まりや流の「歌謡」曲と「火曜」サスペンス。竹内まりや「シングル・アゲイン」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日は竹内まりや「シングル・アゲイン」(1989年リリース) です。




1987年にリリースされたアルバム『REQUEST』は、セルフ・カヴァーアルバムの草分け的存在となり、1984年のアルバム『VARIETY』以上のセールスとなり、1991年には4年がかりでミリオン・セラーとなるロングヒットアルバムとなりました。2作の成功はまりやさんに自信と余裕が生まれたこと、そして多少のインターバルはハンデにならないという判断から、制作に時間を費やすことが可能となりました。提供曲はもとより、自身の作風も幅広くなり、多ジャンルな作品が作られました。アレンジ・プロデュースを務める山下達郎さんも、『POCKET MUSIC』『僕の中の少年』といったアルバムがデジタル・レコーディング、そしてコンピューター・サウンドといった変革が行われ、一定の成功を納めたこともあり、徐々にコンピューター・サウンドでの演奏の比重が占めてくるようになります。

そんな中でまりやさん・達郎さんの元にドラマ主題歌のオファーが舞い降ります。その為に作られたのがこの「シングル・アゲイン」でした。

この曲は日本テレビ系「火曜サスペンス劇場」8代目エンディングテーマとして書き下ろされました。


「火曜サスペンス劇場」のロゴ。


↑「火曜サスペンス劇場」と言えば…。



ここの文章を見ているあなたは、恐らく上の「例のオープニングテーマ」を聴いてからここを見ていると思います。言うまでもありませんが、「火曜サスペンス劇場」は日本テレビ系で1981年〜2005年まで放送されたいわゆる「2時間サスペンス」の代表格といえるドラマ枠で、テレビ朝日系の「土曜ワイド劇場」と並ぶ2時間サスペンスでした。有名なものでは、

  • 浅見光彦シリーズ(水谷豊さん主演)
  • 刑事・鬼貫八郎(大地康雄さん主演)
  • 検事・霞夕子(桃井かおりさん→鷲尾いさ子さん→床嶋佳子さん主演)
  • 小京都ミステリー(片平なぎささん主演)
  • 地方記者・立花陽介(水谷豊さん主演)
  • 取調室(いかりや長介さん主演)
  • 弁護士・朝日岳之助(小林桂樹さん主演)
  • 弁護士・高林鮎子(眞野あずささん主演)

などなど、数えだしたらキリがありません。(ちなみに今挙げた主演俳優の殆どは「土曜ワイド劇場」にも主演シリーズがあります)

そして「火曜サスペンス劇場」の音楽といえば、先述したオープニングテーマだけでなく、放送初期のエンディングテーマだった岩崎宏美さんの「聖母たちのララバイ」もよく知られています。

そんな「火曜サスペンス劇場」のエンディングテーマとして書き下ろすこととなったまりやさん。今までのエンディングテーマの流れもあり、「歌謡曲」テイストで作ったそうです。歌詞は当時流行していた「シングル・アゲイン」というワードをそのままタイトルに拝借し、男性と別れた女性の気持ちを素直に描いたものとなっています。

あなたを連れ去る あの女性(ひと)の影に
怯えて暮らした 日々はもう遠い

男性との別れは無情にも「他の女性」に心変わりされて捨てられたという、とてつもなく嫌な別れ方をされたのでした。あれから幾年か経ち、別れの傷が癒えてきた私。嫌でも夢や幻想に出て来る憎き「あの女」の影はもうちらつかなくなってきていました。

離れてしまえば 薄れゆく記憶
愛していたのかも 思い出せないほどよ

あの二人と離れてしまえば、嫌な記憶も、そして男性と愛し合った想い出も、どんどん薄れていました。本当にあの人のことを私は愛していたのか?それくらいまで無に至る程の愛情となっていました。

また独りに返ったと 風の便りに聞いてから
忘れかけた想いが 胸の中でざわめく

噂で男性が、「あの女」と別れたということを耳にした私。急に胸の中でざわざわするのがわかります。「何故?」「独りに戻った?」「私はどういう気持ちになれば?」色々な考えが頭の中に巡り巡っていますが、答えは出ません。確かなのは、忘れかけていたあの人への愛情が戻ってきていたのでした。

私と同じ痛みを あなたも感じてるなら
電話ぐらいくれてもいいのに

あなたと別れた時に負った痛み。今はあなたが感じてるはずでしょ?どういう気持ちなのか、私に教えてよ。そういったちょっと見下した感じにも聞こえ、同情から寄り添ってあげたいという感じにも聞こえます。

アレンジは達郎さんで、ストリングスアレンジは服部克久さんによるもの。まりやさんなりに分析した歌謡曲風味の作風をどうアレンジするか、その筋のルーツを持たないが故に達郎さんはかなり悩ませたといい、さらにスケジュールが相当タイトで、〆切に追われながら制作していたことを明かしています。出来上がった作品は歌謡曲のようだけど、何処かオトナの切ないポップ・ミュージックのような上品な仕上がりとなりました。コンピューター・プログラミング、エレクトリック・ギター、グロッケン、パーカッションを達郎さん、ドラムを青山純さん、ベースを伊藤広規さんが演奏しています。シンセサイザーは達郎さんと難波弘之さんの2人で分けて弾いています。達郎さんはこういった曲想でアレンジを紡いだ服部さんのストリングス・アレンジを絶賛しています。

シングル作品では「不思議なピーチパイ」以来の大ヒットとなるなど、まりやさんの代表作とも言える曲。「歌謡」曲風の「火曜」サスペンス主題歌。懐かしさとともに是非。