本日 (2月4日) は山下達郎さんの誕生日となります。2023年で古希(70歳) となりました。そこで本日は達郎さんのコラボレーション曲から。本日は山下達郎 & メリサ・マンチェスター「愛の灯~STAND IN THE LIGHT」(1996年リリース) です。
この曲はフジテレビのキャンペーン「ミュージック・キャンペーン」のキャンペーン・ソングとして書き下ろされたものでした。
ここでは達郎さんのデュエット相手である、メリサ・マンチェスター(Melissa Manchester) について触れてみようと思います。
メリサは1951年生まれのアメリカのシンガー・ソングライターです。幼少期から音楽に触れあうことの多かった彼女は早くからプロの歌手になることを夢見ていました。特にゴスペルやクラシック、サルサなどの音楽に触れていたようです。15歳にはCMソングの吹き込みを行うなどしてプロの歌手として活動を始めた彼女は、16歳には音楽出版社のライターとして勤めるなど、音楽との結び付きをますます強くしていきます。
大学では芸術学部に入学し、アメリカの人気デュオ「サイモン & ガーファンクル」のポール・サイモン (Paul Frederic Simon) から作曲を学ぶことになります。大学に通いながらクラブで弾き語りをするなどしていると、弾き語りをしていたメリサを見たプロデューサーらの目に止まり、アメリカの歌手で女優のベット・ミドラーのバックコーラスに参加します。そして1973年にはレコード会社と契約を結んで、本格的にプロの歌手として活動を始めます。
1970年代~1980年代に掛けて多数のヒット曲を生み出しており、『ブライト・アイズ』(Bright Eyes)、『想い出にさようなら』(Melissa)、『雨と唄えば』(Shigin')、『あなたしか見えない』(Don't Cry Out Loud) などといった、アメリカにおいてのスタンダード・ナンバーを数多く生み出しました。幾つのアルバムは日本においても販売されており、『想い出にさようなら』は、当時『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』に収録する曲を作っていたシンガー・ソングライターの伊藤銀次さんが、「想い出にさよなら」という曲を作っていたものの、メリサと曲名が被ってしまう為、「幸せにさよなら」に曲名を変更したという逸話があります。(シングル時に大瀧詠一さん・銀次さん・達郎さんのボーカルで歌われています)
現在でも歌い続けており、多くのジャンルを貪欲なまでに取り入れた曲を作ったりしており、人気のシンガー・ソングライターの一人とも言えます。
そんなメリサと達郎さんがデュエットするきっかけは、先述の「ミュージック・キャンペーン」のキャンペーンソング制作でした。この制作時に既に「誰か外国人の女性とデュエットしてくれ」という先方からの注文があったと達郎さんは話しており、何人かリストアップした中で、メリサと以前に会ったことがあったことから、メリサを指名したといいます。メリサは達郎さんのオファーを快諾した上で作詞も自ら希望し、達郎さんが書いた曲を渡した上で作詞をしてくれたといいます。
「There is a moment in your life」
「When everything's so right」
(あなたの人生には、一瞬でも全てが上手くいくときがある)
「Somehow you can't believe it」
(でも、何故かあなたは信じてくれないんだ)
「Believe it 'cause here it is」
(お願い、信じてください)
全英語詞なので、さっぱり分かりませんが、翻訳サイトの力を借りて訳してみるとこんな感じでしょうか。
「I'm waking from a lonely sleep」
(私はいま、孤独な眠りから目覚めたの)
「An angle's taking me」
(そして私は天使と話してるの)
「But I feel like I'm dreaming」
(でもまだ私はまだ夢を見ているよう感じ)
「I'm dreaming but here it is」
(夢の中にいるみたいなの)
ここまで見ると男性側と女性側では全然別の話をしているようですね。男性は「人生が上手くいくことがあるんだけど、信じてくれないんだ」と嘆いており、女性は「眠りから覚めた私は天使と話している、なんだか夢見心地のような気分」とふわふわした感情を話しています。
「Open up the sky Stand in the light With me forever」
(さぁ、空へ向かって光の中へ私たちとずっと一緒に飛び立とう)
これは「私たち」(達郎さんとメリサ) から「あなた」(聴いているあなた) へ背中を押すメッセージソングかなと思いました。なかなか羽ばたくことのできない人たち。その人たちへ鼓舞するような歌詞なのかな、と思いました。
「Let me see you smiling」
(あなたの笑顔を見せて)
「Let's see those eyes that shine」
(そしてその輝く瞳を見せて)
いきなり飛び立ったあなたは、とても困惑していると思います。そんななかで「私たち」は「笑顔を見せて」「輝く瞳を見せて」と明るく前向きになるあなたが見たいと声を掛けます。
「Reaching for the sky Walk in the light With me together」
(そして空へ届くように、私たちと一緒に光の中を歩いていこう)
一緒に歩いていくと、かすかな希望が見えるかもしれません。
「We will never have to walk Alone again」
(もう二度と、孤独になって歩くことは無いよ)
メリサがアメリカ・ニューヨーク出身であることに着目した達郎さんは、有名なソングライターチームの「アシュフォード & シンプソン」の曲調に近い形に仕上げ、さらに達郎さんの曲でも度々登場するフィラデルフィア・ポップスのテイストを入れた、都会的なバラードとなりました。アコースティック・ピアノを難波弘之さんが演奏した以外、エレクトリック・ギター、アコースティック・ギター、エレクトリック・シタール、キーボード、リズム・プログラミングなどを達郎さんが演奏しています。また、デュエットとなっていますが、2人で歌う箇所は全て主旋をメリサが歌い、ハモりを達郎さんが担当しています。
邦楽でも洋楽でも、とちらにも取れるバラード。達郎さんが英語で歌うのは、ここまで何度も経験しているだけあって、馴染んでいます。あまり知名度は高くありませんが、是非。