府中市美術館で「バルビゾンからの贈りもの」展を観た! | とんとん・にっき

府中市美術館で「バルビゾンからの贈りもの」展を観た!




府中市美術館で「バルビゾンからの贈りもの―至高なる風景の輝き」展を観てきました。行ったのは11月7日、1週間前のことです。なんと今回が府中市美術館開館10周年記念展だとか、時が経つのは早いものです。府中市美術館には何度か行っていますが、下の「過去の関連記事」にあげた通り、それほど多くはありません。が、しかし、よく覚えているのは、「山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年」と「歌川国芳展」で、「国芳展」は前期と後期、2度行きました。最初に行ったときのことを、「山水に遊ぶ」展の時に、以下のように書きました。


府中市美術館へは過去の一度行ったことがあります。たしか、クリムトの「バラス・アテネ」を観に行ったと思います。「ウィーン、生活と美術 1873-1938(クリムト、シーレと黄金期のウィーン文化)」展(2001/03/30-04/22)でした。突然、おじさんと声をかけられ、ビックリして後ろを振り向いたら、姪がアルバイトで監視員をしていました。


いや、ほんと、まったくの偶然でした。実は今回も「バルビゾン」を見終わって、正面玄関からではなく、レストラン脇の出入り口から出たところ、またまた「キャー、おじさん、ビックリした~」とその姪が前から歩いてきたのです。もう結婚して横浜の方へ住んでいると聞いていたので、まさか府中市美術館でバッタリ会うなんて、思ってもみませんでした。正面玄関から出ていたら、あるいは、ほんの数秒違っていたら、もちろん会えませんでした。姪は、公開制作50小沢剛「できるかな2010」を見に来たようで、時間が迫っていたので、ほんのちょっとしか話せませんでしたが、かなりアートに興味をもっているようでしたので、あとで「アート談義」をする楽しみが出来ました。


展覧会の構成は、以下の通りです。
第1章 ドラマチック・バルビゾン

第2章 田園への祈り―バルビゾン派と日本風景画の胎動

第3章 人と風景―その光と彩りの輝き

第4章 バルビゾンからの贈りもの―光と彩りの結実


武蔵野のある府中市美術館が開館10年、収集してきた「府中風景画コレクション」と、バルビゾンの小さな村に集まった画家ルソーやミレーに始まった「バルビゾン派」の風景画を対比、約120点の作品で「風景画散策」を楽しむ、という主旨の展覧会でした。当初、僕は武蔵野の風景画をバルビゾンに無理矢理くっつけた展覧会かと、勝手に思って、やや敬遠していました。


しかし、ブリヂストン美術館で「セーヌの流れに沿って―印象派と日本人画家たちの旅」展もあることだし、先日観た「ゴッホ展」でミレーがゴッホに与えた影響の大きさを知ったこと、またルソーとミレーがフォンテーヌブローの森の保存運動をしたことなどを知り、あるいはローマ法王からマリア像を描くように依頼され描いたマリア様が農民の顔をしていたことで法王買い上げには到らなかったこと、等々、ミレーという画家は単なる「農民画家」というだけではなかったということを知り、府中の「バルビゾンからの贈りもの」展へ行ってみようと思ったわけです。


「種まく人」を初め、ミレーの絵をたくさん所蔵していることで知られているのは山梨県立美術館です。しかし、今回知ったのは「村内美術館」です。「家具は村内八王子」のCMで有名なあの「村内」です。ルソーの「森の大樹」、コローの「夜明け」、クールベの「眠る草刈り女」、ナルシッス=ヴィルジールの「水浴する女達」、そしてミレーの「羊毛を紡ぐ少女」の7点です。他に、和田英作のミレーの模写で「落穂拾い」(東京芸術大学大学美術館蔵)がありました。


