府中市美術館で「かわいい江戸絵画」(前期)を観た! | とんとん・にっき

府中市美術館で「かわいい江戸絵画」(前期)を観た!



府中市美術館で「春の江戸絵画まつり かわいい江戸絵画 ニッポンの宝 その論理と歴史」(前期)を観てきました。観に行ったのは「府中の森公園」の桜がまだ開花していない、3月19日のことでした。ここ最近の(「三都画家くらべ」は別として、)府中市美術館のオレンジ色をテーマ・カラーにした展覧会、チラシや図録などを統一したイメージはけっこう強烈で印象に残ります。「江戸絵画」に関してのみ、そのイメージを統一しているのでしょうか。それはそれとしてもたもたしているうちに、もう後期が始まってしまいました。もちろん、府中まで行くつもりでいますけど、お天気が心配です。


案内には、絵画史上「かわいらしさ」が作品のポイントとして打ち出されるようになったのは江戸時代だったとして、「円山応挙は、地面を転がるように駆け回る子犬たちの絵を確立し、歌川国芳は、愛らしくもややこしい猫の魅力を引き出しました。禅僧仙厓は、難解な禅の教えを、思わずほほ笑んでしまうような子供や動物の姿に託しています」と例をあげています。過去の美術史上で使われることのなかった「かわいい」という言葉、近年、若者の間ではこの「かわいい」がやたら使われていますが、この言葉をあえてキーワードとして、これまで見落とされていた江戸絵画の魅力に迫る、としています。


企画に事欠いて「子供」や「動物」を持ち出すのは邪道と言われたりする世界もありますが、図録では同じ子供や動物を描いても「かわいいのか、かわいくないのか」真面目に議論しています。「かわいい絵」の幕開けはかわいいものが多い宗達や光琳を取り上げて、江戸時代前半だとしていますが、江戸時代後半には「かわいい絵」は爆発的な隆盛をみます。円山応挙や長沢蘆雪、伊藤若冲、曾我簫白、さらに池大雅や与謝蕪村らが個性を競います。日本絵画の絢爛の時代にも重なっていると図録では指摘します。それは博多で活躍した禅僧、仙厓義梵、そして江戸の浮世絵師、歌川国芳にまで及びます。


展覧会の構成は、以下の通りです。


1.幕開け―「かわいい絵」はいつから始まった?

2.感情のさまざま―なぜ、かわいいのか?

 かわいそう/健気なもの/慈しみ/おかしさ/小さなもの、

 ぽつねんとしたもの /純真、無垢/微妙な領域

3.かわいい形―「かわいい」には原理がある?

 幾何学・省略・くりかえし/子供の形/つたなさの魅惑

 /素朴をめぐる目/絵本
4.花開く「かわいい江戸絵画」―かわいい絵の時代

 虎の悩ましさ/応挙の子犬、国芳の猫/かわいい名画選


とんとん・にっき-annnai


1.幕開け―「かわいい絵」はいつから始まった?



2.感情のさまざま―なぜ、かわいいのか?



3.かわいい形―「かわいい」には原理がある?



4.花開く「かわいい江戸絵画」―かわいい絵の時代


「かわいい江戸絵画」

日本絵画史上、「かわいらしさ」が作品の重要なポイントとして打ち出されるようになったのは、およそ江戸時代のことではないでしょうか。円山応挙は、地面を転がるように駆け回る子犬たちの絵を確立し、歌川国芳は、愛らしくもややこしい猫の魅力を引き出しました。禅僧仙厓は、難解な禅の教えを、思わずほほ笑んでしまうような子供や動物の姿に託しています。また、かわいらしい題材を描いたものだけではなく、たとえば、文人画の山水や人物にも、見る者の心を和やかにしてくれるものがあります。はかないもの、頼りないものへの共感や愛惜が、あえて素朴に描かれた線や形そのものに対して湧き上がるのかもしれません。はかないものや可憐なものに寄せる思いや慈しむ気持ち、あるいはユーモラスに感じることなど、私たちが「かわいい」という言葉で表すことのできる感情は、実にさまざまです。江戸時代の人々は、そんな豊かな心の動きを絵に表し、絵を通じて楽しみました。また、「かわいい絵」が盛んに楽しまれた背景の一つには、かわいいものを「それらしく」表現する方法が確立されたことがあるでしょう。幼い子供や子犬は、時代を問わず「かわいいもの」だったはずですが、古代や中世の絵に、私たちの目から見て、かわいらしいと思えるようなものは、あまり見当たりません。つまり、「かわいいもの」と「絵としての表現」は別だと考えればよさそうです。現代人を魅了してやまない子供や子犬の絵を描いた応挙や長沢蘆雪。「写生」の画家と言われる彼らですが、ただカメラで撮影するように対象を写しただけで、かわいいと感じる絵ができ上がるでしょうか。彼らは、かわいいものを「かわいい形」として描く術を模索し、確立したのだと言えるでしょう。かえりみれば、造形が立派かどうか、精神の高邁さといった観点から語られてきた美術の歴史の上で、「かわいい」という言葉が使われることは殆どなかったように見受けられます。このたびの展覧会では、近年ちまたで注目を浴びているこの言葉をあえてキーワードとして、これまで見落とされてきた江戸絵画の魅力の根幹に迫ります。

「府中市美術館」ホームページ


とんとん・にっき-fu1 「かわいい江戸絵画」
展覧会企画担当:
金子信久/音ゆみ子

編集:府中市美術館

発行日:平成25年3月9日

発行:府中市美術館








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