悲しいニュースが飛び込んできました。
以前もご紹介した東工大生御用達の大岡山「あたりや」が22年7月で閉店するという話だ。居ても立ってもいられなくなり、大岡山に駆け付けました。
7月25日月曜日。
そこには、いつもと変わらない、街のとんかつ屋の佇まいのまま、「あたりや」はありました。
しかし、店先に悲しい知られが書かれた一枚。
60余年という長きにわたって「あたりや」をやってらして、体力の限界を感じられたということで、閉店するそうです。
60余年の重み。
一つの店をこんなにも長くやってらしたことに、改めて驚きと感謝、そして尊敬の念を感じざるを得ません。
60年前といえば、東京オリンピック(1964年)の開催が決まり、日本中に喜びと活気にあふれて時代。第二次世界大戦の傷跡も癒え、「もはや戦後ではない」が流行語になったのが1956年。そして坊主頭の中学を卒業したばかりのたくさんの若者が、不安と希望を胸に、集団就職で上野駅に降り立ったのもこのこの頃です。
腹を空かしたたくさんの若い青年たちが「あたりや」にやってきて、お腹いっぱいとんかつを食べてたことでしょう。
また、東工大のすぐ隣にあるという場所柄、長年ここの学生にも愛されてきた。とんかつの栄養が、日本の科学を支えてきたのかもしれません。
そんな歴史をかみしめながら、あたりやの「ロースかつライス(上)1200円」を頂きましょう。
「あたりや」にはラーメンもあり、付け合わせの汁ものは、中華スープだ。皿に書かれた「あたりや」の文字が、味わい深い。
ソースはあらかじめ皿にかけられている。洋食スタイルだ。少し甘めで濃厚。卓上にもソースはありますが、そちらはウスターソース。
衣は細かめ。いまとんかつ屋で主流のフワフワの生パン粉系でなく、クリスピー系でカリカリ。
断面は、極めてジューシーである。一口噛むと、じゅわーと肉汁が広がる。衣のカリカリ具合と相反し、肉はとっても柔らかい。このギャップが、たまらない!
ちなみに、「あたりや」のとんかつは、「とんかつライス」→「ロースかつライス(上)」→「ロースかつライス(特上)」とグレードがアップしていくが、違いは部位ではなく、基本的に肉の厚さがちがうということです。
しかしながら、このカリカリ感と、肉の柔らかさのギャップを楽しむなら「ロースかつライス(上)」以上がお勧めです。
……と書きたいころだが、本日(7月26日)で営業終了なんですよね…。誠に残念です。
会計を済ませ、おかみさんと主人に、大きい声で、「美味しかったです!いままでお疲れさまでした!」と精一杯声をかけさせていただきました。
ご主人は嬉しそうに会釈してくれました。60年やり続けた解放感か、あるいは60年通い続けた全員への感謝なのか、とても深い眼差しでした。
「あたりや」の女将、ご主人、本当にお疲れさまでした。