その他にも、バルビゾンがという自然主義絵画が日本に紹介されると、多くの日本人画家がそれに影響され、日本の近代風景画の基礎を築いていった、ということもあります。日本の近代画家、高橋由一、浅井忠、和田英作、青木繁、五姓田義松の他に、中村彝、村山槐多、はたまた安井曾太郎や梅原龍三郎まで出てきたのには驚きました。府中と言えば大國魂神社、その長い参道のけやき並木を描いた120年前の本多錦吉郎の「景色」という傑作もありますが、僕は満谷国四郎の「車夫の家庭」に感動しました。が、もっとも素晴らしいと思ったのは中川八郎が21歳の時に木炭だけで描いたモノトーンの「雪林帰牧」(個人蔵)でした。しかし中川は、46歳で早世しました。府中市美術館では今回出ていた中川八郎の「神社の桜」と「風景(東京)」、「信州風景」という作品を所蔵しています。


たまたま手にした辻惟雄の「日本美術の歴史」に、中川の「雪林帰牧」について触れた箇所がありましたので、以下に載せておきます。太平洋画会の画家たちは、ビゲロー→五姓田義松→浅井忠と受け継がれた水彩画法を御家芸としており、すでにアメリカで好評を博していた。なかでも吉田博の卓越した技量は、いまでもイギリスなどで高く評価されている。中川八郎の「雪林帰牧(せつりんきぼく)」(1897)もまた、水墨画の伝統が近代水彩画として見事な再生を遂げた例である。この系譜は石井柏亭(はくてい)(1882-1958)の水彩画に受け継がれている。


第1章 ドラマチック・バルビゾン

     春にさし込む神秘の光

     激しく厳しい森の風

     あたたかくやわらかな光

     壮大なる色彩の終焉






第2章 田園への祈り―バルビゾン派と日本風景画の胎動

     江戸の情緒

     フォンタネージと不同舎

     風景水彩画の開花

     武蔵野の夕暮れ

     色彩の発見







第3章 人と風景―その光と彩りの輝き

     風景の中の人々




第4章 バルビゾンからの贈りもの―光と彩りの結実

     印象派の画家たちの森を見つめ直す眼差し

     しだいに光を放ちはじめる風景

     日本の印象主義―素晴らしき風景画の誕生





今、輝き始める「府中風景画コレクション」(チラシ裏より)
このたび、当府中市美術館は開館10周年を迎えました。歴史と豊かな森に恵まれた府中・多摩の風土を彩る優れた作品を収蔵しつつ、様々な展覧会を企画開催し、市民と美術をつなぐもっとも身近な場所として活動して参りました。風景画はいつから始まったのか?自然に感謝し、尊敬し、その美しさを描くことは、実は今から150年ほど前に主にバルビゾンというフォンテーヌブローの森にある小さな村に集まった画家ルソーやミレーなどから始まりました。彼らは、静かな夜、燃え落ちる夕陽、自然への敬虔なる祈りを込めて描きました。そして、日本では明治の洋画家たちが、フォンタネージから自然主義を学ぶこと、この府中を含む武蔵野を舞台に各地を写生し、写実力を磨き、私たちの身近な大地「武蔵野」の美しさをあらためて描き出しました。絵の持つ美しさを感じ、風景画散策を楽しむ、そんな展覧会を10周年記念展として開催いたします。これまで収集してきた所蔵品(府中風景画コレクション)と国内外の美術館や個人のご協力を得て、約120点でお待ちいたしております。


「府中市美術館」ホームページ


とんとん・にっき-ba25 府中市美術館開館10周年記念展

バルビゾンからの贈りもの~至高なる風景の輝き
図録

企画・編集:志賀秀孝(府中市美術館 学芸係長)

編集補助:杉崎則夫、藤田裕子、村上あゆみ

企画協力:浅野研究所 広瀬麻美

発行日:平成22年9月17日

発行:府中市美術館





過去の関連記事:

府中市美術館で「歌川国芳―奇と笑いの木版画」展(後期)を観た!
府中市美術館で「歌川国芳」展(前期)を観た!その2
府中市美術館で「歌川国芳展」(前期)を観た!その1
府中市美術館で「ターナーから印象派へ 光の中の自然」展を観た!
府中市美術館で「山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年」展を観た!