希望の朝日が射し込む。山下達郎「MY MORNING PRAYER」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日は山下達郎「MY MORNING PRAYER」(2011年リリース、アルバム『Ray Of Hope』収録) です。




2009年から制作していたアルバムは、元々『WooHoo』というタイトルで2010年にリリースする予定でした。しかし、制作が上手く捗らず延期することになります。この時点では『WooHoo』のままリリースする予定でしたが、2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響が、その後の達郎さんのアルバム作りに大きく影響を変えることになりました。『WooHoo』は、2008年に起きた世界的不況となるリーマン・ショックの影響で、世の中が暗くなってしまったことから、それらを笑い飛ばすような、ある種ナンセンスなタイトルとして付けたものでしたが、震災を経た日本の状況を受けて、『WooHoo』は軽薄と感じ、震災後に多く世の中に流れた達郎さんのシングル「希望という名の光」(2010年) のコーラスの一節「Ray Of Hope」からアルバム・タイトルを付けました。

震災後、制作していた曲は一部の歌詞を変えたりするなど、震災の影響を受けてマイナーチェンジを図ると同時に、元々チャラチャラしていた作風も少し落ち着いた作風に変えられました。また、前作『SONORITE』では、『ARTISAN』から続いていた作家的な作風の極地で、それまでやらなかった作風を取り入れたものとなりましたが、自分のキャラに合わない作風は止め、『POCKET MUSIC』や『僕の中の少年』と同様のシンガー・ソングライター的なアプローチで作られました。その為、達郎さんの思想・信条が歌詞に含まれている作品もありました。そんな『Ray Of Hope』において、アルバム書き下ろし曲として収録されたのがこの「MY MORNING PRAYER」でした。

この曲は、日本テレビ系情報番組「ZIP!」の初代テーマソングとして書き下ろされました。


「ZIP!」初代総合司会を務めた桝太一さん。

「ZIP!」は、2011年3月まで放送された「ズームイン!!SUPER」の後を継いで誕生した情報番組です。あまり知られていませんが、「ZIP」の正式名称は、「ZOOM IN PEOPLE!」で、事実上「ズームイン!!朝」から続く「ズームイン」シリーズの番組となります。初代総合司会を桝太一さん (当時日本テレビアナウンサー) と関根麻里さんが務めており、曜日パーソナリティーに多くのタレントが起用されていました。現在は水卜麻美さん (日本テレビアナウンサー) が2代目総合司会を担当しています。

この番組のテーマソングを、番組放送開始から9年にわたって、達郎さんの「MY MORNING PRAYER」が流れていました。時にはワンコーラス流れたりするなど、番組の顔とも言える音楽でした。使用最終日はフルコーラスが流され、達郎さんがメッセージを寄せました。

番組放送開始に伴いオファーがあり、東日本大震災前から制作していました。震災当日もこの曲のレコーディングをしていましたが、震災の惨状をリアルタイムで目の当たりにした達郎さんは、それまで出来ていたギターリフで始まるようになっていたこの曲を全て破棄して、全面的に書き直しました。歌詞も被災者へのエール、犠牲者への鎮魂を込めた、達郎さんらしくない直球のメッセージソングとなりました。普段はじっくりと時間を掛けて制作する達郎さんですが、番組放送開始が近づいていたことから、突貫工事で仕上げたそうです。

先述したように、歌詞は被災者へのエール、犠牲者への鎮魂を込めたものですが、一般的に受け止められるよう、朝を迎えて少しでも勇気づけられるような、メッセージソングとなっています。

夜明けがまたたいている あなたを照らすために
ちいさな想いがある あなたに届けるため

夜明け、朝日が昇る頃。どこか静寂で深い沈黙が流れる空間。立ち尽くすあなた、そしてみんな。暗闇だけが場を支配する中で、少しずつ朝日があなたたちを照らしていました。それは、かすかな希望と未来の光でした。その明るい未来を願う気持ちが、あなたたちへ届くように祈ります。

今日という日が昨日より すこしだけやさしく
あなたを包んでくれることを祈って

昨日よりも今日、少しでも優しさに包まれることを祈って。日に日に経つことによって、少しでも気持ちが和らいでくれることを、みんなが想っています。

THIS IS MY PRAYER
   (私の祈り)
MY MORNING PRAYER
   (私の朝の祈り)

毎朝、少しでも昨日よりも良くなるよう、いつもあなたたちへ祈りを捧げています。

あふれるその悲しみ 僕には消せないけど
せめてこのメロディー あなたをはげませたら

あなたたちが負った深い傷、それを消すことは私たちには出来ません。しかし、せめてもの歌の力で少しでも癒やしだったり、励みになれたら。このメロディーは、そんなあなたたちへの祈りと願いを込めたメロディーなのです。

ひとときでも耳をすませ 心をゆだねたら
かすかな希望の 音を聴いておくれ

なかなか一息つく間もなかなか無い中、流れるこの曲を聴いて少しでも心を委ねてほしい、そう願っています。

キーボードと刻んだベース・ライン、光が射し込むようなストリングスが特徴的ですが、アコースティック・ギターを用いるなど、フォーク的なアプローチとなっています。ストリングス・アレンジは後藤勇一郎さんが手掛けています。ストリングス以外のアコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、キーボード、コンピューター・プログラミングなどの演奏は全て達郎さんによるものとなっています。

希望の朝を迎えるポップス。昨日よりも今日がよくなるように。