NHK100分de名著「谷崎潤一郎スペシャル」を観た! | とんとん・にっき

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来るもの拒まず去る者追わず、
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NHK100分de名著「谷崎潤一郎スペシャル」を観ました。毎週1回、計4回分です。

 

NHK100分de名著は、過去にカミユの「ペスト」がありました。

100分de名著「アルベール・カミユ『ペスト』中条省平」を読んだ!

次回11月は、高樹のぶ子の「伊勢物語」です。テキスト購入済み。

初心者向きに、やさしくかみ砕いているので、テーマにもよりますが、なんかハマりそうです。ただし、テーマは一つで月4回やるか(カミユの「ペスト」)、一回ずつ違うテーマで4回やるか(谷崎のように)、異論があるとは思いますが…。

 

「陰翳礼讃」、これは建築学科の教科書のようなもので、必ず読まされます。島田雅彦も、安藤忠雄や磯崎新が海外で講演する時は、必ずこの本(英語版)を使っていると。また、文庫本の解説は吉行淳之介、「芸者のあの化粧は、わが国の照明がまだ燭台とか行灯によっていて部屋が仄暗かったときのものにちがいない。つまり仄暗さのなかで効果が出て、美しくみえる化粧法である」と。ほかに、黒いヨーカンについても言及していますが、省略します。

谷崎は言う。「美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える。夜光の珠も暗中に置けば光彩を放つが、白日の下に曝せば宝石の魅力を失うが如く、陰翳の作用を離れて美はないと思う」と。

 

プロヂューサーAのおもわく

「愛と孤独」「美への妄執」「心に巣食うエロティシズム」……私たち人間が逃れようとしても決して逃れない宿業を見つめ、自らの五感を総動員して、その悲喜劇を真っ向から描き続けた作家・谷崎潤一郎(1886-1965)。耽美的で、官能退廃を極めた絢爛豪華な作品群は、今も多くの人たちに読み継がれています。谷崎の代表作「痴人の愛」「吉野葛」「春琴抄」「陰翳礼賛」などの作品を通して、「性とは?」「美とは?」そして「人間とは?」…といった奥深いテーマをあらためて見つめなおします。
谷崎のデビュー作「刺青」は1910年、24歳のとき。性的倒錯を凝視した耽美的な作風が文壇で絶賛され一躍時代の寵児となりました。漢語や雅語から俗語までを使いこなす華麗な文体、作品ごとに自在に変幻する作風は他の追随を許さず、近代日本文学を代表する作家のひとりに数えられるまでに。人間は、どんなに偉そぶったところで、誰一人として、欲望や性的倒錯、愛するものへの妄執を避けては通れません。それらに翻弄されることが人間の宿命ならば、それをじっと凝視し、その正体を見極めていくこと。谷崎は、小説という方法で、欲望に翻弄される人生の悲喜劇を描き切り、人間存在の浅ましさ、愚かさ、滑稽さを浮かび上がらせていったのでえす。
谷崎作品の魅力はそれだけではありません。人生には、そうした愚かさを突き抜けて、美しいものが確かに存在すると谷崎はいいます。近代化によって失われようとしていた、日本ならではの「闇」をじっと見つめることで、我々が忘れかけていた美を再発見していく。ぎらぎらした直射日光ではなく、庇や障子に濾過された淡く微妙な間接光によって、朦朧と澱むように現れる暗がりにこそ、幽玄な美があると谷崎はいうのです。谷崎が救い出した、日本ならではの陰翳の美は、今も、多くのクリエイターや芸術家、文学者たちに影響を与え続けています。
番組では、作家の島田雅彦さんを指南役として招き、谷崎潤一郎の文学を分り易く解説。代表作4冊に現代の視点から光を当て直し、そこにこめられた【人間論】や【美学】【小説表現の奥深い可能性】など、現代の私達にも通じる普遍的なテーマを読み解いていきます。
 

第1回 10月5日放送

     エロティシズムを凝視する ~「痴人の愛」~

第2回 10月12日放送

     「母なるもの」を探す旅 ~「吉野葛」~

第3回 10月19日放送

     闇が生み出す物語 ~「春琴抄」~

第4回 10月26日放送

     光と陰が織りなす美 ~「陰翳礼讃」~

 

NHK100分de名著「谷崎潤一郎スペシャル」

2020年10月Eテレ

島田雅彦(作家、法政大学教授)

司会:伊集院光(タレント)

