「大津絵にみる庶民信仰の造形 アンドレ・ルロワ=グーランの研究をふりかえって」! | とんとん・にっき

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日仏会館で、クリストフ・マルケさんの講演、「大津絵にみる庶民信仰の造形 アンドレ・ルロワ=グーランの研究をふりかえって」を聞いてきました。マルケさんの肩書は、フランス国立東洋言語文化大学教授、日仏会館フランス事務所所長、となっていますが、今年の夏にフランスにお戻りになるそうです。以前、河鍋暁斎に関するシンポジウムや講演会を聞いたことがあります。


マルケさんは約25年前、日本美術を研究するために来日しました。研究活動のなかで、近代洋画の先駆者、浅井忠(1856~1907年)が、「大津絵に近代西洋絵画の要素が含まれる」との考えに立ち、皿などの工芸作品のデザインに大津絵を取り入れた点に着目。浅井を通じて、大津絵が持つモダンな部分をはじめ、江戸時代の日本にも風刺の文化が花開いたことを知り、大津絵に魅了されていったという。


大津絵は江戸初期から明治にかけて、琵琶湖畔の大津宿の西端に位置する、東海道沿いの追分・大谷界隈で売られていた庶民絵画でした。独特の素朴な描法で宗教的、道徳的、あるいは風刺的な画題を描いているが、これまで美術史をはじめとした学術領域ではあまり扱われてきませんでした。


僕が大津絵のことを知ったのは、日本民芸館でのことでした。ただし、アンドレ・ルロワ=グーランは、河井寛次郎との交流はあったものの、柳宗悦が大津絵を美術品として扱ったことに批判的だったという。
日本民芸館で「日本の民画 大津絵と泥絵」展を観た!




講演会:「大津絵にみる庶民信仰の造形

      アンドレ・ルロワ=グーランの研究をふりかえって」

2016年6月13日(月)18:00~19:30

於:日仏会館(東京・恵比寿)1階ホール

主催:公益財団日仏会館

強力:日仏会館フランス事務所

後援:日仏美術史学会


講演要旨:
先史学者・社会文化人類学者のアンドレ・ルロワ=グーラン(1911-1986)は、ヨーロッパにおける旧石器時代の美術と宗教についての画期的な研究によって学界 に注目され、1969年にコレージュ・ド・フランスの先史学講座教授となった。しかし、1937年~1939年に国際学友会の第一期生として日本に招聘され、考古学的かつ民俗学的な調査を行ったことはあまり知られていない。彼は京都に長く滞在し、民芸運動の陶芸家・河井寛次郎らと交流した。膨大な収集品の中には絵馬、大津絵、御札、仏教版画、郷土玩具などがあり、庶民信仰の表象の研究資料とした。篆刻家で大津絵作家の楠瀬日年の版画集『大津絵』(1920年)や 民芸運動の主唱者、柳宗悦の『初期大津絵』(1929年)等の資料を参照しながら、大津絵や絵馬の図像データベースを作るなど、美術史とは違った観点からこれらの作品の表象を研究した。第二次世界大戦中には、日本で蒐集した資料を元に『日本の庶民信仰の造形』 という著書を書き始めたが未完のまま終わり、2004年になって遺稿として刊行された。また、1947年に、副館長を務めていたパリの人類博物館にてフランスで初めての民芸展を主催した。本講演では、ルロワ=グーランが残した収集品や原稿を元に、彼の独特な庶民信仰の表象の研究について考察する。



クリストフ・マルケ:
クリストフ・マルケは、フランス国立東洋言語文化大学教授、日仏会館フランス事務所・フランス日本研究センター所長。日本近世・近代美術史と出版文化史を専門分野とする。フランスで 歌麿、鍬形蕙斎、中村芳中、北斎、河鍋暁斎など数多くの江戸時代の画譜を翻訳して復刻出版。最近の編著に、『テキストとイメージを編む―出版文化の日仏交流』(勉誠出版、2015年)、『東アジアにおける文化遺産の形成とアイデンティティー』(雑誌『EBISU』2015年)などがある。ルロワ=グーランが日本滞在中に入手した楠瀬日年の『大津絵』版画集を元に、欧米で大津絵についての初の著書『Ôtsu-e : imagerie populaire du Japon』(訳:日本の民衆絵画、大津絵)を2015年にピキエ社で出版。2016年には角川ソフィア文庫で邦訳が出版される予定。


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「江戸の庶民絵画 大津絵を読み解く」

2016年7月8日(金)~9日(土)
於:日仏会館(東京・恵比寿)

画像は「鬼の念仏」

江戸時代、梅原龍三郎旧蔵


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「大津絵」の魅力 海外発信

 解説書 フランスで出版

産経新聞:2015年6月30日(火)

大津絵の解説書「日本の民画・大津絵」

を執筆したクリストフ・マルケさん

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「大津絵 民主的風刺の世界」

著者:クリストフ・マルケ

角川ソフィア文庫

7月末出版予定








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