昨今では植物性の油による健康被害が注視され始めている。
植物油(マッサージオイル)を毎日使用している私達セラピストにとっては大変気になる話題である。
確かに、以前からアロマセラピストに癌が多いとか、手荒れや不定愁訴を訴える人が多いという話は耳にしていた。
果たして、その原因は本当に植物油にあるのか?色々と調べてみると、その原因が見えてきた。
巷では「4毒抜き」なんて言葉も流行っていて、小麦、植物油、乳製品、甘いもの、これらを長期的継続的に摂取しているとあらゆる健康被害をもたらすという。
確かにこれには納得できるエビデンスもデータも歴史的背景もあり、実際に私のサロンに通われているお客様の中にも4毒抜きで体調が改善したり、お肌のシミが消えたという話をよく聞く。
中でも小麦については、テニスのノバク・ジョコビッチ選手がグルテンフリーにしてからパフォーマンスが劇的に改善したという経験談を著書『ジョコビッチの生まれ変わる食事』で語っている。
そんな影響からかグルテンフリーという言葉は割と一般的になりつつあるが、大手メディアでは4毒のネガティブな情報は一切流れてこない。それはスポンサーの以降に忖度してのことであることは言うまでもない。
今回は小麦ではなく、オイルマッサージのセラピストにとってリスクとなりうる植物油について考えてみたいと思う。
戦前の日本人は1日1~5g程度しか摂取していなかった植物油、戦後になると10倍の50g以上を摂取するようになった。
その摂取量増加と共に徐々に増えてきた病気が癌と糖尿病と認知症である。
実は自己免疫疾患など他の病気も急激に増えているのだが、これらの病気との相関性はWHOや厚生労働省からのデータで示されているので興味のある方は参照されたし。
◉ がん(悪性新生物)について
日本人のがん死亡率(特に大腸がん、乳がん、肺がん、前立腺がんなど)は、1960年代から右肩上がり。
同時期に植物油の摂取量も増加傾向。(喫煙率や飲酒率は激減している)
特にオメガ6系脂肪酸(リノール酸)の過剰摂取は慢性炎症を促進し、がん発症のリスク因子であるとする研究も複数存在。
◉ 糖尿病について
厚生労働省の統計では、1970年代以降、糖尿病患者は指数関数的に増加。
植物油の摂取によるインスリン抵抗性への影響を示す研究も。
◉ 認知症(アルツハイマー病)について
アルツハイマー病も1970年以降に急増。
脳細胞膜は脂質で構成されており、摂取する脂肪の質が脳機能に影響を与えるとされる。
特にトランス脂肪酸や酸化した油脂は、神経毒性があることが報告されている。
これらは、戦後の日本における食の西洋化が大きな要因となっていることは間違いない。これまでの煮炊きを中心とした日本の調理法ではなく、フライパンに油をひいて炒める、揚げる、生野菜に油を掛ける、パンにマーガリンを塗るなど水ではなく油を使った調理法への変化である。
更にチョコレートやポテトチップスなどの菓子類には多量の植物油脂が使われている。ス〇バの飲み物やあらゆるケーキに使われているホイップクリームは植物油脂の塊である。
<戦前の日本で必須脂肪酸はどのように取られていたのだろうか。>
それは胡麻、大豆、玄米、貝類であった。天ぷらや洋食は一部上流階級や都市部の外食でのみ食され日常食ではなかった。
<なぜ日本人は植物油を料理に使わなかったのだろうか?>
日本という国は世界的にも珍しく水がきれいで豊富であるため、野菜をしんなりさせるのも、肉や魚を柔らかくするのにも水を使うことができた。
そして田んぼに水を引き稲作が発展した。
しかし、中東やユーラシア大陸では水は貴重だったので、代わりに植物油の生産が発達した。そして米の代わりに乾燥地帯でも育つ小麦を生産し、牛乳やワインを飲む文化が発展した。
よって、油を摂取してこなかった日本人の体は、脂溶性毒素の解毒や排出が必要ない仕組みになっている。元々毒を入れない食文化なのである。
しかし、長年植物油を取ってきたアングロサクソン系民族の体は、脂溶性毒素の解毒排出の機能が備わっているのである。
例えば、白人は皮下脂肪が発達しており(寒冷地対策)、脂溶性物質を一時的に貯蔵し肝臓でゆっくり解毒することができるが、日本人は一時的に貯める機能が弱く毒性がダイレクトに出やすいのである。
また、排出機能としての汗腺の仕組みも日本人を含むモンゴロイド系とアングロサクソン系では違う。
汗腺には水溶性毒素(重金属、尿素、乳酸など)を排出するエクリン汗腺と脂溶性毒素(アルデヒド、脂肪酸、農薬など)を排出するアポクリン汗腺(脇の下、陰部、乳輪、外耳道)があるが、アポクリン汗腺の数が日本人は非常に少なく、白人や黒人は非常に多い。(白人や黒人の体臭が強い原因)
そのため日本人は植物油を取り過ぎると、その解毒も難しく、排出もできないということになり、欧米人よりもその健康的リスクは高くなる傾向にある。
日本人の癌患者や糖尿病患者が増え続けている要因のひとつが植物油の過量摂取であることは間違いない。
そこで私が懸念したのは、オイルマッサージにおける植物油の経皮吸収のリスクである。
もし、日本人が苦手な植物油が経皮吸収により血管から体内に取り込まれているとしたら、健康リスクに繋がるのではないのか?
それこそが、アロマセラピスト達に健康被害報告が多い原因なのではないか?
