島田雅彦の「空想居酒屋」を読んだ! | とんとん・にっき

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来るもの拒まず去る者追わず、
日々、駄文を重ねております。

 

まず初めに、昨日発表された芥川賞について…。

第164回芥川賞受賞作、宇佐見りんの「推し、燃ゆ」について、選考委員を代表して島田雅彦は、以下のように講評しています。

「ファンの意識に肉薄した作品。刹那的に見える言葉もかなり吟味されていて、文学的偏差値が高い」。

そうそうたる選考委員のなかで、選考委員の代表ですよ、代表!

さすがは「芥川賞最多落選の芥川賞選考委員」ですね。

と、この話はここまで・・・。

 

島田雅彦の「空想居酒屋」(NHK出版新書:2021年1月10日第1刷発行)を読みました。

 

酒場をハシゴして40年、

包丁を握って35年の小説家が、

理想の居酒屋を開店した?

 

僕は、ほとんどお酒は飲みません。ビールは付き合い程度に飲みますが…。居酒屋なんぞへはよっぽどでないかぎり行きません。何かの会合があると、まずはビール、そこまでは何とか付き合います。が、その後ワイン、日本酒と続きます。これらは種類も多いし、銘柄も能書きが多いので、僕はとても付き合いきれません。早々に退散します。付き合いが悪いと思われているかもしれませんが…。

 

最近「角打ち」に誘われて、断るのに困っています。「安くて、いいとこあるんだよ」と。これがだいたい遠いんですよ、北千住とか、立石とか。千円でつまみがついてそこそこ飲めるという「センベロ」など、呑兵衛は苦労して飲んでるんですね。「酒のつまみ」に関しては、なんでも好きです。が、自分で作るまでには、さすがに至りません。要するに、面倒なのは好きではありません。なにしろわがままです。

 

角打ち(かくうち)とは:ウィキペディアによると

酒を購入し、その場ですぐ飲むことのできる酒販店である。個人経営の小規模な店で、酒販店の一角にカウンターテーブルを備え、そこで飲むことができる形態が多い。サービスはなく、酒代は酒屋の販売価格のみとなる。そのため、食品衛生法における飲食店には該当しない。語源は諸説あり定かではないが、「角打ち」の名称は「量り売りされた日本酒を、四角い枡の角に口をつけて飲むこと」、「酒屋の店の隅(角)で酒を飲むこと」などに由来すると言われる。類似した形態の店は、近畿では「立ち呑み」、東北地方では「もっきり」、鳥取県・島根県東部では「たちきゅう」と呼ばれる。

 

でも、この本を読めば、どんな人でも間違いなく「空想居酒屋」へ行きたくなります。なにしろ文章が上手い、旨い、読ませます。世界各国はもちろん、日本国内でも隅々まで、細かいところまで、よく知ってます。そして自分でも作ります。いや、この本に、島田雅彦に脱帽です。

 

そこに酒があり、ドリンカーがいれば、即酒場。

コロナ禍で外食産業の大手チェーンが大打撃を受ける一方、デリバリーを軸としたゴーストレストランが増えてきている。ポスト・コロナの飲食店はどうなってしまうのだろうか。そんな中、国内外の酒場をハシゴして40年、包丁を握って35年の「文壇一の酒呑み&料理人」が、ついに理想の居酒屋“masatti“を開店した??? 芥川賞最多落選の芥川賞選考委員が放つ、気宇壮大かつ抱腹絶倒の食エッセイ!(レシピ&カラーページ付)

 

以前、「孤独のグルメ」の原作者久住昌之氏と酒場談義をしたことがあった。・・・主人公井之頭五郎はひなびた酒場、貧乏くさい食事、時代から取り残され、半ば遺跡化した街を好んで訪れていた。私がしたかったことはまさにこれだと思った。「孤独のグルメ」は食堂や酒場と井之頭五郎とのコラボレーションであり、変哲もない場末、大して美味くもない料理から最大限の魅力を引き出す一種のインスタレーションである。


一人飯、一人酒がサマになるようになったら、それは一人前ということである。自堕落にならず、惨めたらしくなく、他人の同情など買わず、他人に興味を抱かれるようであれば、それはプロと見ていい。かなり昔のことだが、渋谷のまあまあ有名なそば屋で飲んでいたら、往年の名脇役高品格が一人で現れ、天ざるとぬる燗を注文すると、ちびちび飲みながら、買ってきた本を読み始めた。刑事ドラマの一シーンを思わせる構図に見入っていたら、目が合ってしまい、軽く会釈すると、微笑で応えてくれた。以来、私の中であの時の高品格こそが一人酒の模範となったのであった。

 

ドキュメント「何処でも居酒屋」vol.1

 

ドキュメント「何処でも居酒屋」vol.2

 

目次

1.マッコリタウンの夜
2.「離れ」としての居酒屋
3.臨時居酒屋の極意
4.「揚げ物王」はどれだ?
5.屋台というハッピー・プレイス
6.豆腐と卵
7.空想「鍋フェス」
8.空想居酒屋の「炊き出し」
9.魅惑の寿司屋台
10.健康度外視珍味偏愛
11.鰻
12.コロナ時代の食
13.免疫向上メニュー
14.ポスト・コロナの飲食店の行方
15.闇市メニュー
16.奇想料理とベジ呑み
17.スープで呑む
18.世界の屋台に立つ
19.「何処でも居酒屋」開店
20.歓迎光臨 天ぷらMasatti

 

 

島田 雅彦:
小説家、法政大学国際文化学部教授
1961年、東京都生まれ。小説家、法政大学国際文化学部教授。東京外国語大学ロシア語学科卒業。在学中の83年に『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビュー。『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞、『彼岸先生』で泉鏡花文学賞、『退廃姉妹』で伊藤整文学賞、『カオスの娘』で芸術選奨文部科学大臣賞、『虚人の星』で毎日出版文化賞を受賞、『君が異端だった頃』で読売文学賞。他に『悪貨』『オペラ・シンドローム』など。2010年下半期より芥川賞選考委員。

 

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