ロミと妖精たちの物語52 Ⅱー16「宇宙少女マリア1」 | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

物語をイメージするメディアとして

写真と動画はお借りしています

 

2014年7月英国ネブワースで躍動する

まだ高2と中3のトリオ BABYMETAL

圧倒的な歌唱力と舞踏表現で

5万人のアウェイをひれ伏させ

THE ONEの世界へと導いた

 

 

 

 

ロミの眼前に現れた巨大な怪物、それは宇宙人だった。

トニーと妖精たちの作るシールド越しに、圧倒的な憎悪のパワーがロミたちを包み込む。

 

南極の眩しい陽光から目を守るためか、北極のイヌイットの人たちが付けるような遮光帯を巻き、まるで古代の土偶のような姿をした巨大な宇宙人。

 

ロミの後方に身構える真梨花は、その途方もない大きさと、威容から発する憎悪のエネルギーに圧倒されて、息をするのも苦しいほどに身体を震わせていた。彼女はこれまでの人生に於いて、経験したことのない、それは圧倒的な恐怖の感覚だった。

 

真梨花は歯をくいしばり、気を緩めることなく両手を合わせ、イズモの神に祈り続けた。目をつむることなく、巨大な宇宙人を見つめ、祈りの言葉を唱え続けた。

 

真梨花の身体を抱き支えているフィニアンとジムの二人の妖精は、真梨花の祈りの言葉に唱和し力強く声を発した。そして、先ほどの雷鳴に驚き、遠のいていた精霊たちが再び真梨花に寄り添い、その震える身体を包み始めた。

 

ロミは、真梨花と妖精たちが、精霊たちのエンパシーによって守られていることを確かめると。

見上げる巨大な宇宙人にたいして、思念を使ってコミュニケーションを試みた。

 

――こんにちは大きな人、私はロミ、アメリカから来ました

――あなたはどこから来たの?

 

宇宙人から返事は無かったが、それでもロミは思念を続けた。

――私は友達を探しているの、ヘンリー・バワーズという人を

――あなたご存じ無い?

 

――彼はスコットランドの妖精一族出身なの、身体は小さいけれど、海軍の中尉さんなのよ。

――とても優しくて、人を困らせるような人では無いわ

――いったい何処に行ったのかしら。

 

――ねえ、大きな人、彼の行方を知っていたら教えてほしいの

――お願い。

 

しかし宇宙人は、遮光帯の隙間から激しい怒りの光を放った。

光は雷イカヅチとなってロミを襲い、見えないシールドを震わせて、飛び跳ねた。

 

ロミは心眼を開き、眼前に聳える宇宙人を見据えた。

 

真梨花は祈りの声を思念に切り替え、荒漠と広がる雪原に向かって、愛のエンパシーを放射した。ロミは、自身の身体の中に音を響かせて、真梨花の放射するエンパシーに乗せて音楽を奏でさせた。やがてその音楽に合わせて、大陸に眠っていた精霊たちが集まり始めた。

 

 

 

 

 

 

憎悪に溢れかえる宇宙人は、怒りの雷イカヅチをロミたちに向かって撃ち込む、激しい雷鳴を響かせて、次から次へと撃ち放ち、トニーの思念波シールドに激しい衝撃を与え続ける。

 

激しく打ち続く衝撃に、真梨花の思念は綻びを見せ始めた。

 

――真梨花、頑張るのよ、負けないで、私たちが付いています。

遠いイズモから、アフリカ大陸から、ミドリとエスタの思念がシールドを守り支える。

 

それでも、巨大な宇宙人の憎悪の雷イカヅチは止むことなく、ロミたちを襲い続ける。

集まり始めていた精霊たちは、恐怖の雷イカヅチに怯え、氷の下に隠れてしまい、エンパシーの響きが一瞬途切れてしまい、そこに沈黙が襲う。

 

するとそのとき、氷の上で蓮華座を組むトニーの横に、妖精の女王が現れて、トニーの額に口づけをして、にっこりとほほ笑んだ。

――トニー、来たわよ、一緒に戦いましょう、私たちの子供のために。

 

妖精の女王は真梨花の傍らに立ち、愛のエンパシーを紡いでいく、真梨花はそのエンパシーをロミの音楽に合わせて、南極大陸の四方に拡げていった。

 

ロミの眼前に立ちふさがる巨大な宇宙人も、その憎悪のエネルギーを止まることなく打ち続けてくるが、真梨花の放つ愛のエンパシーは果てしなく四海の精霊たちに届いてゆき、次から次へとロミの音楽に集まってくる。

 

やがてその音楽は幾重にも響き渡り、南極大陸の上空を覆うほどの大音量を響かせる壮大なシンフォニーとなった。

 

巨大な宇宙人は動きを止めて、ロミと妖精たちの歌声に耳を傾け始めた。

彼が放つ雷光は、いつの間にか夜空に輝く花火のように鮮やかな背景を描き始めた。

壮大なシンフォニーをバックに、ロミは歌う、孤独な姿の、大きな人に向かって。

 

それはやがて愛と癒しの音楽に変わってゆき、この大陸の超古代に存在した美しい風景をイメージするかのようにして、巨大な宇宙人の孤独な心を優しく包んでいった。

 

 

 

 

――大きな人よ私の眼を見てごらんなさい

 

