心と体 | トナカイの独り言

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 某大企業のコマーシャルに、「心と体、人間のすべて」というキャッチコピーがある。

 わたしは、これを聞くたび、とても寒々しい気分になる。


 人間には心と体しかないのだろうか?

 「心は脳だ」とする科学者も多いが、ふつう使われる言葉の意味から考えたなら、「心と体、人間のすべて」は、宗教を否定することになる。

 ほとんどの宗教は、ふつう「魂」という不可思議な存在を認めているのだから。

 この企業は、よほど「宗教を否定する社会主義的な会社なのかな」と感じてしまう。


 故河合隼雄さんは、魂という問題を多くの場で取り上げた。

 河合さんは「魂がある」とか「魂はない」とか、決していわない人だったが、多くの場で「魂というものがあると考えたなら納得がいく」と表現をされた。

 わたしにも、もちろん魂があるかないかは分からない。しかし、魂というものがあるとしたなら、妙に納得がいく経験はたくさん積んできた。だから、魂はないかもしれないが、あるかもしれないと感じてしまうのだ。


 宇宙という広大な分野を探っても、量子という極小の世界を探っても、人間には「ほとんど何もわからない」ということしか分からない。

 魂という永遠のテーマも、分かる日が近いとは思えない。

 しかし、はっきりと分かる日が来るまで、わたしは「心と体、人間のすべて」とは考えたくない。

 人生に、少しは謎を残しておきたいのである。

 心と体が人間のすべてだとしたなら、人間は遺伝子の乗り物であり、遺伝子に操られている存在であるかのように感じてしまう。

 そうでなく、わたしたちの命が、何かもっと大きな意味を持つ何ものかであることを、わたしは信じたい。