ビーイングブームのもう一人の立役者。栗林誠一郎「さよならには届かない」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日は栗林誠一郎「さよならには届かない」(1993年リリース、アルバム『会わなくてもI Love You』収録) です。




1980年代末期から始まり、1990年代前半に音楽業界を引っ張ってきたのがビーイングブームでした。B'z、ZARD、WANDS、DEENなど多くのバンドやユニットを生み出し、メディアとのタイアップを生かして多くのヒット曲を出してきました。特に作曲面で多くの功績を残してきたのは、ビーイングの設立にも携わり、メインソングライターとして数多くの名曲を作曲した織田哲郎さんですが、もう一人作曲面で多くの名曲を残してきたミュージシャンが居ます。それがシンガー・ソングライターで作曲家、そしてベーシストの栗林誠一郎さんでした。


栗林誠一郎さん。サングラスがトレードマークです。

栗林さんはミュージシャンになるために、アメリカ・ロサンゼルスに留学し、帰国した後にデモテープ作りに励んだことが後の活動の下地になっていきます。ミュージシャンとしてのスタートは1987年にTUBEとメタル・ロックバンドのBLIZARDに曲を提供したことで、作曲家としてデビューします。また、TUBEと織田さんが中心になって活動を始めた「渚のオールスターズ」の結成初期から加わり、ボーカリストとしてもキャリアを始めました。1988年にTUBEのベーシスト・角野秀行さんが交通事故を起こしたことに際する活動休止時には、代打でベースを担当し、約1年間活動に参加したほか、初期の名バラード「Remember Me」の作曲を手掛け、名が知られるようになってきます。1989年にアルバム『LA JOLLA』でシンガー・ソングライターとしてデビューします。1990年にはB.B.クィーンズにもベーシストとして1993年まで参加し、作曲やコーラスも担当しました。1990年代にはユニットに参加する期間もありますが、原則としては織田さんと同様にシンガー・ソングライターとして活動しながら作曲家としてビーイング所属ミュージシャンへの楽曲提供を精力的に行い、ZARD、DEEN、WANDSなどへ曲提供を行いました。特にZARDへの曲提供は世間にもよく知られており、「君がいない」「もう少し あと少し···」「こんなにそばに居るのに」「Don't you see!」などが大ヒットし、織田さんと共にZARDの活動を作曲面で支えた功績者でもあります。また、「坂井泉水×織田哲郎」のコンビがゴールデンコンビとしてよく知られていますが、生前の坂井さんは栗林さん作曲の作品を特に気に入っていたといい、相性の良さでは「坂井泉水×栗林誠一郎」のコンビという評もあったそうです。ZARDの作品に栗林さんはコーラスで参加したり、坂井さんが栗林さんの作品にコーラスで参加したこともありました。小室哲哉さんや織田さんが作曲家セールスを賑わせていた時期に栗林さんは1994年にはオリコンの作曲家シングルセールスに6位を獲得するなどビーイングの作品に無くてはならないミュージシャンとなっていました。

シンガー・ソングライターとしてはあまりヒットすることが無く、知る人ぞ知る存在ではありますが、作る曲のクオリティは高く、ポップス・AOR・フュージョンの要素を散りばめた作品を世に残しています。名曲は数多くありますが、本日はその中の一曲である「さよならには届かない」を紹介しようと思います。

作詞を手掛けたのはビーイング作品によく歌詞を提供していた作詞家の小田佳奈子さんで、栗林さんのアルバムにはほぼ全てのアルバムに歌詞を提供していた方でした。夢を追い掛けるために離れ離れになる2人を描いた歌詞となっています。

街路樹を映したフロント・グラス
手を振る君を 見送った

僕は彼女を見送るために、彼女を送りに車を出していました。一旦離れ離れになることが決まってる運命の2人。僕に向かって君は手を振っています。

真っ白なシャツの袖
にじんだ涙を忘れない

この歌詞は「男性側」なのか「女性側」なのかハッキリ書いていません。なのでどちらにも取れる歌詞でもあります。僕は送り出す為にキレイな真っ白なシャツを着て送り出しますが、色んな想いが巡って涙が出てきてしまい、折角の白いシャツが涙でにじんでしまいます。反対に女性側も、旅たちの時で心機一転するために新品のキレイな真っ白なシャツを着ていましたが、送る僕の姿を見たら涙が出てきてしまい、白いシャツが涙でにじんでしまいました。このようにどちらの心境も描いているような歌詞となっています。

追いかける夢の強さだね
負けたよ 笑顔に

しかし君は新たな気持ちで離れることを決めたのです。自分の夢に向かって旅立とうとしているのです。気持ちを切り替えて笑顔で臨む君を見た僕は、その笑顔にはかなわないと思い、君を応援するのです。

さよならには届かない 何度別れても
引き寄せ合う磁石のようさ ずっと心は離れない

でもこれは「さよなら」ではないのです。今ここで離れてもまた必ず君とまた居られる日が来ると信じているのです。どれだけ離れ離れになろうとも、磁石のように必ずくっつく日が来ます。「さよなら」までは行かない=だからこそ「さよならには届かない」という意味合いなのだと思いました。

きっといつか めぐりあえる
たとえ君が どこにいても

僕も君も確信しています。また必ず逢えると。

作曲・編曲は栗林さんによるもの。8ビートのポップ・ロックで作られています。ドラムは山下達郎さんのバックでお馴染みの青山純さんが叩いています。青山さんも栗林さんの曲に多く参加しており、達郎さん並みに栗林さんも重宝されていました。エレクトリック・ギターは増崎孝司さんによるもので、ベース・シンセサイザー・タンバリンは栗林さん自身による演奏です。またコーラスも栗林さんによる一人多重録音となっており、曲調も合いまってシティ・ポップのような雰囲気も醸し出しています。

あまり知られていませんが、クオリティの高いポップスを生み出していた栗林さんの名曲はもっと知られてもいいと思います。是非。