この歌をあなたへ。桑田佳祐「君にサヨナラを」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日(2/26) は桑田佳祐さんの誕生日となります。そこで本日は桑田佳祐「君にサヨナラを」(2009年リリース) です。




2008年の国民が衝撃を受けたサザンオールスターズの無期限活動休止から年が明け、各メンバーの動向が注目される中、桑田さんは2009年4月、2000年〜2001年にかけて放送されたフジテレビ系音楽バラエティ「桑田佳祐の音楽寅さん」のレギュラー放送を8年ぶりに再開します。相棒となるユースケ・サンタマリアさんと共に数々の企画を生み出し、歌のみならず時にはロケに出たり、マッシュアップに挑戦したり、洋・邦問わずカバーしたり、時には放送コードスレスレの企画を行ったりと、自由闊達な展開を行ってきました。「音楽寅さん」の企画がキッカケでその後の音楽制作に影響を与えており、テーマ曲や「声に出して歌いたい日本文学」はCDに収録されるまでになりました。

とはいえ、ミュージシャンである桑田さんの本業の音楽制作に影響を及ぼすのはマズイ為、放送期間は8年前と同様に「半年間」のみでした。この間は基本的に制作をストップしており、放送終了後に制作を再開するという体制を取っていました。2011年2月にリリースされるアルバム『MUSICMAN』収録曲の雛形となる部分は2009年4月以前に作られていたものもありました。「君にサヨナラを」もその中の一つでした。

この曲は桑田さん自身が出演した大塚製薬「ウル・オス」のCMソングに起用されました。



桑田さんは元々シングルとしてリリースする前提として制作を始めた曲だと明かしており、2009年1月に神奈川・鎌倉市にてレコーディング合宿を気の知れたメンバーと行った際、既に原型は出来ていた曲でした。しかし、前述のように「音楽寅さん」の収録が始まったことで一時制作を中断。番組放送終了直後に本格的な制作を再開することになったといいます。

桑田さんが紡いだ歌詞は、50歳を超えていた桑田さんがこの曲のメロディーから滲んでくる寂しさ、そして加齢への興味などを盛り込んで作った渋目の歌詞だといいます。色々な人たちとの別れを描いたものとなっています。

Someday いつかは永遠の彼方へ
微笑(わら)いながら 旅立ちたい

いつか来る自分の人生の終幕。その時はやりたいことをやり尽くして、満足のまま終えたいと思っているのです。「わらう」といっても大口開けて笑うようなものでは無く、微笑んでいるような表情で、明るく去りたいといった感じです。

Lonely 待ちぼうけ 狭い舞台で
人の世は夢芝居さ

でも現実はそう甘くはありません。僕は退屈な人生を送っていました。独りで待ちぼうけをくらうこともしばしば。自分が望むような世界は、夢のまた夢なのです。

やけに退屈な人生だけど 本当の自分に逢えるかな?

今の現実の僕は、まだ本来の自分に近づけていません。こんな退屈だらけの人生で、果たして夢見た自分の姿になれるのか?疑問に思うことばかりです。

酔えばココロ 溢るナミダ 晴れ渡る青空
時は過ぎ、枯れても 誰かを愛していたい Forever

嫌なことを受けて、忘れ去ろうと酒を飲み、酔ったカラダとココロ。しかし虚しさからナミダが零れてしまいます。ふと見上げると澄み渡る青空が広がっています。本当の自分はあのような青空みたいになりたいのに。でもだからといって全てを諦めて投げ出した訳でもありません。時は過ぎて枯れていても、それでも愛は捨てていません。誰かの愛を欲し、誰かに愛を与えていたいのです。

さらば友よ 愛しい女性(ひと)よ 今は亡き面影
希望を胸に生きるは 僕ひとりのせいじゃない
…君がいたからさ

時が過ぎると、一緒に歩んできた友も、愛していた女性も、先立たされてしまうこともあります。でも友や愛した女性の分まで、僕は前を向いて生きていこうと決めるのです。

しかし、ここの歌詞。「僕ひとりのせいじゃない」とするのが桑田さんのただならぬ表現力を表しているような気がします。希望を胸に生きるのはみんなの分を背負っているのだから、「僕ひとりだけじゃない」とかになりそうですが、敢えて「せい」にしたその技量が凄まじいです。

そして女性から僕へメッセージが流れます。

お別れ 悲しい夜明け この歌をあなたへ

作曲・編曲は桑田さんで、ストリングスアレンジにギタリストの佐橋佳幸さんを招いています。桑田さんは佐橋さんに、当初からストリングスアレンジをお願いする意向だった為、佐橋さんは曲の構成を決める段階から参加してもらい、70年代のアメリカン・サウンドをテーマに制作していったそうです。佐橋さんは本業のギタリストとしてギターもこの曲で弾いており、暖かく柔らかいサウンドを追求するため、

  • ナイロン弦の生ギター(クラシック・ギター)(左チャンネルで聴こえる。イントロの♪チャランもこれ)
  • スプリング・リヴァーブをかけたリズム・パートのエレクトリック・ギター(右チャンネルで聴こえる)
  • オブリガード中心のエレクトリック・ギター(左チャンネルで聴こえる)
  • 間奏のトランペット・ソロの時に流れる鉄琴風のハーモニックス奏法のエレクトリック・ギター(左チャンネルで聴こえる)

といった4つのギターパートを弾き分けていることを桑田さんと佐橋さんが明かしています。サビのカウンター・メロディーは片山敦夫さんが考案したものを原由子さんが清書して弾いたもので、キーボードは全て原さんが弾いています。ベースは「ルースターズ」「ブルー・トニック」のメンバーだった井上富雄さん、ドラムスは鎌田清さんが演奏しています。トランペット・ソロは西村浩二さんによるものです。

年齢を重ねると沁みてくる、桑田さんの渋いバラード。「この歌をあなたへ」捧げたい。そんな一曲です。




こちらはMV。延べ2日間にわたって撮影されたものだそうです。