高村薫の「時代へ、世界へ、理想へ 同時代クロニクル2019→2020」を読んだ! | とんとん・にっき

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時代へ、

世界へ、

理想へ、

同時代クロニクル2019→2020

 

高村薫の「時代へ、世界へ、理想へ 同時代クロニクル2019→2020」(毎日新聞出版:2020年3月30日発行)を読みました。

 

引っ越しをした後の本棚を見てみると、高村薫の初期の傑作、「マークスの山」や「レディ・ジョーカー」が出てきました。時間があったら読み直したいものです。

 

かつては小説家としてデビューし、多くの作品を残していた高村薫ですが、僕の理解では推理小説だったか・・・。略歴を見ながら僕が読んだものを拾ってみると、「マークスの山」「照柿」「レディ・ジョーカー」「晴子情歌」等々、当時出すものはそこそこは読んでいました。「晴子情歌」(上下)は、よく覚えています。青森の名家の人々の生き様を通して、近代日本そのものを描き切った名作です。次に出た「新 リア王」がら読まなくなったようです。次第に高村は、小説から「時評」にシフトしていきます。いや、小説は書いていたでしょうが、僕の前からフェード・アウトして、「時評」が前面に出てきました。

高村薫の「作家的覚書」を読んだ!

 

本の帯には、以下のようにあります。

破局を見つめ、希望を取り返せ。

政治腐敗は極を越え、社会システムは破綻寸前。ウイルスが、災害が、気候変動が、地球環境から個人の肉体、精神までおびやかす。人倫の軸が揺らぐ、かつてない時代2019→2020を、理想を手放さぬ作家の幻視力が見透す。根底的な思考による、より良く今を生きるための時評集。

 

 

この本は、「サンデー毎日」

2019年1月13日号から2020年3月1日号まで

連載された「サンデー時評」を再構成したものです。

が、しかし、週刊誌の記事だからと言って侮れません。

 

どこをとってもいいのですが、少し長いが、たとえばここ。

歪められた「説明責任」荒ぶ、この国の風景

それにしても、国内向けにはあれこれ説明をしながら、対外的に沈黙するのは、国内向けの説明が嘘だと認めるに等しい話である。あるいは国の政策はどれも、もともと「説明責任」が生じる余地もない、内輪のもたれあいで動いているということである。エネルギー基本計画だけではない。直近では、大学入試改革で民間業者委託が図られた経緯について、あるいはホルムズ海峡へ自衛隊の艦船を派遣することについて、またあるいは、米会計検査院が欠陥機と断定した最新鋭ステルス戦闘機F35を日本が105機も買うことについて、さらには、沖縄県辺野古沖の新基地建設のための土砂投入開始から1年を迎えた14日現在、投入量は事業全体の土砂量の1%の留まる一方、費やされた費用が1471億円になることについて。このように国の在り方を左右するような大事が、ろくに説明もなく次から次へと政府の独断で決められてゆく・・・。

2020・1・5

 

高村薫:

1953年大阪市生まれ。作家。

1993年「マークスの山」で直木賞、

1998年「レディ・ジョーカー」で毎日出版文化賞、

2016年「土の記」で野間文芸賞・大佛次郎賞・毎日芸術賞を受賞。

最新作は「我らが少女A」

 

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