妻夫木聡、深津絵里主演の「悪人」を観た! | とんとん・にっき

妻夫木聡、深津絵里主演の「悪人」を観た!

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李相日監督、妻夫木聡、深津絵里主演の「悪人」を観てきました。本格的な映画で、久し振りに大満足した映画です。原作者の吉田修一が、脚本に参加したことが大きいように思います。長崎、佐賀、福岡、それぞれ微妙に違う「九州弁」が、よかったですね(いつもは方言を非難しているのですが)。上のチラシに出てくる俳優たち6人が、6頭だての馬車のように、見事に絡み合ってひとつの作品となっています。


地方に住むしがらみの中で、自由に身動きもできずに、鬱屈した閉塞感漂う生活を送らざるを得ない、長崎に住む男と佐賀に住む女。男は、親戚の仕事を手伝う解体工、女は、発展的な妹と2人で、まわりが田んぼの中のアパートで暮らす、紳士服量販店の店員。2人は「本気で誰かと出会いたくて」、出会い系サイトで知り合い、佐賀駅の前で初めて会います。2人はメールで、燈台を見に行く約束をしていましたが、男は会ってすぐに「ホテルへ行こう」と言い出します。女は「女もそういう気持ちになることもある」と、嫌がらずに応じます。しかし、2人が出会う前に、男は殺人事件を起こしていました。家からの電話で警察が追っていることを知り、2人の逃避行が始まります。


「格差社会」、これもこの作品の大きなテーマの一つです。生活に苦労のない湯布院の温泉宿の息子と、母親に捨てられ、祖母に育てられた肉体労働者。一方は外車のアウディ、もう一方は国産車のスカイラインGT。飲み会では仲間たちに、女とのことを自慢げに話したりしています。明暗が分かれ、なにかと対比的に扱われています。殺された保険会社の女は、同僚に彼氏がいることをそれとなく自慢します。しかしその相手は女は単なる遊び相手としか思っていません。出会い系サイトで知り合った男には、実は金を要求したりしている女なのです。発展的なチャラチャラした女たち、一方で鬱屈した女。ここでも対比的です。


「ひとつの殺人事件」に対して、「引き裂かれた家族」とあります。男は、母親にフェリー乗り場で置き去りにされた過去を持ちます。殺された娘の両親、特に床屋を営む父親は娘を可愛がります。殺した男の育ての親である祖母。祖母は、孫からプレゼントされたスカーフを、事件現場に巻き付けてきます。こうした家族たちのことを、この作品は詳細に描いています。警察に自首しようとする男を、車の警笛で呼び戻す女。あと1日、あと1日、少しでも一緒にいたい2人。逃亡劇が純愛劇に変わります。2人が潜んでいた岬の燈台。回りには警察官が迫ってきます。男は、「あんたが思っているような男じゃなか」と、女の首を締め付けます。突入した警察官に2人は引き離されます。2人は手を伸ばしますが、もう少しのところで届きません。この作品は「いったい誰が本当の“悪人”なのか」と、観る者に問いかけます。

以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。


チェック:朝日新聞夕刊に連載され、毎日出版文化賞と大佛次郎賞を受賞した吉田修一の話題作を映画化した犯罪ドラマ。九州のとある峠で起きた殺人事件をきっかけに、偶然に出会う男女が繰り広げる逃避行と愛を息苦しくなるほどリアルに描く。監督は、『フラガール』の李相日。罪を犯してしまう肉体労働者と彼と行動をともにする女性を、『ブタがいた教室』や大河ドラマ「天地人」の妻夫木聡と『女の子ものがたり』の深津絵里が演じる。原作で巧みにあぶり出される登場人物の心理がどう描かれるのか、実力派俳優たちの共演に期待が高まる。


ストーリー:若い女性保険外交員の殺人事件。ある金持ちの大学生に疑いがかけられるが、捜査を進めるうちに土木作業員、清水祐一(妻夫木聡)が真犯人として浮上してくる。しかし、祐一はたまたま出会った光代(深津絵里)を車に乗せ、警察の目から逃れるように転々とする。そして、次第に二人は強く惹(ひ)かれ合うようになり……。


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「悪人」公式サイト


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