指揮:ワレリー・ゲルギエフ

独唱:アンナ・デニソヴァ

マーラー 交響曲第4番、第5番


ロシアのウクライナ侵攻から、ほぼロシア国内に活動を絞っているゲルギエフが手兵を率いて中国公演。

マーラーの交響曲全曲(大地の歌と10番は除く)、5日間6公演で9曲という凄まじいスケジュールが組まれている。

初日はマチネで7番、夜に4番と5番。

他の日も1番と3番、6番と9番をそれぞれ組み合わせていて休憩入れると3時間超コースだ。相変わらずのタフネスぶりだが、以前より公演数が減っているだろうにもう少し余裕のある日程にすれば良いのにと思う。

マーラー全曲とあって声楽付きで4曲あり、合唱団や独唱は劇場でオペラに出演している劇場の客演歌手も帯同しており、まるでマリンスキー劇場の引越公演のような陣様だ。

ゲルギエフは好きな指揮者というわけではないが、久しぶりだしちょうど滞在中にタイミングあったしこれからもそう聴けそうにないので、足を運んでみた。


19時半開演で、カーテンコール終了が22時20分という長いコンサートだった。

対抗配置14型でコントラバスが下手奥に座る。

4番は全曲通して揺らぎのある遅めのテンポ、61分ほど、今までに聴いたことのないユニークな演奏だった。

指揮棒なしのゲルギエフ、両手の指先が痙攣しているような振りで、それがフレーズごとに動く。

冒頭の鈴の音からフルート、弦と受け継がれて鈴の音が聴こえなくなるまでで大きなリタルダンド、繰り返しでも同じでさらに音量を落としていた。テンポだけでなく、音色も耽美的に歌わせている。

オケは弦の中でもヴィオラの内声が分厚く、木管も乾いたチャルメラのようなオーボエを始め音圧が強い。

4楽章のソプラノは細めの声だが美しく、最後の5分、ハープからフルート、そして弦の静かな伴奏に天上の美しい声が響き、最後まで静かに引きずりながら音が消えていくとこまでリタルダンドだった。このエンディング、3番、9番のフィナーレと並んでマーラーの交響曲でも好きなところ。いいものを聴かせてもらいました。


後半の5番も70分ほどで比較的遅いが、前半のような極端なリタルダンドはなく、トランペット、ホルン、トロンボーンの輝かしい金管と弦のパワーを押し出した印象、聴衆は大喝采だった。あまり期待していなかったが、先入観で聴いてはダメですね。

久しぶりに聴くロシアのオーケストラもだいぶモダンになっている感じがした。5番で大活躍のトランペット・ソロが象徴的で、昔の金属的な冷たくて仄暗い音ではなくて、明るく力強い音がする。

音楽と政治は関係ないというけれど、実際はロシアの個人や団体は民主主義国家での出演ができなくなって分断が続いている。今回も中国だからこの公演が成立している。早く平和が訪れますように。