平野啓一郎の「ある男」を読んだ! | とんとん・にっき

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平野啓一郎の「ある男」(文藝春秋:2018年9月30日第1刷発行)を読みました。

 

前に書いたことですが…。

そもそも平野啓一郎の作品をまた読んでみたいと思ったきっかけは、以下のシンポジウムでした。そこではあまり触れてはいませんが、平野は「三島由紀夫の再来」と言われてきた経緯からか、そのときは三島の作品ばかりを取り上げていました。対談者の高橋源一郎も同様、まあ文学者はそういうもので、結局は自分のことばかりを語っているのがほとんどです。

シンポジウム「大江文学の面白さをとことこ語りつくす!」!

 

そんなこともあって平野啓一郎の本をまた読んでみるかと思い、本屋で平積みされていた「ある男」(文藝春秋:2018年9月30日第1刷発行)を購入しました。ふと横を見ると、「マチネの終わりに」があり、本の帯には大きく「20万部突破!映画化決定!」の文字が眼に入りました。「出演:福山雅治・石田ゆり子」とあり、「2019年秋公開予定」とあったので、ついつい購入してしまいました。

平野啓一郎の「マチネの終わりに」を読んだ!

 

まあ、それはそれとして、2019年の「本屋大賞」にもノミネートされているようで、彼女の夫は「大祐」ではなかった。夫であったはずの男は、まったく違う人物であった...。平成の終わりに世に問う、衝撃の長編小説、とありました。ノミネート作品をみると、読んでいませんが三浦しをんの「愛なき世界」か、深緑野分の「ベルリンは晴れているか」にとってもらいたい、これは僕の単なる願望ですが…。

深緑野分の「ベルリンは晴れているか」を読んだ!

 

本の帯には、同じようですが、20万部突破のロングセラー「マチネの終わりの」から2年、「愛したはずの夫はまったくの別人だった。」とあります。デビュー20年、「真実の愛」を描く。その偽りは、やがて成就した本物の愛によって許されたのだろうか?愛にとって過去とは何か?幼少期に深い傷を負っても、人は愛にたどりつけるのか?「ある男」を探るうちに、過去を変えて生きる男たちが浮かび上がる。人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。

 

弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。

宮崎に住む里枝には、二歳の次男を失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って、14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、幸せな家庭を築いていた。ある日突然、「大祐」は事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に、「大祐」が全くの別人だという衝撃の事実がもたらされる…。

 

こういうのをミステリー小説というのだろうか?あるいは推理小説というのだろうか?ウィキペディアによると「アンチ・ミステリー」とは、推理小説でありながら、推理小説であることを拒む、という一ジャンルだという。なるほど、「ある男」は強いて分類すれば、「アンチ・ミステリー」にあたるように僕は思います。だからどうということではないのですが…。

 

宮崎県の中心部の誠文堂文具店の里枝、そして杉の木の下敷きになって享年39歳で亡くなった夫谷口大祐、その二人のラブストーリーかと思いきや、そうではなく、死後訪れた大祐の兄恭一が、遺影を見てこれは大祐ではないと言うので、調査を依頼した弁護士の城戸章良と里枝が、恋愛関係に発展するのかと思いきやこれも異なり、大祐がなりすましていた実在の他人から、次々に戸籍を交換して他人になりすましていたことが判明する男たちの話が、主たる物語のテーマになっていきます。つまりは推理小説、ということで…。僕はあまり、この種の推理小説には興味を持てません。あまりにあり得ない、作り話過ぎていたので…。たしかにキャッチ―の「愛したはずの夫はまったくの別人だった」は、興味を引くものではありましたが…。

 

さてさて、三島由紀夫の再来と言われたこれからの平野啓一郎はどこへ行くのでしょうか?

 

平野啓一郎:

1975年、愛知県生まれ。北九州市出身。1999年、京都大学法学部在学中に投稿した「日蝕」により芥川賞を受賞。数々の作品を発表し、各国で翻訳されている。2008年からは、三島由紀夫賞選考委員を務める。主な著書は、小説では「葬送」「滴り落ちる時計たちの波紋」「決壊」(芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)「ドーン」(ドゥマゴ文学賞受賞)「かたちだけの愛」「空白を満たしなさい」、「透明な迷宮」、エッセイ・対談集に「考える葦」「私とは何か『個人』から『分人』へ」、「『生命力』の行方~変わりゆく世界と分人主義」などがある。2016年刊行の長編小説「マチネの終わりに」(渡辺淳一文学賞受賞)は20万部を超えるロングセラーとなった。

 

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