和合亮一の「詩の寺子屋」を読んだ! | とんとん・にっき

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和合亮一の「詩の寺子屋」(岩波ジュニア新書:2015年12月18日第1刷発行)を読みました。この本を入手したのは、昨年の12月19日、発行日の次の日、ある会合の忘年会の席上でした。入手したのはいいが、次々と購入する本の下になって、この本のことを忘れたわけではないのですが、「詩の寺子屋」というタイトルからか、はたまた「詩」そのものへの僕自身の拒否反応からか、手にとることは延ばし延ばしになってしまいました。


ところが、朝日新聞の読書欄にこの本が取り上げられていました。2016年1月31日の「新書」のコーナーでした。で、これは読まなきゃ、と単純に思ったわけです。その時の記事を下に載せておきます。


子どもたちと詩作の試みを続けている詩人は、詩に「書かれた私」が「書いた私」を育ててくれるという。子どもであるがゆえに、「私」への真剣な問いかけは、大きな発見につながる。ワークシートを通してリズムや響き、言葉を集め、それをつないでゆく過程を紹介しながら、福島に軸足を置いて自身が展開する活動にも触れる。


小さな本の紹介記事なので、この本についてすべてを言い表しているわけではないのでやむを得ませんが、僕の読後感はもうちょっと多方面にわたります。だいたい普段は「詩」なんか読まない僕ですが、この本から妙にボディブローをくらって、かなりじわじわと効いてきた感じがします。


やはり一番大きいのは、東日本大震災の発生です。一週間後に一気に書いたという和合亮一の「決意」という詩は、なによりも故郷の「福島」が心の支えだったことがうかがわれます。また震災当時に描かれた子どもたちの詩も幾つも出でてきます。支援への感謝の気持ちも伝わってきます。やっと見つかったおじいちゃんの遺体が発見されたときに、おばあさんが「これでやっとさびしくなることができるね」と言ったという。


子どもたちの詩の実例のほかに、宮沢賢治や萩原朔太郎、金子みすゞや谷川俊太郎、中原中也、等々も取り上げられ、その解説をしているのですが、それがしっかりした詩の批評になっているのが素晴らしい。「いい詩は言葉の設計図」、きちんとした骨組みのようなものを残します」として、「のちのおもひに」という立原道造の詩を取り上げています。詩人の立原道造は、若くして将来を嘱望された建築家でした。


新しいアクションのひとつとして、福島の街の木にそれぞれに名前をつけて、一本ずつ詩を添えたという話。「しずくカード」を市民から募集したら、なんと6000枚のカードが集まったという。3月11日に震災が起き、その6日後からツイッターに詩を投稿したこと。ツイッターは140文字という制限があるが、詩とツイッターは「親和性」があるのではないか、「詩というジャンルに、新しい何かを革命的にもたらす可能性が多大にある」と和合はいう。


和合は「ワークシート」を使って詩を書くことを提案します。日常で見たこと・思ったことを率直に書くこと、響きのいい言葉を音楽を奏でるように並べていくこと、白紙に「5分間で思い浮かぶ言葉・文章を書いてみよう」、好きな写真や絵をワークシートに貼って,その下に思い浮かぶ印象を書く、等々の提案をしています。ワークシートに導かれながら詩をつくっていくのが、この寺子屋のメソッドといえます。


震災の年の冬、福島の「詩の寺子屋」の子どもたちと再会します。真剣に語り合い、故郷の今を伝えていくために書いていこうと語り合います。この本の最後にそうした子供たちが書いた詩を紹介して、終わります。


和合 亮一(わごう りょういち):

1968年福島市生まれ.詩人,高校教師(国語).福島県教育復興大使.全国で詩作講座や朗読会を開く.中原中也賞,晩翠賞,NHK東北文化賞など受賞.詩集に『AFTER』『詩ノ黙礼』『詩の礫』など,著書に『ふるさとをあきらめない』『往復書簡 悲しみが言葉をつむぐとき』(共著)などがある.


目次

第1章 子どもたちの詩

第2章 和合流、詩の基本
第3章 言葉のかたまりをつくろう――詩を書こう①
第4章 言葉をつなげよう――詩を書こう②

第5章 言葉の橋をかけよう――詩を書こう③

第6章 新しいアクション

第7章 「ふるさと」で詩を書こう

おわりに