしまうし、もう平気よ、――でも、心配してくれてありがとうガーティー」

 

「何だか妖しいお二人さんね」

小さな妖精の女王は微笑み、ロミの乳房とおやゆび姫にキスをした。

 

「ガーティー、あなたより先に母親になったのよ、可愛いでしょ、私の娘マリアよ」

 

ガ―トルードは笑顔でマリアにそっと触れて、「ほんとに、可愛いわねマリア」と言った。

ロミはガートルードを抱きしめて、その頬にキスをした。

 

 

「さあ服を着て下りてきて、朝食が済んだらノックナリアへ案内するわね」

ガートルードが部屋を出ると、二人は簡単にシャワーを浴びて、新しい服を選んだ。

 

高原地帯を歩くことも予想されたので、スラックスにジャンパーの活動的な衣装を着て、相変わらず化粧はせず、肌を守る程度にクリームを塗り、口紅の代わりにリップクリームを使った。

 

 1階のダイニングに下りて行くと、みんなはもう席に着いていた。フィニアンと妖精らしい少女が椅子を引いてくれて、ロミとマリアも席に着いた。ガ―トルードとト二ー、真梨花とフレッド、それぞれ中睦まじく座っている。

 

――真梨花、フレッドはどうだった?

 

――彼、とても優しくしてくれたわ。

 

――ガ―ティー、ト二ーは優しくしてくれた?

 

――ロミ、朝からどうしたの、お行儀よくしてよ

――フフ、もちろん紳士的だったわ。

 

ロミは胡桃パンに、ベーコンエッグとポテトサラダを食べ、大好きな牛乳を2杯飲んだ。

 

「みなさん今回もまた、大変お疲れさまでした。ロミそしてマリア、今日はこの後キャロモアで妖精たちのあいさつを受けていただきます。お昼はノックナリアでメーヴ女王のお墓詣りをしてランチタイムを、そして夜はロンドンでVIPと面談をしていただきます」

 

「VIPって?」

「極秘事項になります、詳細は後ほど説明致します」

 

――フレッドは少し緊張しているのかしら。

 

ロミの思念が聞こえたのか、真梨花が笑顔で応えた。

「ロミ姉さん、意地悪は無しよ、フレッドは正直者なのよ、今日は私も一緒に行きます」

 

そしてガートルードが言った。

「ロミ、私は行けないけれど、ロンドンではあなたらしく、真っ直ぐに行動すればいいのよ」

 

そしてトニー・マックスもロミに言った。

「そうだよロミ、あなたのエンパシーはすべての精霊たちに愛の心を目覚めさせる、強くて深い愛の力を持っている。ロンドンはロミ・アンドロメダが最初に活躍した思い出深い街だ、何か起こっても、あの精霊たちがあなたたち守ってくれるはずだよ、哀しき魂たちを全力で救済する、あなたのまごころをみんな愛しているからね」

 

「ガーティー、トニー、どうしてみんな私に優しいのかしら」

ロミは涙を浮かべながら言った。

 

フィニアンが食後のコーヒーをテーブルに配りながら、トムの情報を告げた。

「ロミ様、太っちょ、いや失礼、トーマスさんから花が届いています」

「まあ、太っちょトーマスが私に?」ロミは笑顔を浮かべた。

それはガラスケースに入った小さな鉢に咲く、白百合のような花だった。

 

 

 

 

 

 

「とても綺麗だわ、でも、何ていう花かしら」

すると、それまで静かに会話を聞いていたマリアが花の名前を言った。

「ロミ、図鑑でみたことが有ります、ザ・ワンに咲く球根植物、確か地球のリリウムに似ていると書いてあったと思うわ。花言葉は純潔、威厳、聖少女、まるであなたそのものね、素敵だわ」

 

「ザ・ワンの花ですって?トニーどういうこと、彼はニューヨークに行ったのではないの」

トニーも驚いた表情でそのリリウムを見ていた。

 

「ロミ、わたしも知らなかった。いったいどういう事だろう、フィニアン何か情報は?」

「わたしも知りません、今しがたフェデックス便で配達されて来たばかりです」

 

「このメッセージはなんて書いてあるのかしら」

ロミの知らない文字が並んでいた。

 

「ロミ、これはザ・ワンの文字です。メッセージは~あら、読んでもいいかしら」

「マリア、教えてちょうだい」

「じゃあ読みますよ」

 

マリアはいたずらっぽい表情で、メッセージを読み始めた。

 

次項 Ⅲ―2 に続く