園子温監督の「恋の罪 ようこそ、愛の地獄へ」を観た! | とんとん・にっき

園子温監督の「恋の罪 ようこそ、愛の地獄へ」を観た!

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佐野眞一の「東電OL殺人事件」(新潮社、2000年)は2000年5月10日に発行されました。この本は、平成9年3月8日の深夜、渋谷区円山町のアパートの一室で、東電OLが何者かに絞殺された事件の、発端から判決に至るまでの一部始終を追ったものです。ネパールから日本に出稼ぎに来た外国人労働者、ゴビンダ・プラサド・マイナリと、東京電力に総合職で入った慶応大学経済学部出身のエリートOL渡辺泰子は、通常であればお互い絶対に遭遇することのない相手でした。その二人はなぜか、不思議な暗合で渋谷区円山町に吹き寄せられました。ノンフィクションという性格上、円山町、カトマンズ、幕張、五反田、西永福など、著者は実際に現地に着き丹念に調査しており、裁判の経過も同時進行的に体感することができます。その後の裁判記録は、同じ佐野眞一によって「東電OL症候群(シンドローム)」として2001年12月25日発行されています。

円山町の廃アパートで起きた殺人事件、いわゆる「東電OL殺人事件」を下敷きにしたといわれる桐野夏生の小説「グロテスク」(文藝春秋、2003年)をブログに書いたときに、上のように書きました。佐野眞一はノンフィクション、一方、桐野夏生はフィクションの違いはありますが、当時は大変な話題作で、僕も発売と同時に購入して読みました。また、井の頭線神泉駅前の廃アパートを見に行ったりもしました。最近また、「東電OL殺人事件」で無期懲役が確定したネパール国籍のゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者の再審請求審で、新たな物証が多数見つかり、追加鑑定の結果、弁護団は「マイナリ受刑者以外の人物の犯行という弁護側の主張を裏付ける結果で、速やかに再審が行われるべきだ」と述べたと、最近の報道(2011年10月21日:読売新聞)は伝えています。


渋谷・円山町のホテル街の廃アパートで、マネキン人形と接合された遺体が見つかります。まさに猟奇的殺人事件です。女刑事・吉田和子(水野美紀)は、ラブホテルで夫の友人とセックス中に、後輩の刑事から電話が入り、事件現場へ急行します。現場の壁には「城」と大きく血文字で書かれていました。メインのストーリーは、事件を追う和子の捜索を追って流れていきます。優しい夫と可愛い子どもにに恵まれ、理知的な女性に見えますが、夫の友人と不倫関係を続け、そのサド気質の相手から誘いの電話が、ところかまわず入ります。


一方サブ・ストーリーは、ベストセラー作家の貞淑な妻・菊池いずみ(神楽坂恵)が暇を持て余しスーパーに働きに出たことに始まります。街を歩いているとスカウトされ、いつの間にかアダルトビデオ出演し、その虜になってしまいます。いずみが円山町を歩いていると、一人の女と出会います。名家の出で、昼は大学助教授の顔をもつ年増の女・尾崎美津子(冨樫真)、しかし夜は派手な化粧とコスチュームで、廃アパートで客を取ります。あまりの変態ぶりで、同業者からは非難され、客からは愛素尽かされたりします。美津子はいずみに叱咤するように「私のところまで堕ちてこい」と言います。


闇を抱えた3人が、夜の円山町をさ迷い、交差します。この映画は、水野美紀の理知的な表情にもかかわらず、ヘアー丸見えのフルヌードシーンから始まります。神楽坂恵の魅力的な豊かな乳房、アダルトビデオの撮影現場は、いつの間にかセックスシーンへと移っていきます。冨樫真は、まさに「東電OL」を体現しています。痩せぎすで決して魅力的な身体とは言えませんが、その形相は般若のようなもの凄さです。全編を通じて、殺人事件の現場や、解剖の場面など、目を覆いたくなるようなシーンも続きます。エロい、グロいシーンは、園子温監督のお得意な分野です。


以下、とりあえずシネマトゥデイより引用しておきます。


チェック:新作を発表するごとに注目を集める『冷たい熱帯魚』の園子温監督が、1990年代に実際に起きた殺人事件に触発されて撮り上げたサスペンスドラマ。それぞれ立場の違う3人の女性たちが織り成す光と影を徹底的に描き切る。体当たりの演技を見せるのは『踊る大捜査線』シリーズの水野美紀、『凍える鏡』の冨樫真、園監督作品の常連で『ヒミズ』にも出演する神楽坂恵。表と裏の顔を使い分ける女性の深い業を描き切る園監督の手腕にうなる。

ストーリー:ある大雨の日、ラブホテル街にぽつんと建っているアパートで女性の死体が発見される。その事件を追う刑事の和子(水野美紀)は、幸せな家庭を持ちながらもずるずると愛人との関係を続けていた。彼女は捜査を進めるうちに、大学のエリート助教授美津子(冨樫真)や、売れっ子小説家の妻いずみ(神楽坂恵)の秘密を知ることになる。


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「恋の罪」公式サイト

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