5日前に試写会にて鑑賞。
記載するのを忘れていました
『ローン・サバイバー』
3月21日公開映画
2005年6月、アメリカの精鋭特殊部隊「ネイビー・シールズ」によるアフガニスタンでのタリバンの幹部暗殺作戦「レッド・ウィング作戦」遂行中に起きた悲劇の実話を映画化。これはネイビー・シールズ史上最大の悲劇と言われるほどで、たった4人で向かった暗殺任務が判断ミスにより200人のタリバン兵士を相手にする事になる。
奇跡的に1名のみ生還を果たした元隊員のマーカス・ラトレルの手記でこの映画の原作『アフガン、たった一人の生還』がある。
ネイビー・シールズといえば、精鋭部隊な訳で、簡単に言えば「目標を暗殺してちゃちゃっと帰る」みたいなゴーストのような存在。別の映画作品の『ゼロ・ダーク・サーティ』であるように、ビン・ラディンを暗殺したのもあれば、『キャプテン・フィリップス』で船を占拠した海賊を狙撃したのもネイビー・シールズだ。
それでありながらも、この「レッド・ウィング作戦」では、アフガンの険しい山岳地帯の中で待機中だったシールズ部隊が、ヤギを放牧している農民3人と遭遇してしまう。すぐに拘束するが、「口封じにこの農民を殺すか殺さないか」を選択しなければならなくなる。しかも農民の中には子どももいる。
拘束したまま放っておこうにも、足を縛るロープがない。もし自分達で殺害すれば、完全に法律違反になる。
部隊4人の意見が合致せず「少年でも戦士だぞ!殺すしかない!」と言う仲間もいれば、「もしこいつらを殺せば「ネイビー・シールズが子どもを殺害した」って知られるかもしれないぞ!」と反論し、困惑してしまう。
それでも"命令"という形であれば簡単に殺害できてしまう部隊ですが、山岳地帯で本部との連絡が繋がらない、電波の良い場所もないという状況下で結局この4人が判断しなければならない。
「やはり殺しては駄目だ。ここは逃がして、俺達は山の頂上に戻って本部と連絡を取ろう。一旦帰還するしかない」となり、縛られていた3人の農民は解放。しかし案の定にも200人のタリバンの兵士がシールズを探し出し、戦争状態となる。
険しい山の中で逃げながらも戦うシールズ部隊が、崖から転落していくシーンは生々しく残酷で、目を伏せてしまう程かもしれない。
ちなみに、崖から転落する前に足を負傷した部隊の一人が崖の上に取り残されたままとなる。死亡と断定されているが、実際はこの一人のみどうなったかは不明である。
必死に戦いながらも、電波の届く場所で応援を呼ぼうと判断した部隊の1人が死を覚悟し、激しい銃撃戦の中なんとか応援を呼ぶ事に成功したが、死亡してしまう。応援に駆けつけた16人の救助部隊もタリバン兵士の放ったRPGロケット砲によりヘリコプターと共に撃墜。
激闘は続き、他の救助部隊も撤退。残りのシールズも銃殺され、たった一人マーカス・ラトレルだけが生き延びた。
その後、何キロか離れた場所で別の農民に遭遇する。正気を失っているマーカスは「いつでもこの手榴弾で殺せるんだぞ!」と構えた状態でいたが、驚いた事にその農民はマーカスを助けようとする。言語違いでマーカスからしてみれば何を喋っているのか分からない状態で、本当に信用していいのかと再び困惑する。その農民に半ば強制的に村に連れていかれたが、治療を行った後、村人を信頼したマーカスは「救助がいる」と本部の連絡先を手紙として村人に渡した。
しかし、突如として追って来たタリバン兵士がその村を襲撃。村人も兵士との銃撃を繰り広げる中、本部から応援部隊が到着。ここでやっとの事マーカスは救助される。
これが"選択の判断"によって実際に起こってしまった実話。
・農民を殺害するかしないか。
・危険を犯してまで応援部隊を呼ぶか。
・言葉も通じない村人を信じるか否か。
少なくともこの3つの究極の選択があった。
もし最初に農民を殺害すれば、応援部隊を含む19人の命は助かったかもしれない。それでもマーカス本人は「後悔はしていない。でないと死んだ仲間に失礼だ」と言う。
そしてこの惨事の疑問として、何故村人はマーカスを助けたのか?という所だが、それは映画の最後にも分かる事で、その村には「敵から逃げる者には助けるべし」といった掟があるとのこと。
その村は元々タリバンとは長年戦争を続けている。それも現在にも至って。
本作を監督したのはピーター・バーグで、ピーター・バーグといえば、ラジー賞よろしくの"究極のバカ映画"と呼ばれた『バトルシップ』の監督だが、何故そのような監督がアカデミー賞ノミネートされるほどの『ローン・サバイバー』を撮る事が出来たのか。
元々ピーター・バーグは『ローン・サバイバー』を撮りたいと製作会社と話しあった時に、「まずはバトルシップを撮って成功しないと駄目だ」と言われたらしく、仕方なくも撮った『バトルシップ』が結果的に大コケし、ディズニーの『ジョン・カーター』に並ぶ大赤字映画となった。
本作が製作可能になるキッカケを与えたのが、主演者のマーク・ウォールバーグで、彼の説得のおかげで本作を撮る事が出来たという。
そんなピーター・バーグが"本当に撮りたかった映画"を見れた事から満足しない事は決してなく、『ブラックホーク・ダウン』に次ぐ戦争映画の傑作なのも確か。
クセのあるような演出はないので、特に記述する事はないが、個人的に上半期としてはかなり上位にくる作品だと思う。
この事実は全ての人に知っていてほしいという訳ではないが、「タリバン=悪」との見方をするアメリカ社会を見れば、鑑賞して損はないだろう。