この問題については、経皮吸収のメカニズムに答えがあった。
皮膚科学の分野においてよく知られる経皮吸収理論として「500ダルトン(Da)ルール」というものがある。
人体の皮膚は角質層、表皮、真皮からなり、角質層を通過して真皮の毛細血管へと到達するには分子量が500ダルトン(=500 g/mol)以下の化合物でないと、基本的に吸収されないという理論である。
水溶性物質はそもそも分子量が大きいので吸収されないのだが、比較的分子量の小さい脂溶性物質でも500ダルトンを超えるものは吸収されにくい。
※ちなみに水溶性のヒアルロン酸美容液は800万ダルトン以上なので肌から吸収されることはない。
オリーブオイルやホホバオイルやココナッツオイルなどのキャリアオイルとして使用する植物油に関しては、分子量が500ダルトン以上なので血管から体内に吸収されることはほぼないと言っていい。
つまり、キャリアオイルの経皮吸収による健康被害リスクは考えなくて良さそうである。
しかし問題はアロマ(精油)である。
精油はより濃縮された脂溶性物質であり、分子量が極めて小さいため一部経皮吸収により血中まで取り込まれるリスクがある。
少量であれば肝臓による代謝作用で健康に問題を起こすことはないのかもしれない。しかし、量が多くなり頻度が増せば肝臓への負担は大きくなり、排出が遅い日本人の体内には長期間留まることになる。
そう考えてくると、アロマセラピストの健康被害の要因として、精油の継続的な過量摂取というものは否定できない。
では、スウェディッシュマッサージのセラピストに健康被害が出ないのはどうしてなのか?
それは簡単である。使用するオイルの量が圧倒的に少ないからである。
おそらく、スウェディッシュマッサージの開発者パーヘンリックリン医師は、脂溶性物質の危険性を理解していたのかもしれない。
更に言えば、精油を使用したマッサージの起源が古代エジプト(紀元前3000年~)だったという文献も残っていることを考えれば、食文化同様に西洋人の体には馴染みのあるものだったのだろう。
ちなみにアロママッサージが日本に伝わってきたのは、1980年以降だったというから日本人の体に馴染まないのも無理はない。
これらのことから、結論として言えるのは、日本人がアロママッサージを受ける場合、精油をブレンドしたオイルの量と頻度に注意が必要だということ。
日本人がロミロミやアーユルヴェーダなどオイルをたっぷり使用するトリートメントを受ける場合は特に注意が必要であるということ。
<アロマセラピーの注意点>
・施術を受ける頻度を1ヵ月1回程度に抑える
・施術後は余分なオイルはしっかり洗い流す
・施術後はお風呂に浸かりしっかり汗をかいてデトックスする
・アロマセラピストは日々の食事で植物油を取り過ぎないように注意する
※精油の経皮吸収と血中到達時間については、ラベンダーで塗布後5分以内に血中で検出されたという報告もあるので、施術後のふき取りや洗い流しでは不十分なのかもしれない。
そう考えると、植物油脂の健康被害を懸念される方は、やはりオイル使用量が圧倒的に少ないスウェディッシュマッサージがお勧めである。
特に毎日オイルを使うセラピストさんにはスウェディッシュマッサージをお勧めしたい。
そして、できればマッサージオイルに精油をブレンドせず、キャリアオイルだけで施術することでよりリスクを回避できるだろう。
セラピストの心と体の健康を守る、これがGHTSの癒しの理念である。
そのため当スクールでは精油のブレンドされていないオーガニックのスウェーデン製キャリアオイルのみを使用している。
今回の内容は、決してアロマセラピー全般を否定しているものではなく、植物油の経皮吸収による健康被害リスクについて考察したものである。
精油の癒し効果や健康効果は歴史的に主に欧米人において認められている。
しかし精油歴の浅い日本人においては、まだその効果は未知なる部分が多い。
精油の希釈率も含め、日本人のDNAに合ったアロマとの付き合い方というのが今後見直される必要があるのではないかと思う。
民族性を無視してすべて欧米と一律同じというのはおかしい。
特に日本人は戦後の教育で日本はダメで欧米が優れているという洗脳を受けてきた。未だにアメリカやヨーロッパに憧れている日本人は多い。(特に昭和世代)
私は、スウェディッシュマッサージをベースにして、より日本人の体に適した日本人の体に負担が少ないオイルトリートメントを追求していきたいと考えている。
オイルマッサージの原点であるスウェディッシュマッサージをリスペクトしつつ日本人特有の自然との調和や信仰心に繋がる深い癒しこそが今後日本人セラピストに求められる資質なのかもしれない。
🔗【参考論文や統計】
· FAO/WHO:脂質と健康に関する専門家会議報告(2008)
· 厚生労働省「国民健康・栄養調査」
· "The relation of diet to cancer mortality in 65 countries" (Carroll KK, 1975)
· "Omega-6 fatty acids and risk for cardiovascular disease" (Harris et al., 2009)
· 「Percutaneous absorption of lavender oil from a massage oil」
· 「Blood concentration and uptake of d-limonene during aromatherapy massage with sweet orange oil」
· "Human apocrine glands and body odor: a functional evolutionary analysis." – J Dermatol Sci. 1994
· Sato K, et al. (1989). "Human eccrine and apocrine sweat glands." Journal of Investigative Dermatology .
· Tsujimura H. et al. (2000). "Evaporative skin excretion of organic solvents and related metabolites." Archives of Environmental Contamination and Toxicology .
· Shimada et al. (1994), “Cytochrome P450-dependent metabolism of xenobiotics in human liver.” Pharmacology & Therapeutics
DOI:10.1016/0163-7258(94)90016-7
· Bos, J. D., Meinardi, M. M. H. (2000). “The 500 Dalton rule for the skin penetration of chemical compounds and drugs.” Experimental Dermatology , 9(3), 165–169.
DOI:10.1034/j.1600-0625.2000.009003165.x
VIDEO