ウツダンスとTAKのギター。TM NETWORK「COME ON EVERYBODY」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日はTM NETWORK「COME ON EVERYBODY」(1988年リリース) です。




シングル「SEVEN DAYS WAR」と同名映画のサウンドトラックを制作した小室哲哉さんは、レコーディングしたイギリス・ロンドンで新作アルバムの制作を決意します。小室さんはわざわざロンドンに住居を移し、本格的に腰を据えるつもりでアルバム制作を行うことになります。こうして1988年6月〜10月の間、TMメンバーとスタッフ、ミュージシャン、作詞家の小室みつ子さんはロンドンのレコーディングスタジオに詰めて、アルバムを制作していくことになります。その際に、木根尚登さんが元々発案していた「どこにでもいるような1人の女の子が誰でも可能性を持っていることに気づき、ほんの少しの勇気を持って向かって突き進む」というモチーフから生まれた、大まかなコンセプトを元にシングル向きの曲を制作、木根さんがモチーフをさらにストーリー仕立てでコンセプトを決めていき、小室さんがそれに向けた曲を制作していきました。これがTM NETWORKの名盤アルバム『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』になっていくのでした。

いわゆる、物語に沿って曲が進行していく『コンセプトアルバム』のはしりといわれるアルバムで、アルバム発売後に木根さんが執筆した小説「CAROL」のストーリーに沿っています。とはいえ、1988年リリースのシングル「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」、「SEVEN DAYS WAR」もリミックスとはいえ収録されていることもあり、小室さんは「厳密にはコンセプトアルバムではない」と話していますが、アルバムに上手く収録されており、さほど気になるような箇所はありません。(レコーディング時期や場所、ミュージシャンが異なりますが)

「CAROL」のストーリーは大まかにはこうなってます。

イギリスのバースに住む少女、キャロル・
ミュー・ダグラスは、1991年にガボール・
スクリーンが奏でる新曲を耳にする。
この音が流れてから、チェロ奏者の父が
奏でるチェロ、ガボール・スクリーンの
音楽、さらにはビッグ・ベンの鐘さえも
消えてしまう。音は何者かに盗まれていた
ようで、その音を取り返すべく、異世界の
ラ・パス・ル・パスへ行くキャロル。
仲間達と出会いながら、魔王・
ジャイガンディカを倒すべく闘う。

このストーリーに沿って小室さんと木根さんが曲を書き、小室さんとみつ子さんが歌詞を書いていきました。そしてこのアルバムではアナログレコーディングでレコーディングされ、極力アコースティックな音で作られています。ベースは全て小室さんによるシンセ・ベースですが、ドラムは大半が生ドラム、小室さんによるピアノや木根さんによるアコースティック・ギターなどが使われるなど、それまでのTM作品に比べて暖かみのある曲が多く収録されています。

そんな中で一際シンセ・デジタルサウンドが特徴的なのがこの「COME ON EVERYBODY」です。

アルバム制作中に先行シングルとして作られたものとなっています。但し、イントロのシンセ・リフは元々「Come On Let's Dance」をライブで披露する際に演奏されていたリフを引用したもので、そこから展開して作られたのがこの曲でした。

作詞も小室さんによるもので、ある程度「CAROL」のストーリーに通ずる歌詞ですが、一般的な「壁に立ち向かう」といった鼓舞するような歌詞にも聴こえるように作られています。

壊れる 壊されてゆく
幼い時代(とき)の魔法が
君にはわかりかけてる

まだ幼かった君は、今は成長して何でも挑戦出来る年頃に。幼かった頃にわからなかったことが、今なら出来るようになってきました。

臆病な自分を
心を熱くふるわす

臆病な自分を、熱くふるわすようなことがありました。

何かを感じながらも
一人でいる時さえも 叫ぶこともできない

心を熱くふるわすようなことがあっても、そこで臆病な自分が出てしまいます。一人で居ても臆病が勝って叫ぶこともできません。

腐り切った欲望は 投げ捨ててもかまわない

ここでは「欲望」としていますが、ここまでの文脈を察すると「プライド」に置き換えることが出来る気がします。臆病な自分を変えるため、変なプライドを持っていたものを捨てていこうと、ちょっとでも自分を変えようとしています。

足元が震えても 立ち向かうことだけ
忘れずに 忘れずにいろ

壁があっても迷わずに立ち向かうことだけは忘れてはならないと説いています。

Get up! Get up! Get up and go!

ここで自分を奮い立たせているのがわかります。

Come on everybody
Shake it everybody
   (さぁみんな!踊ろうじゃないか!)
Don't stop dancin'
   (踊りを止めるな!)
Don't stop the music
   (音楽を止めるな!)
Come on everybody
Shake it everybody
  (さぁみんな!踊ろうじゃないか!)
Don't stop dreamin'
  (夢を諦めるな!)
Don't stop the passion
  (情熱を止めるな!)

音が流れ続ける間、一緒に踊っていよう、踊りを止めないよう、音を止めないよう、ずっとこのリズムで踊り続けています。そして、夢を諦めないこと、心にいつも情熱を持ち続けることが大切だと話します。

そしてこの曲は何といっても、MVや歌番組などで見られた宇都宮隆さんのキレキレのダンスとステップが代名詞ともいえます。ファンの間では「ウツダンス」と呼ばれており、愛されるステップとなっています。小室さんがロンドンでレコーディングの準備で渡英した際に、宇都宮さんはアメリカ・ニューヨークへ行き、英語を勉強したり、ボイストレーニングした他、ダンスレッスンも行っていました。そういった成果がこの曲に存分に発揮された格好となりました。

アナログレコーディングの中でも、とりわけこの曲はデジタルサウンドで作られており、サンプリングやプログラミングを大々的に使っています。ドラムは打ち込みとなっており、アルバムの曲の中で一番打ち込みが多い曲であると小室さんは振り返っています。シンセサイザー、シンセ・ベースは小室さんが演奏し、エレクトリック・ギターは当時B'zを結成したばかりの松本孝弘さんが演奏しています。このギターは一度サンプラーに取り込んでから演奏させているなど、手間が掛かっていますが、これにより、より強いデジタルサウンドを展開させることに成功しています。リズムギター、リードギター共に松本さんによる演奏ですが、松本さんは初めての海外レコーディングで緊張もあり、レコーディングでは何度もやり直しがあったり、6弦と1弦のバランス感覚の悪さを指摘されたことで練習を積み重ねるなど、当時は苦い思い出になりました。松本さん本人は後年、レコーディングの時の様子をあまり覚えていませんでしたが、このロンドンでのレコーディング自体はその後の活動にかなり影響を与えているそうです。

ノンタイアップながら、この曲もヒットとなり、この年の年末の「NHK紅白歌合戦」にも出場してこの曲を更にサンプリングさせた形で披露しました。ウツダンスとTAKのギターが肝のTMアップナンバーは、まさに踊らずにはいられない曲であること間違いありません。



こちらはMV(ショートバージョン) です。ウツダンスが見られます。


そしてこちらが「紅白歌合戦」の歌唱時のもの。白組司会の加山雄三さんの曲紹介からです。よく歌詞を間違える宇都宮さん、この時も「きっと今夜捜し出せるさ」を「きっと今夜ここで会えるさ」と歌って間違えています。ちなみに松本さんはここにもギターで参加しており、B'zで紅白歌合戦に出場は一度もない為、松本さんが唯一、紅白歌合戦に出てる姿が見れる映像となっています。