原武史の「平成の終焉―退位と天皇・皇后」を読んだ! | とんとん・にっき

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原武史の「平成の終焉―退位と天皇・皇后」(岩波新書:2019年3月20日第1刷発行)を読みました。

 

天皇に関して、以前、長く皇室・宮内庁を取材してきたA新聞の編集委員Kさんのお話を聞く会がありました。2017年6月のことです。

「天皇が自ら動くとき」、A新聞編集委員K記者に聞く!

 

今朝の朝日新聞、2019年(令和元年)5月1日の、記事全体がもちろんですが「令和 新天皇即位」の記事でほとんどが占められていました。その3面に「考/論」という記事に、原武史・放送大学教授(日本政治思想史)がコメントを寄せていました。その全文を以下に載せておきます。

 

朝日新聞:令和元(2019)年5月1日

 

原武史は、今までに「昭和天皇」や「『昭和天皇実録』を読む」(ともに岩波新書)など、天皇関連の書籍を出していて、今回「平成の終焉―退位と天皇・皇后」(岩波新書:2019年3月20日第1刷発行)を刊行しました。実に時宜を得て、まさにタイムリーな本です。

 

この本は「退位の意向表明」として、以下のように始まります。

平成という時代が終わろうとしています。きっかけとなったのは、天皇明仁による退位の表明でした。2016年7月13日のNHKニュースで第一報が流され、8月8日の午後3時からは天皇自身がテレビに出演し、ビデオメッセージとして「象徴としてのお務めについての天皇陛下の

おことば」を10分あまりにわたって読み上げました。

 

それに端を発し、次に天皇明仁、皇后美智子の結婚以来60年間におよぶ歩みを、皇太子(妃)時代にあたる昭和期の30年間と、天皇・皇后時代にあたる平成期の30年に分けて振り返ります。それらを踏まえて最後に、新天皇が即位する19年5月以降の、ポスト平成の皇室の行方についての展望を示します。上の新聞記事にあるように、「令和時代の皇室の鍵を握るのは雅子皇后だと考える」と、可能性と不安を覗かせています。

 

この本の内容:

平成とは天 皇制の新たなスタイルが確立された時代だった。日本中をくまなく訪ね歩き、自らの思いを国民に直接語りかけてきた天皇明仁と皇后美智子。二人が生み出した「平成流」は退位後も受け継がれていくのか。皇太子(妃)時代からの足跡を丹念にたどり、「象徴」と国民との奇妙な政治的関係性を問い直す。 

 

目 次
序 論 天皇明仁の退位
第1章 「おことば」を読み解く――現在編
 1 「おことば」の背景
 2 「おことば」の分析
 3 「おことば」の問題点
第2章 「平成」の胚胎――過去編1
 1 行啓の概要
 2 人々から遠ざかる――行幸啓との共通点
 3 人々に近づく――行幸啓との相違点
 4 戦争に向き合う――広島・長崎・沖縄
第3章 「平成」の完成――過去編2
 1 昭和からの継続
 2 右派からの反撃
 3 行幸啓の実態
 4 退位表明と東日本大震災
 5 行幸啓の政治的意味
第4章 ポスト平成の行方――未来編
あとがき
 巻末表1 皇太子夫妻の主な国内行啓一覧
 巻末表2 皇太子夫妻の昭和期の行啓
 巻末表3 お立ち台一覧(一九六一 ― 七七年)
 巻末表4 主な懇談会一覧(一九六二 ― 七七年)
 巻末表5 天皇・皇后の平成期の行幸啓
 巻末地図 昭和期の行啓と平成期の行幸啓
 
原 武史(はら たけし):
1962年、東京に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。東京社会部記者として昭和天皇の最晩年を取材。東京大学大学院博士課程中退。東京大学社会科学研究所助手、山梨学院大学助教授、明治学院大学教授を経て、現在、放送大学教授。専攻は日本政治思想史。著書に『昭和天皇』(岩波新書,司馬遼太郎賞受賞)、『「昭和天皇実録」を読む』(岩波新書)、シーレ『大正天皇』(朝日文庫)、『皇后考』(講談社学術文庫)など多数。 

 

朝日新聞:2019年4月27日