ジョー・サッコの「パレスチナ特別増補版」を読んだ! | とんとん・にっき

ジョー・サッコの「パレスチナ特別増補版」を読んだ!

 

ジョー・サッコの「パレスチナ特別増補版」(いそっぷ社:2023年1月20日第1刷発行)を読みました。

 

イスラエル側の本は多々あります。最近、ダニエル・ソカッチの「イスラエル」を読みましたが、パレスチナ側のものも読まないと片手落ちだと思い、ジョー・サッコの「パレスチナ」も読もうと思いました。

ダニエル・ソカッチの「イスラエル 人類史上最もやっかいな問題」を読んだ!

 

と言ってもまだ少し読み始めただけですが・・・。

なんと、漫画でした。漫画とは思わないで購入しました。

で、漫画だから簡単に読めると思ったら大間違いでした。

これは読むのに苦労しそうです。

 

悲劇が続くパレスチナ。

この地で何が起きていたのか。

パレスチナ人はこの半世紀、

何を体験したのか。

熾烈な現実を「正確に、かつやさしく」白日の下に晒して

世界に衝撃を与えたコミック・ジャーナリズムの金字塔

 

パレスチナ問題に発言を続けた思想家エドワード・サイードが「このうえなく独創的な、政治的かつ美的な作品」と絶賛したコミック史に残る傑作。
著者のジョー・サッコは1991-92年にかけてイスラエルの占領地であるヨルダン川西岸地区やガザ地区で2か月間を過ごした。折しもパレスチナ人のあいだから自然に起きたといわれる第1次インティファーダ(民衆蜂起)の時である。紛争の最前線で彼は、拷問を受けたパレスチナ人から観光気分のイスラエル人まで、さまざまなインタビューをこころみる。

 

「イスラエル人の友だちはいる?」

「なぜあなたはスカーフをかぶっているの?」

「なぜ君は抵抗組織に加わったのか」

そしてパレスチナ人から堰をきったように語られる過酷な真実をリポートしていく。

・「治安上の理由」で収入源のオリーブの木を切られた農民

・「非合法組織の一員」だと疑われ、「おだやかな圧力」のおもと3週間にわたって拷問され、ついに釈放された男

・イスラエルの兵隊に2人の息子を射たれ、何の治療代も受けられないまま見殺しにされた何三㎜キャンプの母親・・・

 

パレスチナの現実を「正確に、かつやさしく」白日のもとに晒したとして国際的な評価を受けた本書。その刊行から10年経ち、著者のサッコ自身が当時つけていた日記やメモを引用しながら、マンガに込めた思いや取材方法を赤裸々に綴った30頁分を増補。新たに特別版としてお贈りする。

 

サイードの序文より

ジョー・サッコの世界には、滑らかな口調のアナウンサーやプレゼンターは出てこない。イスラエルの勝利や民主主義やその達成についての、調子のいいなめらかな語りもない。そして推測ではなく再確認されたとするパレスチナ人像―つまり、石を投げたりなんでも拒絶したり原理主義者の悪人(その主な目的は平和を愛し迫害されているイスラエル人の生活をおびやかすことにある)―は提示されていない。その像のすべては、どんな歴史的もしくは社会的な典拠からも、生きた現実からも、かかわりないのだがあ。それに替わってあるのは、親しめない不愛想な世界をさまよい歩くかに見える穏やかな姿をした、どこにでもいる角刈りの若いアメリカ人の目を通して見た現実である。そこは軍隊の占領下にあり、勝手に逮捕されたり、家が壊されたり、土地が取り上げられる悲惨な経験や、拷問の世界であり、本当の暴力が気前よくまたは残酷に行使される。そのお情けのもとに、パレスチナの人たちは、まさしく日々の一刻一刻を過ごしている。

 

目次

ジョー・サッコを讃える……エドワード・サイード
『パレスチナ』完全版への作者のまえがき……ジョー・サッコ
『パレスチナ』についての想い……ジョー・サッコ
 「現場で」取材する/メモからの抜粋/文章を書くことと、絵を描くこと/写真/使わなかったマンガ/表紙について
第1章
カイロ 
行きあう人びと
故郷
目撃者の目
キドロン・ヴァリー
第2章
タクシー
公傷と私傷(ナブルスで)
ドクター、続けて
ヘブロン
『思い出させて』
第3章
千のことば
バケツ
1日だけの兄弟
サブローはどこ?
第4章
アンサールⅢ
おだやかな圧力 その1
パレスチナ人のジョーク
タフな者と死ぬ者
おだやかな圧力 その2
第5章
ラマラ
シカゴ
特ダネを得る
女性たち
ヒジャーブ
でも、ぼくもやっぱり男
第6章
難民ランド
部屋のなかで
法律
ブラック・コーヒー
外出禁止下の子どもたち
トマト
ガザの街まで1シェケル
エドワード・サイード
第7章
シャバリア
男たち その1
男たち その2
男たち その3
男たち その4
障害者たち
巻きもどし
第8章
巡礼
第9章
別の視点
テルアヴィヴ
幸運な再会
砂糖
ナブルス
検問
ジェニン
雨のなかの少年
訳者あとがき……小野耕世
『パレスチナ』特別増補版に寄せて……小野耕世


本書は、当時全くの無名だった1人のジャーナリストが「コミック」という表現方法によって、パレスチナのありのままの姿を伝えようとした作品だ。緊張していたサッコは直行便でイスラエルを訪れず、カイロから経由してバスでエルサレムへ入り、そして占領地のナブルスを訪れる。

 
パレスチナでサッコがインタビューしている間に何度も話題にのぼったのが「刑務所」の話だ。監獄や牢屋の話をタクシーの中やお茶の席で「聞かない」方が珍しいという。中でも悪名高いのが、87年から始まったインティファーダ(民衆蜂起)によって増大した囚人に対応するため作られた「アンサールⅢ」監獄だ。
 
イスラエルは拘束したパレスチナ人を訊問する際に、過酷な肉体的拷問を加えている。しかしイスラエルはそれを認めず、訊問に際して「おだやかな圧力」を加えただけだという。そうした拷問が3週間にわたって続けられようやく釈放された男の証言が生々しく描写されている。
 
インティファーダという呼び名で世界がパレスチナに注目するきっかけを与えた民衆蜂起。その最初のうねりは、ガザ地区にある難民キャンプ、ジャバリアから起こった。4人のパレスチナ人が死んだ葬儀に参列した者たちはみな怒っていた。そしてイスラエル軍基地の兵隊たちに石を投げつけたのだ。
 
『パレスチナ』が発売されてから10年経ったところで、改めてサッコ自身が取材当時の思いを振り返った30頁ほどが今回、増補された。撮った写真と、対応する漫画のコマをこのように紹介している他、日記やメモなどには取材時の偽らざる本音が吐露されている。
 
サッコ,ジョー
1960年、マルタ島生まれのアメリカ人。オレゴン大学でジャーナリズムを学ぶ。『パレスチナ』で1996年アメリカ図書賞を受賞。また、ボスニア紛争を描いた『安全地帯ゴラズデ』で2001年のウィル・アイズナー賞を受賞するなど、“コミックス・ジャーナリズム”という分野のパイオニアとなっている

小野/耕世
1939年、東京生まれ。国際基督教大学卒業。アメリカのみならず、アジアやヨーロッパのコミックスの紹介や翻訳を続ける。映画評論家としても活躍中。2006年、第10回手塚治虫文化賞特別賞を受賞