二人が選んだ道。チェッカーズ「I Love you, SAYONARA」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日はチェッカーズ「I Love you, SAYONARA」(1987年リリース) です。





1986年のチェッカーズはそれまで売野雅勇さんと芹澤廣明さんが手掛けてきた提供曲による作品を取りやめ、メンバーによる自作曲を制作する方針に切り替えました。基本的には藤井フミヤさんが作詞(稀にアルバム曲などでは高杢禎彦さんが担当) 、藤井尚之さん・鶴久政治さん・武内享さん・大土井裕二さんが作曲を担当することになりました。「Cherie」の項でも述べてますが、特に作曲の才能が高かった尚之さんと鶴久さんはシングル表題曲の採用率が高く、武内さんもリーダーとして作曲やアレンジの指針を決めるなど、音楽面でのイニシアティブを取っていました。

そんな中でこの「I Love you, SAYONARA」を手掛けたのがベース担当の大土井さんでした。


大土井裕二さん。

大土井さんはチェッカーズに入る前にアマチュアバンドにいたそうで、当時のチェッカーズのベース担当は尚之さんが弾いていたそうです。アマチュアバンドが解散したことでフミヤさんから誘われて、正式なベーシストが加入するまでの繋ぎとしてチェッカーズに加入しますが、結果的にはそのまま正式なメンバーとなり、1992年の解散まで、ドラム担当の徳永善也さんと共にチェッカーズのリズムパートの土台を支えてきました。太く少し歪んだサウンドが特徴で、ポップな作風にハード・ロックのような印象を付けることに成功したといってもいいと思います。また、他の3人に比べると作曲数こそ少ないですが、印象的な作品を残しており、特に初期に作られた「ガチョウの物語」という作品はフジテレビ系「ひらけ!ポンキッキ」にて使用されるなど、シングル曲で見られるようなシリアスなものでは無く、とてつもなくユーモラスな作風となっています。

そんな大土井さんが作曲したのがこの「I Love you, SAYONARA」でした。自作曲化になった「NANA」の次のシングルとしてリリースされたシングルでした。

フミヤさんが作詞したこの曲は「男女の別れ」がテーマでした。

おまえは何も言わず 俺の夢を抱きしめ
小さなBagに二人 すべてを詰め込んだ

男女が別れるその日。女性は何も言わずに黙々とバッグに荷物を詰めています。本当はもっと愛し合いたかったのに。そう思いつつも別れを決めた以上、想い出が詰まったこの場所には居られません。でもせめてあなたの夢だけは共有させて欲しいと、男性との想い出の物を一つ、黙ってバッグに押し込むのです。

時よ Come Back

楽しかった過去に戻りたい!そう思っても無情に時間は過ぎゆくものです。

皮ジャンのPocketにこっそり金を押し込め
似合わない服を着て おまえはネオンへ消える

男性の皮ジャンにお金をポケットに入れていますが、どうやら男性の夢は「ミュージシャン」で富と名声を手に入れることなのかもしれません。なのでお金は無く、夢だけを追いかけて時だけが過ぎていったのだと思われます。もしかしたら想い出の物は「ギターのピック」とかかも。いつまでも夢だけを追いかける男性の姿に呆れ、自分が仕事をしてお金を出してという生活に疲れて別れを切り出したのかもしれません。だから男性にお金を押し込んで去っているのでしょう。いつも着ないような服を着て街のネオンに消える彼女を、俺は見送るのでした。

夢よ Come Back

俺の夢はいつでも追えるけど、彼女との愛はもう追えません。ずっと一緒に居る夢は戻りません。

ここはまぶしい砂漠 Desert town
掴めない蜃気楼だね

自分の人生はまるで照りつける砂漠のようなもの。蜃気楼まであり、どういう人生か、先の見えないゴールのような状態です。

自分の選んだ道だからいいと
やつれたその手を差し伸べた

そこに一筋の光。愛したおまえから手を差し伸べられます。別れたはずの君から救いの手が出てくるのです。やはり、おまえは俺のことが忘れられなかったのか、そう思わせてくれます。

もう俺のために 笑うなよ Baby
馬鹿だね女って

俺のことを気遣って笑わなくてもいいんだよ。そう女性に言います。

嫌いと言うしかなかったよ Baby
馬鹿だね男って

本当は男性のことが好きだけど、一緒に居たらダメになるから身を引くことにした、だから嫌いって建前で言ったんだと男性に言います。

I Love youだけど I Love you I Love you SAYONARA

つまりは本当は未だにお互いのことが好きなんです。でもそれぞれが自分たちの為にならないからと別れを決めたのです。キッカケは彼女からで、男性は未練があったのだと思います。しかし、彼女の幸せを考えたら、自分の夢のために彼女を連れて生きていっていいのか、と考えて自分は身を引くことにしたのです。本当は戻ってきて欲しい、でもそれじゃ自分の為にならないなら「もう俺のために笑うなよ」と敢えて突き放すのです。お互いが好きなんだけど、「SAYONARA」するのが互いのためだったのです。

ポップな作風のなかに、武内さんのカッティング・ギターや、尚之さんのムーディーなサックスと、ロックとジャジーな雰囲気を足した上質な作風に仕上がっています。特にBメロの三連符を多用する盛り上がる部分は最高に良いと思います。ピアノとキーボードでポップさを出しており、いかにチェッカーズメンバーがオリジナルで良い曲を書けるかを物語っています。

好きだけど、二人が選んだのは別れの道。もうすぐ春。この曲が沁みる季節になります。