ロミと妖精たちの物語176 Ⅳ-62 愛すれど心さみしく⑫ | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

2091年5月の今日、いまから500年前のインカ帝国、滅びゆくマチュピチュの月の神殿を守っていた聖なる巫女、スペイン人とインカ人との間に生まれたユマ・ユパンキ・マルケスの姿を借りた、ザ・ワンの小型宇宙船フェアリーシップの人工頭脳ユマは、ロミがこしらえた青いトーガを身に纏い、マックスアパート最上階にある広いダイニングルームの中央に立った。

 

 

アイルランドのいたずら妖精フィニアンは、彼女の長い手足とその優雅な身のこなし、そしてエキゾチックな美貌に思わず口笛を吹きそうになるのを我慢して、真面目な顔で彼女に言った。

「それで、彼はなんて言ってきたのですか、ミス・ユマ」

 

ユマは巫女の長い手足が気に入ったのか、全身を映す姿見の前で身体をターンさせてみた。

「ええ、今日のところは歓迎の挨拶にとどめました」

 

フィニアンは、彼女の隣に映っている自分にビックリしたように、鏡から目を逸らして言った。

「歓迎のあいさつですって?」

 

ユマは鏡に映る自分の顔をじっと見ながら、フィニアンの質問に応えた。

「そうです、彼もまた、ザ・ワンの銀河から新天地を求めてこの銀河の中継地、地球を目指して来たのです」 

 

ユマは鏡を見たまま、自分の脚に触れ、腕をさすり胸にも触れてみた。

 

「では彼らも、最終的にはザ・ワンの人々同様に、ニューザ・ワンを目指しているのでしょうか」

「そうだと思います」

 

ユマはべっ甲細工のような髪留めを外し、腰まで伸びた黒髪を広げた。

「フィニアンさん、どうして彼ら(複数形)だと分かったのですか」

「いや、その、あの大きな宇宙船を見たら、そう言ってしまっただけの事です」

 

ユマは鏡を見ながら頬を撫で、指でつねってみた。

そして黒い瞳をじっと見つめ、眼球を指で触れてみた。

突然痛みを感じて、彼女は驚いて姿見の前から振り返った。

「すみませんロミ、お風呂に入ってもいいかしら」

 

ロミはユマの傍らに身を寄せた。

「そうねユマ、ゆっくりお湯に浸かって、まずは心身を休めましょう」

 

ロミは、マリアとファンションも連れて浴室に向かった。

「パパ、万里生、フィニアン、ミルクマンさんも、悪いけど食器を洗ってテーブルを片付けておいてね、私たちはお風呂に行ってくるわ、ジェーンあなたも一緒に行きましょう、ユマと私たちに人間の身体についてのカウンセリングをお願いしたいのよ、いい?」

 

「もちろんよロミ、お風呂の準備をしてくるから、あなたたちは着替えを用意していらっしゃい」

 

娘たちが部屋を出て行くと、博士がテーブルの上の食器を片付けながら言った。

「フーム、あの美女は一体何者かね、フィニアンさん」

 

博士の少し驚いたような声を聞いて、フィニアンはこれまでの説明を簡単にした。

 

「という訳で博士、彼女はミス・ユマ、あなたのお嬢さんの新しい友人です」

「なるほど、ではまた一人妖精が現れたという訳ですな。それで、ミス・ユマが言っていた彼ら複数の、というのは一体何のことなのですか」

 

フィニアンは、万里生とミルクマンの顔を見て、それぞれに頷きあうと、博士に説明した。

 

「博士、あの巨大な宇宙船の中には、人工頭脳がいっぱい眠っていたのです」

「人工頭脳が?」

「ええ、機械としてはもう壊れてしまって使い物にならない、建設ロボットや工作ロボットが、無数にある船室の中に積まれていたのです。全てA.I制御のロボットがね」

 

フィニアンの言葉を聞いて、博士も得心がいったように大きく頷いた。

「さあ食器はこの洗浄機に入れて、テーブルクロスを新しいものに変えようかね」

 

 

湯気の立つ暖かい浴室では、ロミたちが自分の身体も洗いながら、新しい肉体を持て余しているユマの身体を丁寧に洗い、長い黒髪をシャンプーで揉み洗いした。

 

ユマは石鹸とシャンプーの甘い香りにうっとりと目を閉じ、シャワーで洗い流されると、ロミに手を引かれてお湯の満たされた浴槽に身体を沈めた。

 

医師であり大学教授であるジェーンから、人体について細胞の新陳代謝や消化器系統と循環器系統の働き、そして生理機能などについて概略を教授された。

 

眼を閉じたままのユマは、ジェーンの言葉と一緒にその思考を脳内に取り込み、巫女のユマの脳と合体している人工頭脳で、またたく間に人体についてを学習してしまった。

 

「どうですかユマ、その身体に慣れてきたかしら」

 

ユマは目を開き、お湯の中から両手をだして、濡れた手のひらと甲を交互に見つめた。

「ええ今はとてもいい気持ちです、ありがとうございます、教授」

 

そしてロミと妖精たちにも彼女は微笑みを向けて言った。

「ロミ、私は息をしています、心臓が働き血液が新鮮な酸素を運んでいます」

ロミは、新しい人生を歩み始めたユマをそっと抱きしめて、愛と癒しのエンパシーで包んだ。

 

お湯から上がり、バスタオルで身体を拭いていると、先に出ていたマリアが冷えた妖精水を持ってきてくれて、そのグラスをユマに差し出した。

 

ユマは冷たいグラスを受け取り、一息でゴクゴクと飲み干すと、満面の笑みで天を見上げた。

彼女の眼には、今にもこぼれそうな涙がいっぱいだった。

 

「ああ、――神様、感謝いたします」  

 

 

次項Ⅳ-63に続く

 

 

(6年前デビュー2曲目いいね!)

この記録は2018年6月に書き下ろしました

 

 

 

おまけは、ギバオブアキバの「君とアニメが見たい」のカバーです

 

 

 

 

 

 

TVアニメ「絶対可憐チルドレン」を卒業した中元すず香

そしてまだ小学生の、幼い水野由結と菊地最愛

当時見つけていたら、きっと即閉じしていたと思います

タワーレコードのイベントにて

 

 

 

 

今だから言えます~「みんな可愛いですな」~(^^♪