府中市美術館で「江戸の人物画 姿の美、力、奇」(前期)を観た! | とんとん・にっき

府中市美術館で「江戸の人物画 姿の美、力、奇」(前期)を観た!



府中市美術館で「江戸の人物画 姿の美、力、奇」(前期)を観てきました。お花見にはちょっと早くて、かといって後期を観に来る頃には桜は散ってしまいそうな、なぜか中途半端な時期に行ってきました。チラシやポスターは、オレンジ色、以前の「山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年」の時と同じ、かなり衝撃的なカラーです。図録の奥付を見ると、展覧会企画担当も、図録の翻訳やデザイン/制作も、同じ担当者が関わっているようです。


あの板橋美術館と同じように、けっこう壺にはまる?と、かなりいける美術館です。「歌川国芳展」もなかなか奇抜でよかったですが、一方では、誠実にターナーとかバルビゾンとかを、府中と絡めて取り上げたりもしています。僕が最初に行ったのは、クリムトの「バラス・アテネ」を観に行ったと思います。「ウィーン、生活と美術 1873-1938(クリムト、シーレと黄金期のウィーン文化)」展(2001/03/30-04/22)でした。もう10年も前になります。2000年10月に美術館が開館しているので、開館してすぐだったようです。


やはり多少「奇」が入るのが、府中美術館の特徴です。展覧会の構成わけからして、面白い。「美の百様」「『迫真』のゆくえ」「聖の絵姿」「ポーズ考」「海の向こうの不思議とロマン」「人という営み」「かわいい」と、7つに分けられています。文明開化がひたひたと押し寄せるなか、西欧の絵画の手法やテーマも取り入れられていきます。まず、会場に入ると、円山応挙の「布袋図」と、春木南湖の「項羽図」が正面にどーんと、しかも等身大で掲げてありました。図録の巻頭に「なぜ人を描くのか、何のために描くのか」という論文があります。


なぜか江戸時代の人の絵の中に、ときおり「等身大」で描かれた人物画がある。伝説的な人物や歴史上の人物が、普通に飾るには大きすぎるほどの画面をあえて使って、生きている人間と同じ大きさで描かれているのである。稀に遊女を描いたものさえある。ほどよい、美しい姿かたちを超えた、それらの「描かれた人」を前にしたとき、私たち現代人はどう受け止めればよいのだろうか。そこまでして人の姿を「出現」させようとした、当時の人々のことを考えてみたいのである。


前期は円山応挙の「布袋図」と、春木南湖の「項羽図」でしたが、後期は曾我蕭白の「寒山拾得図」のようで、図録を見るとなかなか迫力のあるものです。


展覧会の構成は、以下の通りです。

美の百様

「迫真」のゆくえ

聖の絵姿

ポーズ考

海の向こうの不思議とロマン

人という営み

かわいい


今回、円山応挙が次々と出てきたのには驚きました。応挙の目玉は「波上白骨座禅図」か、あるいは「三美人図」か?「三美人図」の真ん中に座っているのが応挙の愛婦の雪女、右は穆如斎の愛妓の富、左に立つのは儒学者皆川淇園の相妓の友女です。骨太の大きな絵「鍾馗図」もありました。他に「元旦図」「高士像」もありました。「ポーズ考」に出ていた「舞踊図」は、金箔地の屏風のそれぞれの面に、異なる着物を着た女性の舞姿が描かれています。実際に作品を観ると、意外と小さい。高さ60cmほどの屏風でした。が、しかし、その存在感たるや驚くほどです。描かれたのは寛永年間の頃、作者はわからないという。


曾我蕭白の手紙を噛みちぎる女性を描いた「美人図」、裸足で野原をさまよってきたような異様な光景です。着物には中国の山水画が、目は仏画のように描かれています。蕭白には本格的な彩色が施された作品は少ないので、稀少な一作だそうです。歌川弘原の「命図」、「命」という字を2人の女性が鉋と蝶なで切り、削りだしています。その意図するところは、男性にとって女性は魅力的ではあるが、「命とり」でもある、という内容だそうです。


長澤蘆雪の「唐子睡眠図」は、眠っている童子をありのままに描いています。伊藤若冲の「伏見人形七布袋図」は、チラシの表面にも使われています。6体の立ち姿の布袋の中に、1体だけ座っている像を描いています。反復した配列の妙、と言えます。若い女性がこの前に立ってじっと見ていて、動こうとしないのには参りました。池大雅の「柳下童子図屏風」は、橋の真ん中に2人の子供がいて、1人は水面に近づこうと腹ばいになりながら、小魚を捕ろうとしています。もう1人はその様子を楽しそうに見ています。この屏風は「八曲一双」の屏風です。


江戸の人物画 姿の美、力、奇


美の百様



「迫真」のゆくえ



聖の絵姿



ポーズ考





海の向こうの不思議とロマン




人という営み





かわいい





「江戸の人物画 姿の美、力、奇」

描かれた「人のかたち」に注目しながら、江戸時代の絵画をご覧いただく展覧会です。美人画、中国の『三国志』の登場人物や不思議な仙人、妖怪から骸骨まで、描かれた「人のかたち」は実にさまざま。また、一口に「美人画」などと言っても、その魅力はあまりに多様です。江戸時代の人物画は、私たちに、美しさや楽しみの多彩さ、そして、人を描くことの意味をも教えてくれるでしょう。狩野派、やまと絵、浮世絵、文人画、円山四条派、洋風画、そして、今人気の伊藤若冲、曾我蕭白、長沢蘆雪ら「奇想の画家」や、仙がい、白隠らの禅画まで、重要文化財3点を含む総数99点(前期56点、後期52点)の作品によって、江戸絵画の幅広い魅力をお楽しみいただきます。曾我蕭白の《美人図》(前期展示)、江戸前期の風俗画の名作として知られる《舞踊図》(重要文化財、前期展示)、伊藤若冲の《付喪神図》(後期展示)、曾我蕭白《寒山拾得図》(重要文化財、後期展示)をはじめ、話題の作品の数々もどうぞお見逃しなく。


「府中市美術館」ホームページ


とんとん・にっき-jin1 「江戸の人物画 姿の美、力、奇」

図録

編集:金子信久・音ゆみ子

編集:府中市美術館

発行日:平成23年3月19日

発行:府中市美術館








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