三宅香帆さんの著書を2冊読みました。


 

 


 

 


 

「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」は今流行っている本で、

「娘が母を殺すには?」はこの方の最新の著書です。

 

三宅さんは文芸評論家ということで、本当に読書がお好きなんだなということが

読んでいてわかります。読書好きの人であれば、共感できる点が多いと思います。

 

1994年生まれの新進気鋭の文芸評論家で、今後注目していきたいです。

 



なぜ働いていると本が読めなくなるのか



さて、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」は、タイトルからすると心理学や脳科学系の本なのかと思っていましたが、労働の歴史と読書の歴史をベースにした内容です。

 

明治以降の労働のあり様の変遷と読書のあり様の変遷について、考察しており着眼点が新しく、面白いと思いました。

「この時代にこの本が流行ったのは、こういう背景があった」というような考察の仕方です。

 

ただ、それが因果関係と言い切れるのか疑問に思う点は多々ありましたが、読書の歴史変遷はとにかく興味深かったです。

 

最終的には「働いていても読書ができる社会」にするための提言があり、これはうんうんと納得しました。

 

≪仕事や家事や趣味やーさまざまな場所に居場所をつくる。さまざまな文脈のなかで生きている自分を自覚する。他者の文脈を取り入れる余裕をつくる≫

 

≪本を読むことだって…略…半身の取り組みでいいのである。にわか つまり半身のコミットメントをする人は趣味の世界においても嫌われがちであるが…略…にわかでなにが悪いんだ≫

 

この辺りは、今の私には響きました~

 

というのも私は4年間専業主婦をしていましたが、来週から週5でパートをします。

さらに2年後の義母の定年退職を機に、フルタイム労働を見据えています。

 

いまのような贅沢な時間の使い方はもう向こう数十年はできないので、

趣味の断捨離をしなければいけないかな…と思っていたところなんです。

 

人生で一番自分の趣味に時間を使えた4年間でした。最高の4年間だった…。

もちろん育児はしていましたが、空いた時間で洋裁、読書を思いっきりやらせてもらったなあ。

この四年で読んだ本は記録している分で258冊でした。

 

読書、洋裁、海外ドラマ、資格試験そのほかいくつか趣味はあるけど、別にどれもあきらめなくていいのかな…と

この本読んで思いました。家族に迷惑をかけず、自分の健康を害さない範囲であれば、

その時の気分で、中途半端にでもやっていっていいのかな~と。

 

 


娘が母を殺すには?



「娘が母を殺すには?」は物騒なタイトルですが、この殺しというのは「母の規範を手放すこと」を意味します。

精神的な母殺しの話です。

 

「母と娘が仲良くやること」が社会的によしとされ、そうでないと「毒親」「親ガチャ失敗」などと言われる現代社会において、いかに母殺しを行うか。

 

母と娘を描いた小説、漫画、ドラマなどの作品で「母殺し」がどのように行われているかを読み解きながら考察しています。


萩尾望都の漫画、川上未映子「乳と卵」、「凪のお暇」、「スパイファミリー」などいろいろな作品をとりあげていて、そういう解釈もあるのか~と興味深く読みました(そうなのか?と思うところもありましたが、着眼点がとにかく面白い)。

 

著者はあとがきで、自身の母殺しは読書だったというのですが、

これはめちゃめちゃ共感しました。

 

私自身も、母との関係にはかなり悩んできていて、だからこそこの母子関係というのは読書でも選ぶことの多いテーマです。


私自身はまだ母殺しを完遂したとは言えない(完遂する必要があるのかも答えがでない)けど、この2年くらいでかなり進展したと思います。

 

きっかけになった本がこれ。



 

 


結構前に読んだので、あまり詳細は覚えていないのですが、

母の人生(ライフストーリー)を知る限りで振り返る、できごとひとつひとつを丁寧に振り返ることで、

当時母と自分に起きたことを再解釈することができたと思います。

 

自分の中の母に似ている部分に向き合ったりするのはキツかったですが、この本のおかげで

かなり過去のとらえ方が変わったように思います。


許すとかではないが、とにかく「母だって私と同じ未熟な一人の人間でしかなかった」と

当時の母の苦しみにも理解を示せたのは私にとって大きなことでした。

この本を読めたことは、私にとっての母殺しを大きく進めたと思います。