ラテン歌謡の名作。中森明菜「ミ・アモーレ〔Meu amor é・・・〕」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日は中森明菜「ミ・アモーレ〔Meu amor é・・・〕

」(1985年リリース) です。




1984年は先日紹介した「北ウイング」からスタートし、安全地帯の玉置浩二さんが作曲を手掛けた「サザン・ウインド」、ギタリストの高中正義さんが作曲・編曲を手掛けた「十戒 (1984)」、そして井上陽水さんが作詞・作曲を手掛けた「飾りじゃないのよ涙は」といった歌謡史に残る名作を多く生み出し、全て50万枚以上を売り上げるセールスに加え、全てオリコン1位を獲得しました。作詞家の人選や歌詞 (康珍化さん・来生えつこさん・売野雅勇さん)、林哲司さんや玉置さんといったメロディーに定評のあるミュージシャンによる作曲、アレンジの質の高さもそうですが、何よりも明菜さんの歌唱力の高さは特筆すべき事項だと思います。「十戒 (1984)」の作詞をした売野さんは明菜さんを「シンガー・アクトレス」と評するほど、歌詞の主人公になりきれる確かな表現力は、当時のアイドル歌手の中でもずば抜けていたと思います。また、その表現力と歌唱力から、徐々に曲の難易度が上がっていることも確かで、「サザン・ウインド」の玉置さんが作った、速いテンポにシンコペーションの複雑さ、「十戒 (1984)」の高中さんが作った、譜割りの複雑さとBメロの盛り上げ方は、なかなか上手く歌えません。しかし、明菜さんは見事にその壁を乗り越えて見事にこなすのです。

また、自身でセレクトするファッションは、「夜のヒットスタジオ」(フジテレビ) で司会を務めた芳村真理さんから高い評価をもらい、「夜ヒット」出演時は真理さんが明菜さんの衣装をプロデュースするほど、番組共演者から気に入られるようになります。

年が明けて1985年、明菜さんが最初にリリースした曲がこの「ミ・アモーレ〔Meu amor é・・・〕」でした。

この曲の作家陣として迎えたのは、「北ウイング」を作詞した康さんと、ラテン音楽の第一人者で、ラテン・フュージョンミュージシャンというジャンルを開拓したミュージシャンの松岡直也さんでした。


ラテンフュージョンミュージシャンの松岡直也さん。

松岡さんは1937年、神奈川・横浜市生まれのミュージシャンです。15歳の若さでピアニストとしてデビューするなど、明菜さんの曲を書いた作家陣の中で1番最古参のミュージシャンとなります。ジャズ・ピアニストとしても名を馳せた他、松岡さん自身がリーダーとなってラテン音楽のバンドを幾つも結成し、自身のソロ・アルバムにおいて演奏を行っていました。また、アレンジャーとして青い三角定規の「太陽がくれた季節」のアレンジを行い、青い三角定規が日本レコード大賞の新人賞を受賞する礎も作る功績を残します。自身の演奏活動やアルバム制作が主となっていたこともあり、提供曲は少ないですが、インパクトを残しています。松岡さんは2014年に76歳で亡くなっています。

そんな松岡さんの数少ない提供曲の一つが、この明菜さんの為に書いた「ミ・アモーレ〔Meu amor é・・・〕」でした。松岡さんの嗜好となるラテンがフィーチャーされた新感覚の歌謡曲となっています。

タイトルの「ミ・アモーレ」はブラジルの公用語である「ポルトガル語」で「私の恋人は」「私の愛は」といった意味を持つ言葉となります。作詞を手掛けた康さんは、ブラジルを舞台とした愛の物語をこの曲の歌詞に落とし込みました。

あなたをさがして のばした指先が
踊りの渦にまかれてく 人ごみに押されて

異国の地に暮らす彼を追い掛けてやってきたのはブラジル・リオデジャネイロでした。この日はちょうど「リオのカーニバル」が行われている日。人々は至る所でサンバのリズムで踊っていました。私は彼と会ってカーニバルに来ましたが、踊りの喧騒の中に巻き込まれ彼とはぐれてしまい、中々前に進むことが出来ません。

リオの街はカーニバル 銀の紙吹雪
黒いヒトミの踊り子 汗を飛びちらせ きらめく羽根飾り

街中がカーニバルで盛り上がるリオデジャネイロ。紙吹雪が舞い、踊り子は汗を飛び散らせていながらも、その派手な衣装の羽根飾りを揺らせて踊りに興じ、楽しんでいました。

魔法にかかった異国の夜の街
心にジュモンを投げるの

街中が賑わうなか、私はある想いを抱くようになります。異国の地で会った魅力的な男性を見てしまうのです。彼に会いたいけど、あの人もいいな…。そして行動に移そうとした気持ちが「ふたりはぐれた時 それがチャンスと」という詞に託されるのです。

迷い 迷わされてカーニバル
夢よ 夢よだから今夜は
誘い 誘われたらカーニバル
腕から腕の中 ゆられて

異国の雰囲気、祭りのテンション、そういった事柄が私を大胆にさせるのです。

抱いて 抱かれるからカーニバル
キスは命の火よ アモーレ

そして情熱の夜を過ごしていくのです。でもキスは「命の火」と謳うくらいだから、「最愛の人にしか、くちづけは許さないのよ」という抵抗のようなものを感じます。あなたは遊び、愛情は彼にあるの、といったところでしょうか。

作曲・編曲を手掛けた松岡さんのラテン路線が前面に出た曲で、歌謡曲の趣を残しつつ、サンバやラテンを取り入れて、エスニックの要素を醸し出しています。また、1番と2番でサビに向かう構成が若干異なっており、飽きさせない作りをしています。ピアノ・キーボードを松岡さん自身で演奏しており、リズム隊を当時松岡さんが率いていたグループ「松岡直也グループ」のメンバーが演奏しています。エレクトリック・ギターはフュージョンバンド「プリズム」のギタリスト・和田アキラさんによるカッティング。ベースは高橋ゲタ夫さん、ドラムスは広瀬徳志さん、パーカッションは三島一洋さんが演奏しています。また、パーカッションはブラジル出身のラテン・パーカッショニストも参加しています。そこにブラスサウンドとストリングス、コーラスグループのEVEによるコーラスが入ります。ちなみにタイトルの「ミ・アモーレ」は最後の方にコーラスで入るだけで、明菜さん自身では曲中で一度も言っていません。

この曲でオリコン1位を獲得し、明菜さんのシングル曲で「セカンド・ラブ」に次ぐ売上となっています。そしてこの曲で第27回日本レコード大賞を受賞する快挙を成し遂げたほか、作曲した松岡さんも日本作曲大賞の優秀作曲家賞を受賞しました。まさにラテン歌謡の名作に相応しい曲だと思います。



↓「北ウイング」はこちらから。