大竹昭子の「須賀敦子の旅路 ミラノ・ヴェネツィア・ローマ、そして東京」を読んだ! | とんとん・にっき

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文春文庫:2018年3月10日第1刷

青木淳の「建築文学傑作選 青木淳選」を読んだとき、須賀敦子について、以下のように書きました。

最初の須賀敦子「ヴェネツィアの悲しみ」という作品が、ある意味で全体を通してのテーマになっているんです。と青木はいう。だんだん朽ちて沈没していく儚いヴェネツィアという街で、人間にはどうしても儚さじゃなくて、きっちりとした幾何学が必要だ、それが建築なんだという思いが、まず一方で語られます。

須賀敦子は、大手の水道工事業者、須賀工業経営者の家に生まれる、とありました。知らなかった。須賀工業は仕事上での付き合いはありました。須賀敦子という、名前だけは知っていましたが、その著作は読んだことがありませんでした。いま思い出しました。何らかのイタリア関連のテレビ番組で見たことがあり、それで名前を知っていたのかもしれません。さっそくアマゾンへ須賀敦子の「ヴェネツィア」「ミラノ」「ローマ」など、文庫本を注文しました。

「須賀敦子の旅路」(文春文庫:2018年3月10日第1刷)を読みました。「ミラノ、ヴェネツィア、ローマ、そして東京」という副題がついていました。

それまで須賀敦子に関しては、上に書いたとおり僕は、ほとんどなにも知りませんでした。その後、アマゾンへ注文した本も、なかなか読み始めることがないままに、時間が過ぎてしまいました。先日、ぶらっと立ち寄った書店で、出たばかりの、平積みされている「須賀敦子の旅路」という文庫本が目に入り、早速購入しました。本の帯には「没後20年、須賀敦子を読みなおす」とあります。500ページ弱の分厚い文庫本ですが、平易な文章で読みやすく、分かり易く、なんなく読むことができました。

「須賀敦子の旅路 ミラノ・ヴェネツィア・ローマ、そして東京」
大竹昭子 文藝春秋

61歳で初の著作『ミラノ 霧の風景』を刊行し、衝撃のデビューを飾った須賀敦子。その8年後に世を去り、残された作品は数少ないが、その人気は衰えることなく、読者に愛されつづけている。2018年は、須賀の没後20年。その記念すべき年に、生前親交の深かった著者が、ミラノ、ヴェネツィア、ローマと須賀の足跡をたどり執筆したシリーズを加筆改稿し、新たに「東京」篇を書き下ろした。『コルシア書店の仲間たち』刊行直後に行なわれた須賀へのロングインタビューも初所収となる。
夫と暮らし、コルシア書店に通ったミラノ。夫を亡くした傷心を慰めてくれたヴェネツィア。晩年、ハドリアヌス帝の跡をたどったローマ。帰国後、『ミラノ 霧の風景』を書くまでの東京における「空白の20年」。須賀敦子の起伏ある人生をたどり、その作品の核心に迫る意欲作。
「この本の白眉はなんといっても書き下ろしの「東京」篇ということになる。〈略〉夫を失い、日本に帰国してから作家・須賀敦子が現れるまでに実に20年近い時間が経過しているのだ。この空白の20年にいったい何がどのようにして満ちていったのか。その謎が解き明かされる」(福岡伸一氏「解説」より)

目次
ミラノ
電車道/ムジェッロ街の家/コルシア
書店の日々/ボンピアーニ一族/ナヴィ
リオの環/三ツ橋のむこう側/墓参りの
日曜日/ミラノ最後の年
ヴェネツィア
島へ/橋づくし、小路めぐり/ゲット・
ツアー/ザッテレの河岸/リド島のひと
夏/ラグーナを渡って/ヴェネツィアの
友人/陸地へ
ローマ
アヴェンティーノの丘/カンポ・マルツィ オ彷徨/サン・ピエトロの聖霊降誕祭/マ ルグッタ街五十一番地/ギンズブルグの家 /聖天使城へ/皇帝の夢の跡/ノマッド
のように
東京
空白の二十年/文体との出会い/創作への
道/内なる“鬼”
ことばを探す旅 ロングインタビュー
解説 福岡伸一

大竹昭子とは、どんな人か?
1950年、東京都生まれ。文筆家。小説、エッセイ、批評など、ジャンルを横断して執筆。主な著書に『きみのいる生活』、『彼らが写真を手にした切実さを』、『図鑑少年』、『日和下駄とスニーカー』、『出来事と写真』(畠山直哉との対談)、『間取りと妄想』、『鉄砲百合の射程距離』(内田美紗、森山大道との共著)など。須賀敦子とは、雑誌「LITERARY Switch」のインタビューで知り合い、亡くなるまで親しい関係にあった。須賀の没後、『須賀敦子のミラノ』『須賀敦子のヴェネツィア』『須賀敦子のローマ』(いずれも河出書房新社)を刊行。朗読イベント「カタリココ」を開催中。

「建築文学傑作選 青木淳選」
講談社学芸文庫
著者・選:青木淳
2017年3月13日第1刷発行
発行所:株式会社講談社


「コルシア書店の仲間たち」(未読)
文春文庫
著者:須賀敦子
1995年11月10日第1刷
2015年1月25日第15刷
発行所:株式会社文芸春秋


「ヴェネツィアの宿」(未読)
文春文庫
著者:須賀敦子
1998年8月10日第1刷
2017年2月25日第17刷
発行所:株式会社文芸春秋


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