島田雅彦の「スノードロップ」を読んだ! | とんとん・にっき

とんとん・にっき

来るもの拒まず去る者追わず、
日々、駄文を重ねております。

 

島田雅彦の「スノードロップ」(新潮社:2020年4月25日発行)を読みました。

 

島田雅彦はいう。

女子によく訊ねる三択問題というのがある。男を選ぶポイントとして、次の三つのうちで最もあなたにとって重要なのはどれか? ①容姿、②カネ、③徳。

これは「深読み日本文学」の「あとがき」の最初に書かれているものです。これに答えたからといって、何がどう変わるというものではありませんし、ましてや島田の最新作「スノードロップ」との関係も…。

 

島田雅彦は1961年3月13日東京都生まれ。東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業。小説家。法政大学国際文化学部教授、と略歴にあります。「法政大学国際文化学部教授」というのは、僕は今の今まで知りませんでした。読んだり見たりはしていたんでしょうが、意識したことはありませんでした。ということは、高橋源一郎と同じく、作家と大学教授の「両刀使い」ということになります。1983年に「優しいサヨクのための嬉遊曲」でデビューし、芥川賞候補作となります。僕はこのデビュー作、かなり後になって読んだのですが、まあ、読みました。その後何度か芥川賞候補になりますが、結局芥川賞は受賞せず、突然芥川賞選考委員になりました。この辺が面白いので、新聞記事をブログに載せたりもしました。で、「深読み日本文学」になり、「君が異端だっら頃」になるわけで、僕は島田の作家活動や作品については、今回の「スノードロップ」に至るまで、ほとんど何も知りませんでした。

 

島田雅彦の今回の「スノードロップ」、タイトルだけではどんな小説家ほとんどわかりません。小説の主人公、皇后さまのネット上のハンドルネームが「スノードロップ」なのです。なんじゃ、それは!

 

島田は巻末にこう書いています。

作家活動20年目を期して2000年、三島由紀夫の最後の四部作「豊饒の海」、とりわけ「春の海」を強烈に意識し、不遜にも皇室を巻き込んだ恋愛小説を上梓した。もし、その恋が成就していたら、歴史は全く別の未来を切り開いたはずの危険かつ甘美な恋を、20世紀百年の歴史を背景に開花させてやろうと私は企んだ。

(僕は三島由紀夫の最後の四部作も読んでいません

 

「無限カノン」三部作の第一部「彗星の住人」、第二部「美しい魂」、第三部「エトロフの恋」を書き、「豊饒の海」へのオマージュとして恥ずかしくないよう、「無限カノン」の執筆に心血を注ぎ、私の代表作と自負できるものに仕上がった、と島田はいう。僕は読んでいないので、何か言う権利はありません。ただ「スノードロップ」の主人公は、「スノードロップ」のハンドルネームでダークネットに書き込む不二子は、パラレルワールドの皇后です。皇室の嫁いだ不二子は凋落著しい日本の復活を模索します。いわば「令和の改新」です。

 

本の表紙には、以下のようにあります。

「あなたは考えたことがありますか? 自分がラストエンペラーになるかもしれないって」 私は東京の空虚な中心に広がる森に住む憂いの皇后。ハンドルネームはスノードロップ。花言葉は「希望」「慰め」の二つ。腐敗した泥舟政権は国民を国家に奉仕させる倒錯を繰り返している。さあ、「ダークネット」を駆使し、「令和の改新」を実行すべき時がきた――。「立憲民主国」日本最後の「良心」はどこにあるのか? 作家の奔放な想像力が躍動する禁断の「皇室小説」! あの「無限カノン」の陶酔が蘇る――。

 

 

皇后陛下が立ち上がる時
島田雅彦、望月衣塑子

「令和」改元から1年。新しい天皇陛下の世がいよいよ本格的に始まる今、小説家の想像力が未来の皇室像を予言する……。日本の政治の最先端に立ち、首相官邸での「質問」により世論を動かす新聞記者がどう読んだか。禁断の「皇室小説」をめぐるスリリングな対話!

https://www.shinchosha.co.jp/book/362210/

 

島田雅彦:

(異常に長い略歴、本の裏表紙が全部これ!)
1961年3月13日東京都生まれ。東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業。小説家。法政大学国際文化学部教授。1983年、大学在学中に『海燕』掲載の『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビューし、芥川賞候補作となる。候補6度は最多記録。小説に『亡命旅行者は叫び呟く』『夢遊王国のための音楽』(1984年、野間文芸新人賞)『天国が降ってくる』『僕は模造人間』『ドンナ・アンナ』『未確認尾行物体』『夢使い――レンタルチャイルドの新二都物語』『ロココ町』『アルマジロ王』『彼岸先生』(1992年、泉鏡花文学賞)『預言者の名前』『流刑地より愛をこめて』『忘れられた帝国』『浮く女 沈む男』『そして、アンジュは眠りにつく』『内乱の予感』『君が壊れてしまう前に』『子どもを救え!』『自由死刑』『無限カノン』三部作(『彗星の住人』『美しい魂』『エトロフの恋』)『フランシスコ・X』『溺れる市民』『退廃姉妹』(2006年、伊藤整文学賞)『エリコ』『カオスの娘――シャーマン探偵ナルコ』(2008年、芸術選奨文部科学大臣賞)『佳人の奇遇』『徒然王子』(第1・2部)『悪貨』『英雄はそこにいる』『傾国子女』『ニッチを探して』『暗黒寓話集』『虚人の星』(2016年、毎日出版文化賞)『カタストロフ・マニア』『絶望キャラメル』『人類最年長』『君が異端だった頃』(2020年、読売文学賞)。随筆等に『中枢は末梢の奴隷 解剖学講義(養老孟司と共著)』『偽作家のリアル・ライフ』『汗のドレス(唐十郎と共著)』『語らず、歌え』『天使が通る(浅田彰と対談)』『愛のメエルシュトレエム 島田雅彦クロニクルズ1987-1991』『死んでも死にきれない王国から ある旅人のアフリカ日記』『植民地のアリス』『漱石を書く』『瞠目新聞』『彼岸先生の寝室哲学』『茶の間の男(語り下ろしロング・インタビュー大辻都、星野智幸編)』『ミス・サハラを探して チュニジア紀行』『世紀末新マンザイ パンク右翼vs.サヨク青二才(福田和也と対談)』『日本の名随筆 別巻85 少年(編纂)』『退廃礼讃』『郊外の食卓』『感情教育』『ヒコクミン入門』『ひなびたごちそう 島田雅彦の料理』『アジア自由旅行(佐藤治彦と共著)』『楽しいナショナリズム』『無敵の一般教養(パンキョー)(編纂)』『食いものの恨み』『衣食足りて、住にかまける』『快楽急行』『おことば 戦後皇室語録』『妄想人生』『一度死んでみますか? 漫談・メメントモリ(しりあがり寿と対談)』『酒道入門』『島田教授の課外授業 悩める母親のために』『小説作法ABC』『クオリア再構築 常識の壁を突き抜け、遡る5つの対話(茂木健一郎と対談)』『徒然草 in USA 自滅するアメリカ 墜落する日本』『オペラ・シンドローム 愛と死の饗宴』『迷い婚と悟り婚』がある。

 

過去の関連記事:

島田雅彦の「君が異端だった頃」を読んだ!

島田雅彦の「深読み日本文学」を読んだ!

島田雅彦さん、芥川賞選考委員に! 

島田雅彦の「優しいサヨクのための嬉遊曲」を読む!