『任期半ばでの退任は極めて珍しい・もみ消し発覚』
警察庁長官の中村格(いたる)氏(59)が、9月27日の安倍晋三元首相の国葬後に辞職するという。
安倍元首相を銃撃から守ることができなかった件での更迭と見られる。
次長を務める同期の露木康浩氏(58)にバトンを渡すことが既定路線とされてきました。
「警察庁は銃撃事件に関する検証を進めており、その報告が8月にまとまりますが、
中身に関係なく辞めることは決まっているようです。
銃撃事件を受けた直後の定例会見でも、自身の責任に言及する厳しい言葉を使っていました。
退任について表向きには、“責任を取って”と言わず、
“人心一新”みたいな言い方をするかもしれませんが」
中村氏は私立ラ・サール高校から東大法学部を経て1986年4月に警察庁へ入庁。
和歌山県警や千葉県警、警視庁捜査二課長などを経験した後、
2010年から民主党政権下の内閣官房長官秘書官に就任した。
「1986年入庁組は能力のある人材が豊富で、警察庁長官や警視総監の候補者は何人かいました。
中村氏が同期の出世レースでトップを走っていたかというと、そんなことはありません。
現在、警察庁ナンバー2の露木次長のほうが、評価は高かったですね」
そんな中村氏の人生に大きな転機が訪れるのが、2012年12月の政権交代だった。
「自民党が政権を奪還し、通常なら大臣の秘書官も総とっかえされるところを、
中村氏は新たにやってきた菅義偉官房長官に土下座せんばかりに“続けたい”と懇願したそうです。
その意を汲んで菅さんは留任させ、中村氏は持ち前の危機管理能力を発揮して、
二人三脚で難局に対処していくことになります」官邸に寄り添うことで
出世の階段を駆け上がってきた“スーパー官僚”のこれまでを振り返る。
逮捕状の握り潰しや元首相秘書・子息への忖度捜査で「官邸の番犬」と呼ばれた
スーパー官僚の出世すごろく
もう1つの忖度捜査
その捜査とは、ゲームセンターでのケンカに関するものだ。車の運転シミュレーターゲームで
未成年だった被害者と、加害者である成人男性が競ってプレーしていた際に、
被害者が相手をけしかけるような言動を取り、それに反応した加害者が一発殴ったというものだ。
理由が何であれ暴力は看過できないが、この「ゲーセンのケンカ」が単なる
揉め事で終わらず大きな事件に発展したのは、被害者が安倍氏の元政策秘書の子息だったからだ。
この案件には泣く子も黙る警視庁捜査一課の精鋭部隊が投入され、「3日以内の解決」を厳命、
加害者には暴行容疑で逮捕状が出され、実際に逮捕された。
一課を投入して加害者を逮捕することは中村氏の指示で、当の一課の面々は
「この程度の案件でまさか逮捕までやるとは……」と茫然自失の体だったという
「捜査に関わっていない」 逮捕状握り潰しの決済
「着任直前の2014年、知能犯を担当する捜査二課は、
贈収賄案件を1件も摘発することができませんでした。
過去30年で初めてゼロだったなどと新聞にも書かれて、
二課のみならず警視庁の汚点として記録されることになりました。
中村氏はこれに積極的に取り組むよう指示し、4件の贈収賄事件を捜査二課に摘発させます。
実際は中村氏自身が情報を持ってきたようなのですが、機を見るに敏と言うか、
過去の捜査二課人脈を遺憾なく発揮したというか、出世する人は結果もしっかり出すものなのだなと感心したものです」 仮にそれが刑事部長として光の部分であったとしたら、
陰の部分が「逮捕状の握り潰し」案件だったと言えるだろう。
2015年6月、警視庁高輪署は元TBS記者の山口敬之氏に対し
フリージャーナリスト・伊藤詩織さんへの準強姦容疑で逮捕状を取り、
捜査をさらに進めようとしていた。
しかし、当時、警視庁刑事部長だった中村氏が逮捕の中止を命じたことで直前になって
取り止めとなった(最高裁は今年7月7日、「山口氏による性的暴行があった」ことを認めた)。