新藤兼人監督の「午後の遺言状」を観た! | とんとん・にっき

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新藤兼人監督の「午後の遺言状」を観ました。随分前にTVで放映されたものを録画してあったもので、思い出したように取り出して観ました。


BSシネマ「午後の遺言状」レターボックスサイズ

8月13日(土) 1:30PM(1H53M) NHKBSプレミアム


驚いたことに新藤兼人の作品は、やはりNHKBSプレミアムで放映された代表作「裸の島」だけしか観ていないことが、今回調べてみてわかりました。従って恥ずかしながら「午後の遺言状」は新藤兼人の作品では2本目ということになります。「人世の第4コーナーにさしかかった」と感じた新藤兼人監督(1912~2012)が、自ら「老い」をテーマに書き上げた脚本で、メガホンをとった82歳の作品です。その18年後、2012年5月30日、日本最高齢の映画監督・新藤兼人が100歳で亡くなりました。


僕が初めて新藤兼人の名前を知ったのは、岩波新書の「祭りの声:あるアメリカ移民の足跡」(1977年初版)が最初でした。今から39年も前のことでした。「アメリカ移民の足跡」とは、なんと新藤兼人の姉のことを指していました。新藤の姉は、1923年に日系アメリカ人と結婚するために渡米します。移民として強制収容所での生活がありのままに語られてもいます。その姉と新藤が再会を果たすという、あまりにも劇的な話です。まさに事実は小説より奇なり、です。


新書マップにある「内容」は以下の通りです。


もう七十三よ。先が長くないのう。これが初めてのしまいじゃろう、会うのが。あんたと別れたんは私が二十であんたが十二のときじゃったがのう?大正十二年にアメリカ移民に嫁いだ秀代さんは、激しい労働、戦時の収容所生活に耐え、夫の事故死、子どもたち二世との意識の差をふりきって、営々とカリフォルニアの大地を耕しつづけている。<日本>への熱い想いのこもる手紙をもとに映画監督新藤兼人が姉の五十三年を心をこめて描く。


さて「午後の遺言状」、第38回ブルーリボン賞および第19回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品。1995年度キネマ旬報ベストテン第1位ほか、監督賞(新藤)、脚本賞(新藤)、主演女優賞(杉村)、助演女優賞(乙羽)の4部門を受賞しました。杉村春子の最後の映画主演作で、新藤兼人の妻・乙羽信子の遺作でもあります。また1950年に引退していた朝霧鏡子は45年ぶりの出演作だという、話題の作品でもあります。


大御所の新劇女優が山荘にやってきます。そこへかつては盟友だったが、能役者と結婚して舞台を去っていた女性が山荘にやってきます。いまは認知症になり、夫に付き添われて訪ねてきたのです。夫妻は去った後、入水自殺をします。そして大波乱が起きます。山荘を管理する農婦が、大女優に告白します。結婚を控えた一人娘は、実は大女優の夫と結ばれてできた子供なのだと。杉村春子撮影時88歳、音羽信子同69歳、朝霧鏡子同73歳、3人が3人ともまさに老人たちです。それにしても老監督とは思えない、驚くほどぶっ飛んだ作品です。突然脱獄囚が襲ってきたり、結婚前の足入れ婚の儀式だとか、わけのわからないことが多すぎ、それがまたいいのだからたまりません。


以下、「Movie Walker」による。

夏の蓼科高原に、女優・森本蓉子(杉村春子)が避暑にやって来た。彼女を迎えるのは30年もの間、その別荘を管理している農婦の豊子(乙羽信子)だ。言葉は乱暴だがきちんと仕事をこなす豊子に、庭師の六兵衛が死んだことを知らされた蓉子は、六兵衛が棺桶に乗せたのと同じ石を川原から拾って棚に飾る。豊子には22歳の娘・あけみ(瀬尾智美)がいた。子供のいない未亡人の蓉子は、あけみを自分の子供のように可愛がっている。翌日、別荘に古い友人の牛国夫妻がやって来る。しかし、夫人の登美江(朝霧鏡子)は痴呆症にかかっており、様子がおかしい。過去と現実が混濁している登美江を元に戻したい一心で、夫の藤八郎(観世栄夫)は蓉子に会わせたのだが、一瞬チェーホフの『かもめ』の一節を蓉子と空で言えたかと思うと、元の状態にすぐに戻ってしまう。と、そこへピストルを持った脱獄囚が別荘に押し入って来た。恐怖におののく蓉子たち。だが、男がひるんだ隙に警戒中の警官が難を救った。そして、蓉子たちはこの逮捕劇に協力したとのことで、警察から感謝状と金一封を受け取る。ご機嫌の蓉子たちは、その足で近くのホテルで祝杯を上げた。翌日、牛国夫妻は故郷へ行くと言って別荘を後にする。やっと落ち着ける蓉子だったが、近く嫁入りするあけみは実は豊子と蓉子の夫・三郎(津川雅彦)との子供だったという豊子の爆弾発言に、またもや心中を掻き乱されることになる。動揺した蓉子は不倫だと言って豊子をなじるが、あけみには真実を隠したままにしておくことになった。そして、結婚式を前にこの地方の風習である足入れの儀式が執り行われた。生と性をうたうその儀式に次第に酔いしれていく蓉子は、早く帰郷して舞台に立ちたいと思うようになった。ところが、そこへ一人の女性ルポライター・矢沢(倍賞美津子)が、牛国夫妻の訃報を持って現れた。驚いた蓉子は豊子を伴い、矢沢に牛国夫妻が辿った道を案内してもらう。二人が入水自殺を図った浜辺で、蓉子は残された人生を充実したものにすると、手を合わせる。別荘に戻った蓉子は舞台用の写真の撮影を済ませると、東京へ帰っていく。豊子は蓉子が死んだ時に棺桶の釘を打つために、以前拾ってきた石を預かるが、いつまでも死なないで強く生きて欲しいという願いを込めて、それを川原に捨ててしまうのだった。

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「午後の遺言状」 ウィキペディア


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