東京国立博物館で「名作誕生」(前期)を観た! その2 | とんとん・にっき

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「名作誕生 つながる日本美術」チラシ

「名作誕生 つながる日本美術」案内板

「名作誕生 つながる日本美術」垂れ幕

東京国立博物館で「名作誕生」(前期)を観てきました。国宝、重要文化財、等々、次々と出てくるので、圧倒されました。

展覧会の構成は、以下の通りです。

第1章 祈りをつなぐ
第2章 巨匠のつながり
第3章 古典文学につながる
第4章 つながるモティーフ/イメージ


美術雑誌「國華」とは
「現在でも発行を続ける世界最古の美術雑誌」と紹介される「國華」は、1889(明治22)年に創刊されました。中心となった岡倉天心は、明治維新後の日本・東洋美術の再評価や、東京美術学校(東京芸大美術学部の前身)の開設に尽力しました。内閣官報局長などを務めた高橋健三と組んで発行した創刊号。そこに掲げられた天心による「創刊の辞」の「美術ハ國ノ精華ナリ」という言葉から、「國華」は名付けられました。
大判で美しい図版の雑誌は高い評価を得たものの、経営的には厳しく、創刊後ほどなくして朝日新聞の創業者である村山龍平、上野理一の支援を受けることになります。その後、朝日新聞社に経営を移管。戦時中の発行中断なども乗り越え、現在まで1460号を超えて発行が続いています。日本・東洋美術史研究の第一線で活躍する研究者たちが「編輯委員会」として共同で編集にあたり、優れた作品を紹介し、質の高い論文を掲載することで、世界各国の関係機関からも高い評価を得ています。
『國華』表紙一覧

ここでは、「第2章 巨匠とのつながり」以下を、下に載せておきます。

第2章 巨匠のつながり
近年とくに人気の高い日本美術史上の巨匠たちもまた、海外の作品や日本の古典から学び、継承と工夫を重ねるなかで、個性的な名作を生みだしました。第2章では、雪舟、宗達、若冲という3人の「巨匠」に焦点を絞って、代表作が生まれるプロセスに迫ります。
「破墨山水図」雪舟等楊筆・自序
月翁周辺鏡・蘭坡景*・天隠龍統・了庵桂吾・景徐周麟賛
室町時代 明応4年(1495)、東京国立博物館

4. 雪舟と中国
雪舟等楊(1420~1506?)は、南宋時代の夏珪[かけい]や玉㵎[ぎょくかん]など、過去の名画家の作品に学ぶだけでなく、水墨画の本場である中国へ旅し、同時代である明の画風も取り入れて、独自の水墨画を確立しました。ここでは雪舟と中国のつながりについて、実景図、山水図、花鳥図、倣古[ほうこ]図の4つのグループで見ていきます。
呂紀筆、重文「四季花鳥図」
中国・明時代 15-16世紀、東京国立博物館

狩野元信筆、重文「四季花鳥図」
室町時代 16世紀、京都・大仙院

5. 宗達と古典
安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した俵屋宗達(生没年不詳)は、「俵屋」という絵屋を営む町絵師でありながら、『伊勢物語』や『西行物語』など古典文学を主題とした絵画を多く描きました。ここでは扇絵と絵巻の名作を通して、宗達が学んだもの、吸収したものに着目し、その創作の源を探ります。
俵屋宗達筆「扇面散屏風」
江戸時代 17世紀、宮内庁三の丸尚蔵館

6. 若冲と模倣
伊藤若冲(716~1800)の作品には、既成の形かたちを再利用して新たな造形を作るという表現上の特徴があります。画風を模索していた頃には中国の宋元画を模写し、また生涯を通じて同じモチーフの同じ型かたを繰り返し描いて、独自の表現に至りました。ここでは鶴図と鶏図について宋元画の模倣と自己模倣という切り口でご覧いただきます。
文正筆、重文「鳴鶴図」
中国・元~明時代 14世紀、京都・相国寺

左:陳伯冲筆「松上双鶴図(日下高声)」
中国・明時代 16世紀、京都・大雲院
右:狩野探幽筆「波濤飛鶴図」
濤江戸時代 承応3年(1654)、京都国立博物館

伊藤若冲筆「白鶴図」
江戸時代 18世紀

伊藤若冲筆、重文「仙人掌群鶏図襖」
江戸時代 18世紀、大阪・西福寺

伊藤若冲筆「雪梅雄鶏図」
江戸時代 18世紀、京都・両足院

第3章 古典文学につながる
日本を代表する古典文学である『伊勢物語』や『源氏物語』。人々の心に残る場面は、その情景を想起させる特定のモチーフの組み合わせによって工芸品に表され、広く愛されてきました。第3章では、文学作品から飛び出して連綿と継承された意匠の名品を、『伊勢物語』から「八橋[やつはし]」「宇津山[うつのやま]」「竜田川[たつたがわ]」、『源氏物語』から「夕顔[ゆうがお]」「初音[はつね]」を通してたどります。
7. 伊勢物語
平安時代初期に成立した歌物語である『伊勢物語』からは、燕子花[かきつばた]と橋を表す「八橋」、蔦の生い茂る山道を表す「蔦細道」を取り上げます。
「打掛 白綸子地流水燕子花模様」
江戸時代 19世紀、神奈川・女子美術大学美術館