――どうぞ私の心に触れて

――私はあなたと繋がりたいだけなのだから

 

――大きな姿のかわいい人よごらんなさい

――ここに仲間がたくさん来ているのよ

 

――あなたのためにみんなは一つ

――かわいい人よごらんなさい

――もう、あなたは一人ではないのよ

 

――大きな姿のかわいい人

――あなたのためにみんなは一つになったのよ

 

――大きな姿のかわいい人

――さあ、こっちへいらっしゃい。

 

ロミと妖精たちの奏でる音楽は、愛と癒しのエンパシーでおおきなひとを包んだ。

すると巨大な宇宙人の雷光も尽き果てて、ついに彼は、氷の上に跪(ひざまず)いた。

 

 

 

 

 

 

――大きな人、もう大丈夫よ。

 

砂漠で出会ったスフィンクスのように、宇宙人も小さく縮んで、やがて7フィート位の身体になり、ロミの前に跪いたまま、肩を震わせていた。

 

『ロミ様お許しください、私はいったい何をしているのでしょう』

 

ロミはシールドを出て、彼の前にその優美な腕を差し出した。

宇宙人は遮光帯はそのままに、ロミのその手に口づけをして、凍り付いた頬を擦り付けた。

 

――どうしてあなたはここにいるの?

――話してごらんなさい、大きな人。

 

 

 

『私は長い間、独りぼっちでした。この星に移住してきた仲間たちは、この星の氷河期が進むうちに、ここに住み続けることは難しいとわかり、オリオン腕の彼方に発見した水惑星へと出発したのですが、私だけ宇宙船に乗せてもらうことが出来なかったのです』

 

――まあ、可哀そうに、どうしてそんな事に?

 

『私たち一族は、長い旅をするときには身体をちいさくして舟に乗り込むのですが、まだ私は幼く身体を縮小することが出来ませんでした。あの船の座席に座るには、私は大き過ぎました。この星に残された私はここを離れるわけにもいかず、ずっとそれからここに住み着いていたのです』

 

『私の父が作ってくれた、この氷の塔の中に私の部屋を作り、そこでずっと暮らしていたのですが、ある日シールドを破って侵入してきた人たちがこの中に入ってしまい、仕方なく一緒に暮らしてきたのです。あの時、ヘンリーが魔法を使ってシールドを破ってしまったのです』

 

――あなた、お名前は?

『私は英語名ではマリアと呼ばれます』

 

――マリア、女性なのね。年齢を聞いてもいいかしら。

『私たちの暦では17才、地球の暦ではたぶん、1700才だと思います。ヘンリーたちが侵入してきた時は、15才くらいかしら』

 

マリアの話を聞いて、真梨花たち妖精軍の一同は驚きの声を上げた。

「では、あなたたち一族がこの地球へ来たのはいつごろのこと?」

ロミは言葉を出して問いかけた。

 

 

『私の先祖が、この地球へ訪れたのはたぶん10万年くらい前だと思います』

「そんな昔からこの地球にいたのね」

 

『はい、そしてかなり昔から、オリオン腕の惑星への移住は進められており、何度も行き来をしていましたが、丁度準備が整ったのがこの地球の小氷河期のころでした』

 

 

今度は、真梨花が宇宙人マリアに聞いた。

「地球には、もっと暖かいところがあるのに、どうして南極に住んでいたの」

 

「私にはよく分かりませんが、もともとこの星に永住するつもりは無く、一時的なものだったと教わりました、私たちの神がしばらく留まるように指図をされたとの言い伝えもあります。それに氷の世界は清潔です」

 

そしてロミは彼女に訊ねた。

「ところでマリアさん、あなたは生きているの?」

 

「もちろん、私は生きています」

「では、食べ物はどうやって手に入れるの」

 

「ヘンリーが運んできてくれます」

「ヘンリーも生きているの?」

「彼もいっしょに暮らしています」

 

ロミたちはマリアの案内で氷の塔に入ることになった。

「あら、ガートルードは何処へ行ったの」

先程まで真梨花の傍らにいたガートルードの姿が、いつの間にかいなくなっていた。

「トニー、ガーティーは?」

トニーは狐に摘ままれたような顔で応えた。

「いったい何の話をしているのかね」

 

あの時現れたのは幻なのか、トニーは知らないふりをしているのか、ロミはそれ以上のことは聞かなかった。ミドリとエスタが守っていてくれたのだから、テレポートも可能だろうと思ったが、もしそうなら、お腹の赤ちゃんが少し心配になった、ロミはあとで思念を使おうと思った。

 

氷の塔の中は適度に暖かく、一同は重い防寒具を脱いで広間に落ち着いた。マリアは宇宙服を脱いで柔らかな服装になり、長いブロンドの髪と美しい素顔を見せた。

 

部屋にはソファーやテーブル、そして大きな画面のテレビも有った。この銀河の反対側にある、オリオン腕の惑星から時折映像が送られてくるとマリアが言った。但し、100年くらい遅れて届くので、今の状況を知ることは無いとのことだった。

 

そして、一同が疲れを休めている時に、ヘンリ-・バワーズ中尉がそこに戻ってきた。

だが、スコット大佐とウイルソン医師と同様に、彼もこの世の人では無かった。

 

 

次項 Ⅱ-17へ続く