畠山記念館で「織部が愛した茶碗―高麗 割高台―」展を観た! | とんとん・にっき

畠山記念館で「織部が愛した茶碗―高麗 割高台―」展を観た!


畠山記念館で「織部が愛した茶碗―高麗 割高台―」展を観てきました。畠山記念館は、株式会社荏原製作所の創業者である畠山一清(号即翁1881-1971)が蒐集した茶道具を中心に、書画、陶磁、漆芸、能装束など、日本、中国、朝鮮の古美術を展示更衣愛している私立美術館です。収蔵品は、国宝6件、重要文化財32件を含む約1300件で、春夏秋冬季節の移り変わりに合わせて年4回、作品を取り合わせて展示しています。


「畠山一清が蒐集した茶道具を中心に」とある通り、茶道具に関連する展覧会が多く、どうしても敷居が高い感じがして、かつ駅から遠くて交通の便がよくないこともあり、残念ながら行きたくてもなかなか行けない美術館です。そりゃあ、行けば行ったで、それなりに収穫はあるのですが。例えば、国宝「離洛帖」藤原佐理筆、重文「豊臣秀吉画像」伝狩野山楽筆、重文「竹林賢図屏風」雪村周継筆、「風神雷神図」酒井抱一、「色絵藤透鉢」尾形乾山作などを、今まで畠山記念館で観ました。



今回の主な展示品は、以下の通りです。
割高台茶碗
黄瀬戸胴紐茶碗
黒織部筒茶碗
志野茶碗
御所丸茶碗 銘 堅田
金海州浜茶碗 銘 明朗(10/9~11/11)
絵瀬戸割高台筒茶碗 元贇(11/13~12/19)
道中宿付 徳川家康筆
圜悟克勤墨跡 法語(重要文化財)
秋景山水図 伝 天章周文筆(10/9~11/11)
織部撮み出し火入
古銅花入 杵の折
唐物肩衝茶入 銘 日野
茶杓 銘 落曇 千利休作 豊臣秀吉所持
万暦赤絵草花文向付
古赤絵刀馬人文鉢(重要美術品)
鼠志野蓮文平鉢
書状 小堀宗明筆
茶会記 畠山即翁筆
※会期中、一部作品の展示替えを行います


今回の目玉は、李朝時代の「割高台茶碗」でしょう。一目見て「なんだ、これは!」といいたくなる、荒々しい無骨なそして豪快な茶碗です。解説によると、この茶碗は織部が所持していたと伝えられているそうです。注目したいのはその名の通り、割れた高台です。撥形に開いた大きな高台が4カ所大きく切り込まれ、外側だけでなく、内側からも削り込まれて、深い十字文をつくっています。極めて作為的な造形です。高台を底から見ると、花クルスのようでもあり、織部キリシタン説と重なって、もとはキリシタン洗礼用祭器であったと推定されています。それを日本の茶人が茶器に転用したのが始まりで、それをモデルに後に注文がなされました。


次に、桃山時代の「黒織部筒茶碗」ですが、慶長年間(1596-1615)、古田織部の好みにより美濃元屋敷窯・弥七田窯で創製されたものと言われています。黒釉の一部の窓を開け、鉄釉で絵模様を描き込んだり、彫紋が加えられたものです。五島美術館に「黒織部沓形茶碗 銘わらや」というものがありますが、高さはこれほどありませんが、よく似ています。静嘉堂文庫の「黒織部茶碗 銘うたたね」や、あくまでもプロポーションだけの話ですが、三井文庫所蔵の国宝「志野茶碗 銘卯花墻」が似ています。


次に、李朝時代の「御所丸茶碗 銘堅田」、御所丸とは朝鮮王朝との交易船のことで、全体が楕円形に歪んだ沓形で、作為の強い黒織部の沓茶碗に似ています。裾周りの刷毛目の様子を、近江八景の堅田の落雁に見立てて、遠州が命銘したもの、といわれています。これとよく似た「御所丸茶碗 黒刷毛目」が、静嘉堂文庫美術館にあります。


もう一つ、「黄瀬戸胴紐茶碗」について。桃山時代の16~17世紀に最盛期を迎えた美濃焼では、黄瀬戸、志野、織部という様式の異なる器が作られました。慶長4年10月10日、古田織部は瀬戸皿に柚味噌をのせて出したと記録にあります。この瀬戸皿が現在でいう志野、黄瀬戸、織部などの美濃焼と考えられています。陶磁の美濃焼は瀬戸焼と呼ばれていました。黄瀬戸は、「瀬戸よりきたる黄色のやきもの」という意味でした。五島美術館に「志野茶碗 銘梅が香」という赤志野の名品があります。





*「鶉図小襖」江戸時代

見晴らしのよい高楼風の造りの茶室・新座敷の小襖です。新座敷は、十二畳ほどの二間続きの奥座敷で、春日杉の床柱など銘木がふんだんに使われました。数寄屋大工の名人・木村清兵衞の高弟である坂爪清松によって完成しました。たまたま千葉工業大学の茶会が開催されていたので、その前にガラス戸を開けて、広間の写真を撮りました。
たぶん床の間の左手、風呂先の白い小襖が、「鶉図小襖」ではないかと思われます。なお、畠山記念館には、他に「翠庵」「明月軒」「沙那庵」の茶室があります。



「織部が愛した茶碗―高麗割高台―」展

織田信長と豊臣秀吉に仕えた戦国武将・古田織部(1543~1615)。千利休が大成させた茶の湯を継承しつつ大胆かつ自由な気風の茶を好んだ大名茶人としても知られています。本展は、織部所持と伝える高麗茶碗「割高台」にスポットをあて、織部の時代の茶碗とともにその魅力にせまります。さらに、織部から約400年後に同じく「割高台」に魅せられた近代の数寄者たちのエピソードを交えて、実際に「割高台」を用いた茶会の道具組をご紹介いたします。時を経て茶人たちが求めた美の結晶とメッセージに思いを馳せながらご覧ください。


「畠山記念館」ホームページ

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