尾形光琳作、国宝「八橋蒔絵螺鈿硯箱」
江戸時代 18世紀、東京国立博物館

8. 源氏物語
『伊勢物語』に続き平安時代中期に成立した長編物語『源氏物語』からは、垣根に咲く夕顔と御所車を表す「夕顔」と、梅にとまる鶯を表す「初音」を取り上げます。
重文「夕顔蒔絵手箱」
室町時代 15世紀、京都・相国寺

左:「夕顔蒔絵大鼓胴」
江戸時代 17世紀、東京国立博物館
右:重文「初音蒔絵火取母」
室町時代 15世紀、神奈川・東慶寺


第4章 つながるモチーフ/イメージ
身近な自然物や人々の内面を表し今に伝わる名作たちは、すでにある名作の型や優れた技法を継承しつつ、斬新な解釈や挑戦的手法によって誕生してきました。第4章では、「山水」「花鳥」「人物」の主題と近代洋画の名作からさまざまなモチーフや型をご覧いただき、人と美術のつながりをご覧いただきます。
9. 山水をつなぐ
私たちを包む大自然の風景は、見る人の心を投影しながら技法も形もさまざまに表現されてきました。ここでは湿潤な大気に水墨の濃淡を駆使して描きつがれた「松林」と、あざやかに桜が咲き誇る「吉野山」を通して、名所や風景がいかに描き継がれてきたかをご覧いただきます。
伝能阿弥筆、重文「三保松原図」
室町時代 15~16世紀、兵庫・穎川美術館

長谷川等伯筆、国宝「松林図屏風」
安土桃山時代 16世紀、東京国立博物館

左:尾形乾山作「色絵吉野山図透彫反鉢」
江戸時代 16世紀、静岡・MOA美術館
右:仁阿弥道八作「色絵桜楓文鉢」
江戸時代 19世紀

10. 花鳥をつなぐ
季節とともに移ろう身近な花や鳥。そこにはときに人々の心情が投影され、時を超えて愛されてきました。ここでは「蓮」と「雀」に注目し、中国から日本へとモチーフが伝承され、連綿と描き継がれた様相をご紹介します。
重文「蓮池図屏風」
鎌倉時代 13世紀、奈良・法隆寺

於子明筆「蓮池水禽図」
中国・南宋時代 13世紀、京都・知恩院

左:酒井抱一筆「白蓮図」
江戸時代 18世紀、京都・細見美術館
右:能阿弥筆、重文「蓮図」室町時代 文明3年(1471)、大阪・正木美術館

11. 人物をつなぐ
17世紀初頭、現世を楽しもうという時代風潮の高まりにあわせ、同時代の風俗や内面意識を主題とした人物画(風俗画)が描かれました。ここでは男女の間で交わされる視線と、古典文学からの図柄の転用が表す意味に注目して、風俗画や浮世絵の誕生について考えます。
重文「紫式部日記絵巻」
鎌倉時代 13世紀

国宝「風俗図屏風(彦根屏風)」
江戸時代 17世紀、滋賀・彦根城博物館

左:重文「湯女図」
江戸時代 17世紀、静岡・MOA美術館
右:菱川師宣筆「見返り美人図」
江戸時代 17世紀、東京国立博物館」

12. 古今をつなぐ
19世紀に西洋から新しい表現技法が一斉に流入すると、日本美術は大きく変容しました。ここでは大正から昭和にかけて活躍し、写実的画風で知られた洋画家・岸田劉生(1891~1929)を取り上げ、東洋絵画に学んで意識的にその伝統につながった様子を、その代表作「道路と土手と塀(切通之写生)[きりどおしのしゃせい]」と「野童女[やどうじょ]」からみていきます。
左:葛飾北斎筆「くだんうしがふち」
江戸時代 19世紀、東京国立博物館
右:岸田劉生筆、 重文「道路と土手と塀(切通之写生)」
大正4年(1915)、東京っ国立近代美術館

伝顔輝筆「寒山拾得図」
中国・元時代 14世紀、東京国立博物館

岸田劉生筆「野童女」
大正11年(1922)、神奈川県立近代美術館寄託


創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年 特別展
「名作誕生 つながる日本美術」

日本美術史上に輝く「名作」たちは、さまざまなドラマをもって生まれ、受け継がれ、次の名作の誕生へとつながってきました。本展では、作品同士の影響関係や共通する美意識に着目し、地域や時代を超えたさまざまな名作誕生のドラマを、国宝・重要文化財含む約130件を通してご紹介します。

「東京国立博物館」ホームページ

「名作誕生 つながる日本美術」
図録
編集:
東京国立博物館
國華社
朝日新聞社
発行:
朝日新聞社


「國華」創刊号 明治22年(1889)