    安部みちこ(NHKアナウンサー)

 

第1回 エロティシズムを凝視する ~「痴人の愛」~

 

 

 

第2回 「母なるもの」を探す旅 ~「吉野葛」~

 

 

 

第3回 闇が生み出す物語 ~「春琴抄」~

 

 

第4回 光と陰が織りなす美 ~「陰翳礼讃」~

 

 

 

映画のポスター

僕は両方とも、観ています。

「痴人の愛」主演:叶順子、船越英二

「春琴物語」主演:京マチ子、船越英二

映画「痴人の愛」         映画「春琴物語」

 

手持ちの本

岩波文庫「吉野葛」      中公文庫「陰翳礼讃」

 

「現代日本文学館」文芸春秋社刊

1.昭和41年4月1日第1刷

2.昭和42年5月1日第1刷

3.昭和43年4月1日第1刷

現代日本文学館、文芸春秋「谷崎潤一郎1.2.3.」
「痴人の愛」「吉野葛」「春琴抄」

 

以下、NHK100分de名著「谷崎潤一郎スペシャル」ホームページより

 

第1回 エロティシズムを凝視する ~「痴人の愛」~
人間の業ともいうべきエロティシズムを描き切った作品「痴人の愛」。カフェーの女給だった15歳のナオミを育て、いずれは自分の妻にしようと思った真面目な男が、次第にナオミに心身ともに溺れ、破滅するまでを描く物語だ。自らの五感を総動員しモダニズムの手法を駆使したこの作品を執筆することで谷崎は、愛への妄執や性的倒錯に翻弄される人間の悲喜劇に真っ向から向き合った。第一回は、谷崎潤一郎の人となりや小説執筆の背景を掘り下げながら、「痴人の愛」という小説に描かれた「エロティシズムという業」を読み解いていく。

第2回 「母なるもの」を探す旅 ~「吉野葛」~
谷崎は、それまで磨き上げてきたモダニズムをいったん手放すように、日本の伝統や古典を素材とした文章を書き連ねていく。異界への旅ともいえる吉野への道行きの中で、主人公やその友人・津村が、伝説・歴史・伝統芸能を通してかいまみることになる「母なるもの」への限りなき憧憬を描く「吉野葛」。そこには、期せずにして、谷崎が幼い頃から追い求めていた母の存在が立ち現れてくる。果たして、人間にとって「母なるもの」とは何か? そして、それが人間を魅惑し続けるのはなぜか? 第二回は、「吉野葛」を読み解くことで、人間を深いところで縛り続ける「母なるもの」がどんなものなのかに迫っていく。

第3回 闇が生み出す物語 ~「春琴抄」~
ある感覚を突出させることで感覚を純化し、誰も見たことのない世界を現出させる。谷崎はその方法として、「春琴抄」という作品の中で主人公から光を奪った。美貌の師匠・春琴に仕える佐助は、春琴が何者かに煮え湯を浴びせられてその美貌が台無しにされたことを知ると、自らの目を突いて、春琴と同様の盲者になる。そこには、音や触覚による、めくるめく世界があった。直接的、物質的な光を断ち闇の世界に入った佐助の姿には、現実の日本社会に幻滅して、文学の世界の中に理想の美を実現しようとする谷崎の姿が重なる。第三回は、感覚を研ぎ澄ますことで、全く新しい世界を現出させる、文学の豊かな可能性に迫る。

第4回 光と陰が織りなす美 ~「陰翳礼讃」~
「厠」「庇」「障子」「金屏風」…日本ならではの建築や調度品に現れる「陰翳の美」に迫ったエッセイ「陰翳礼賛」。ぎらぎらした直射日光ではなく、庇や障子に濾過された淡く微妙な間接光によって、朦朧と澱むように現れる暗がり。そこにこそ「幽玄の美」があると考えた谷崎は、能や文楽といった古典芸能にも同様の美が現れているという。闇の中にほの白く浮かび上がる顔や手。そのくすみや翳りを帯びた白にこそ、現実と非現実の区別をたやすく呑み込む真の美があるというのだ。それは、近代化・西欧化がもたらした人工光によって失われようとしていた、日本ならではの美の再発見だった。第四回は、谷崎が追い求めた究極の美ともいうべき「陰翳の美」とは何かに迫っていく。

 

NHK100分de名著「谷崎潤一郎スペシャル」

https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/102_tanizaki/index.html