ヒットメーカーに通ずるポップス。織田哲郎「IN THE DREAM」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日は織田哲郎「IN THE DREAM」(1989年リリース) です。





TUBEの「シーズン・イン・ザ・サン」の大ヒットを契機に、メロディーメーカーとしてTUBEをはじめとしたバンドやミュージシャンに曲提供を積極的に行う傍ら、自らのシンガー・ソングライターとしての活動を疎かにすることはなく、年1枚のペースでオリジナル・アルバムを制作し、ライブツアーを敢行するなど、多忙な日々を送るようになりました。そして1987年は織田さんが「2週間寝ずに働いていた」時期が存在するほどの多忙ぶりを迎えます。この時は織田さんのアルバム『SHIPS』の制作が遅延した結果、作曲・編曲・プロデュースを手掛けた俳優で歌手の清水宏次朗さんのアルバム『$1,000,000Night』(100万ドルナイト) の制作と重なってしまい、半日を『SHIPS』に、残り半日を『$1,000,000Night』に費やすという怒濤のスケジュールとなりました。さらに渚のオールスターズとしての活動、亜蘭知子さんのアルバム『MIND GAMES』の制作、さらにはテレビのレギュラー番組1本とラジオのレギュラー番組2本を抱える売れっ子ミュージシャンとなり、かなり疲弊することとなります。この時期の提供曲は自らアレンジも行っていましたが、この時期の多忙さを経験して以降、1990年代の一連のビーイングブームの曲の殆どは作曲のみの提供になる契機となります。また、1988年になってからはそれまで自身のルーツで、深く接してきたロックン・ロールから転換して、フラットに接してみようと思い立ったことで、アルバム『SEASON』ではポップスを基調にし、深みを持たせた作風にシフトチェンジします。

同時に、30歳を迎えた織田さんは自分の為に音楽を続ける必要が無くなったと感じるようになりました。『SEASON』、そして1989年にリリースされた『Candle In The Rain』の2枚のアルバムは、「自分に対する卒業証書」のようなもので、特に『Candle In The Rain』に至っては「これが最後のアルバムかな」と思った旨を明かしています。「音楽家・織田哲郎」の有終の美を飾るに相応しい作品として作られたのが『Candle In The Rain』でした。

ご存知の通り、結果的には「おどるポンポコリン」のミリオン・セラーがあったことで、現在に至るまでミュージシャンを続けていますが、織田さん自身は当時、本当に辞めるつもりでいました。2枚のアルバムがそれまでのロックからポップスへと作風が変化していったのは、徐々にフェード・アウトするような気持ちで、最後に大作を作ろうというような思いもあったんじゃないかな、と邪推します。

この「IN THE DREAM」は、『Candle In The Rain』と同時にリリースされたシングルでしたが、ポップスとしてとても高い質を持った作品だと思います。

作詞・作曲・編曲は全て織田さんによるものです。

はるかな街の灯(ひかり)が 瞳にゆれる

夜の都会の街の灯。幻想的な空間で過ごす二人。君はこの空間、夜景を見て感動しています。その瞳には涙がたまっています。

生まれたままの心なら
どんな魔法も 信じられるから

生まれたままの純粋な気持ちを持った君なら、僕が繰り出すどんな魔法も信じることが出来るよ、と君に話します。

今はふりそそぐ星の中
君を乗せて

今はふりそそぐ流れ星のなかにいる僕ら。そんな幻想的なところに君を連れてどこまでも行くのです。

Tonight Tonight しなやかに Hold me tight
Tonight Tonight いつまでも in the dream

今夜はいつまでも抱きしめていたい。そしてこの夢の中にずっと連れていきたいと思うのでした。

先述したようにポップスとして高い完成度となっています。Bメロの盛り上げ方(「信じられるから」) の調の変わり方は天才的だと思います。そのままサビに行く展開は本当に上手いと思います。基本的に織田さん、葉山たけしさん、大谷哲範さんの3人でベーシックなオケを作っており、打ち込みを上手く使っています。

このポップスの作り方が、後のヒットメーカーに通ずるメロディーになっていっています。1990年代の一連の作品を聴く前に、是非この曲も聴いて欲しいと思います。


↑23:19から「IN THE DREAM」が始まります。